ロシアーウクライナ戦争現在の戦局について、北野幸伯さんが『ロシア政治経済ジャーナル』でわかりやすくまとめてくださいました。記事をご紹介します。

(以下引用)

今年に入ってからの流れを。

1月11日、プーチンは、ロシア軍のトップ・ゲラシモフ参謀総長を、ウクライナ特別軍事作戦の総司令官に任命しました。
ゲラシモフは、ロシアのハイブリッド戦略を考案した、世界的に有名な戦略家です。

プーチンは、「3月中に、ルガンスク州、ドネツク州を完全制圧するように」と、ゲラシモフに指示しました。ロシア軍は、攻勢をかけますが、ドネツク州の要所バフムトを落とすことができませんでした。
ゲラシモフは、ミッションを完遂できなかったのです。

なぜ、世界的戦略家ゲラシモフは、大攻勢に失敗したのでしょうか?
「なさけない理由」だったようです。
「BBC NEWS JAPAN」3月6日を見てみましょう。

<イギリス国防省は5日、ウクライナ侵攻を続けるロシアの予備役が、弾薬不足のために「シャベル」を使って「接近戦」を行っている可能性が高いとの見方を示した。

英国防省の最新のアップデートによると、ロシアの予備役が2月下旬、『銃器とシャベル』のみで武装してウクライナの陣地を攻撃するよう命じられたと述べたという >
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▼冷酷だった習近平

ロシアは、武器弾薬が足りない。ゲラシモフがいくら優秀でも、どうしようもありません。そこでプーチンは、どうしたか?

3月20日から22日まで、習近平がモスクワにいました。
プーチン、たった一つの願いは、

「習近平、武器をくれ~~~~~!!!!!!!!」

ということだったのです。

ところが習近平。武器をロシアに供与したら、欧米から制裁を科されるでしょう。それで、プーチンの願いを拒否したのです。

▼徴兵逃れを許さない新法

困ったプーチンは、どうしたか?
武器弾薬の不足を、「人を増やすことで」補うことにした。

時事4月13日。
<ロシアのプーチン政権は、ウクライナ侵攻の一層の長期化を見据え、徴兵忌避の対策強化に乗り出した。
法改正により、これまで紙だけだった招集令状に「電子令状」を導入。
対象者は通知当日から出国禁止となる仕組みだ。>

<従来の紙の招集令状は、本人に手渡さなければ原則無効で、部分動員令の抜け道となった。
今回、ロシアで広く普及する公共サービスサイトの個人ページに電子令状が届いた時点で「受領」と解釈される。
徴兵事務所に出向かない場合、運転免許停止をはじめとする罰則が用意されている。
通知に気付かなかったと抗議しても「自己責任」(下院議員)と却下されることになる。>
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これは、何でしょうか?
この記事にもありますが、前回の「部分動員」では、逃げ道がありました。

「召集令状は、手渡しなければならない」
「手渡しして、召集される人に署名してもらわなければならない」
という法律だった。

だから、外国に脱出できない人でも、多くの男性がダーチャ(郊外の別荘)に逃げて、召集令状を手渡しできない状態をつくっていたのです。
これからは、メール一本で「召集完了」と見なされる。
そして、徴兵に応じなければ、罰が科されます。

▼反転攻勢に備えるウクライナ

一方で、ウクライナには、欧州から戦車が届き始めています。
具体的には、ドイツ製レオパルト2、イギリス製チャレンジャー2。

さらにポーランド、スロバキアは、ウクライナに戦闘機ミグ29を供与します。
ウクライナは、反転攻勢の準備をしているのです。

ここまでをまとめると、

・ロシア軍の大攻勢は、武器弾薬不足などが原因で失敗に終わった。

・苦戦の理由が武器弾薬不足であることを知るプーチンは習近平に助けを求めた。

・欧米から制裁されたくない習近平は、プーチンの願いを拒否した。

・困ったプーチンは、徴兵逃れを困難にする措置を講じ、新兵集めに奔走することになる。

・一方、欧州から戦車、戦闘機を受け取っているウクライナは、大規模な反転攻勢の準備を進める。

と、現状は、こんな感じになっています。

これからの注目点は、「ウクライナの反転攻勢はどうなるのか?」です。