異業種の方との名刺交換や、自己紹介をする場面では、ほとんどの方々は好意的な対応してくださるので、この仕事に携わる人間は、世間的には概ね印象は良いのだろうと感じています。

僕自身は調律師ではありませんが、初めて訪問したお宅でも、ピアノの蓋を開けることへの抵抗感を感じた事はなく、仕事としての訪問でなくても、「ウチにもピアノがあるので是非!」という感じになることが多く、逆にこちらが遠慮させて頂く、という場面は多々あります。

恐らく調律師の方も、似たような感じではないかと思います。

 

要するに、ピアノの技術者が蓋を開けて手を加えれば、何かしらピアノに良いセッティングをしてくれるもの、と信じているのです。

ですが個人的には、結構胡散臭い連中が多い業種だとも思ってます。

そう思う理由は、昭和60年にこの業界に入り、昭和時代の凄まじいやっつけ仕事を散々見てきた事。その最初の職場も、けっこう酷い仕事をしていた事です。

“類は類を呼ぶ” と言いますが、そんな所にいた為に、似たような類のピアノと出会う機会を引き付けていたのかも知れません。

 

ただそれも、昔の話です。去年の秋ごろに、自称“整音師” の、お粗末な整音を写真付きで紹介する投稿をして、かなり大きな反響をいただきましたが、昭和の時代もそんな奴はいた訳で、破壊的行為ではあるものの、個人的には想定内というか、「今でもこんな奴がいるんだなぁ」くらいにしか感じませんでした。

 

しかしながら、さすがに昨日見せてもらったものは、凄かった❗️

僕自身は現場に行ってないのですが、実物を見た渡辺さんから、かなり詳細に教えて頂きました。

鍵盤はうねってしまって、弾こうとしても動かない。しかしながら動いてはいけない方向には動いてしまう。

繊細な調整が求められるバランスホールは、これでもかっ💢、というくらいの大穴になってしまっている。

仮にキーコジリを根元まで貫通させても、ここまで大きな穴にはならないだろうと思えるレベルです。

ここまで行くと、修理の費用は、新たに鍵盤を作った時の何倍も掛かってしまいます。言い換えれば修理不能という事です。

 

 

仕事をするにあたり、まずは代金先払い。

鍵盤が動かなければ当然クレームですが、対処してもらえないのなら、仕方なく別の調律師に見てもらうのは当然のことです。しかしこれも当然ながら「修理不能なので、最初の業者に責任取ってもらって」となります。

すると、他の調律師に見せたから、という理由で、“修理破棄勧告書” なるものが送りつけられ、カネは返さないのだとか。

この点については、ホームページにも記載されていました。

 

 

恐らくこのような屁理屈での被害届など、警察が受理するとは考えられないのですが、女性が一人、もしくは小さな子供と過ごす時間に、腕に彫り物がある女性調律師と、いかにもチャラそうな旦那の、ハッピーセットが訪ねてくれば、結構な威圧感だと思います。(僕は見てませんが、そんな感じらしい)

同じ地域の修理屋などは、「あそこが手を付けたお宅には関わりません」と言っているそうです。

 

実際ピアノ業者は、おとなしい方が多いです。

訴えるぞ!というものに対し「上等だテメェ💢、出るとこ出てケリつけてやろうじゃねーか‼️」みたいな人は、滅多にいないのです😂

 

この件については、昨日からツイッター等で投稿しているのですが、こういう事案について特に調律師の方々は、かなりお怒りになってますが、それは当然の事だと思います。

しかし、やったとされる作業内容は、真面目な人であれば初心者でも十分にできるレベルのもの。例え指導者がいなくても、長年経験を積んで人並みの想像力があれば、それなりにはなるはず!

その程度の想像力すら持ち合わせていない、という状態があまりに滑稽で、不謹慎ながら僕は、笑ってしまいました💦

「大切なピアノこんなにされて、奥さん泣いちゃってんだからさ、西尾さん笑っちゃダメだよ」と、嗜められたほどです。

 

調律師ではないので、所詮は他人事なのかも知れません。但し所詮他人事だからこそ、若干違う想像をしているのかも知れません。

 

僕は、こういった業者を放置する事は、周りの業者が将来、不利益を被ることになるのでは?と、危惧してます。

ウチにとって、調律師の方々はお客さんなので、その人たちが不利益を被る事態は、看過できません。

 

最初に長ったらしい前置きをしたのは、大半のピアノユーザーは、ピアノの技術者がピアノを破壊してしまうかも知れないなどとは、恐らく想像した事もないだろう、という事です。

 

今のスタンダードは、お客さんは依頼した調律師が初対面であっても、ピアノがある部屋に案内して「では、よろしくお願いします」となるはずです。

僕が危惧する事は、この当たり前のことが、困難になってしまうのではないか?という事です。

 

実際にあった一つの事例ですが、ある地域の調律の入札で、新参業者が格安で落札しました。そして安い仕事は費用に見合った時間内でとの理由で、一台15〜20分程度で調律をしていきました。

自治体は安さを強要しているのでは無く、新参業者が勝手に値段と品質を下げているだけ。

当然ですがこの事態は問題となり、この業者は入札から排除されました。それだけでは無く、再発防止を目的に入札における手続きが煩雑となり、自治体も業者も大きな負担を強いられることになりました。

一定レベル以上の仕事をする上で、無理のない価格で入札するという、暗黙の信頼関係の上で成り立っていたものが、たった一人の“俺だけハッピー” 的な思想によって、崩壊してしまった訳です。

 

今回の業者は、遅かれ早かれ誰かが取り上げて、拡散されて行ったと思います。業界のものとして怖いのは、彼らが大暴れすることよりも、彼らの行為を取り上げて拡散する人が、一般ユーザーやインフルエンサーだった場合です。

世間的に「調律師って、何だかヤベー奴なんじゃね?」みたいな風潮になって、今まで当たり前だった、お客さんとピアノ業者の、暗黙の信頼関係が崩れてしまったら、そもそもこの業界が、成り立たなくなってしまいます。

まともな調律師かどうかを判定する、謎のチェックリストみたいなものが出回ったら、もうお手上げなのではないだろうか?