武器や資金は応援するけど、後は自分たちで戦ってね、という欧米のウクライナに対する態度。

実は、第3次世界大戦を避けるための苦肉の策なんだそうです。

北野幸伯さん発行『ロシア政治経済ジャーナル』の記事をご紹介します。

(以下引用)

「ウクライナ侵攻」で、プーチンは、歴史に「永遠の悪名」を残すことになりました。

最近では、プーチンの顔にヒトラーの髪の毛とヒゲを書いた写真を掲げ、反戦デモに参加している人が目立ちます。ヒトラーとプーチンを合わせて、「プトラー」いう用語が使われるようになっている。

ところでヒトラーといえば、「第2次大戦をはじめた男」として知られています。
大陸欧州全土を一時征服し、ソ連に攻め込み失敗。
アメリカ、イギリス、ソ連を中心とする連合軍に敗北した。

ヒトラーと比較されているプーチンは、どうなのでしょうか?
第3次世界大戦を起こすのでしょうか?

信じたくないですが、その可能性はあります。
実をいうと、アメリカとNATOは、

プーチンに第3次世界大戦を起こさせないよう

とても気を使っているのです。どういうことでしょうか?

▼ウクライナへの戦闘機供与に反対するアメリカ

ウクライナのゼレンスキー大統領は、アメリカとNATOに「ウクライナ上空を飛行禁止区域にしてくれ」と要請していました。

要するに、ロシアが制空権を握るのを阻止してほしいと。
空爆を防いだり、空輸によるロシア軍への補給を阻止するために。

しかし、アメリカとNATOはこれを拒否しました。

そこで、ゼレンスキー大統領は、「それなら戦闘機を供与してくれ!」と要請しました。
それで、ポーランドは、「ウクライナに戦闘機をあげたい」と考えた。

ポーランドは、ウクライナの西隣に位置し、難民が殺到している国です。
すでに120万人のウクライナ人がポーランドに逃れ、その数は日々増加しつづけています。

ポーランドは、ウクライナの悲惨さとプーチンの脅威をもっとも感じる国。
それで、「ウクライナに戦闘機を供与して助けたい」と考えた。

しかし、アメリカは、これを支持しませんでした。
AFP=時事3月10日。

<米国防総省は9日、ポーランド軍の戦闘機を米国を介してウクライナに供与する案について、「リスクが高い」として支持しない立場をポーランド側に伝えた。>

これ、「とても冷たい」と感じる人もいるでしょう。
「バイデンは弱腰だ!」と批判したくなる人もいるでしょう。
「ウクライナがかわいそうだ!」と憤る人もいるでしょう。

なぜ、アメリカは、ウクライナに戦闘機を供与することに反対なのでしょうか?
アメリカ政府は、どう説明しているのでしょうか?

国防総省のカービー報道官は、こう説明しています。

<「(戦闘機供与は)事態を深刻化させる動きと誤解され、ロシア側の猛反発に遭い、北大西洋条約機構(NATO)との間での軍事的緊張の高まりにもつながりかねない」と、情報機関が警告していると説明した。>(同上)

要するに、ロシアとウクライナの戦争が、

ロシアとNATOの戦争に転化することを恐れている。

別の言葉で、第3次世界大戦勃発を恐れている。

そうなると、通常兵器の戦いなら、NATO圧勝でしょう。
しかし、プーチンは、核兵器を使うかもしれない。

毎日新聞2月28日。

<ロシアのプーチン大統領は27日、核抑止部隊に特別態勢を取るよう命じた。
ウクライナ支援のため米欧が軍事介入するのをけん制する狙いとみられるが、核保有国がその脅威を公然と口にする事態には懸念も高まっている。>

これ、「ただの脅し」に思えないのです。なぜ?

アメリカの情報機関は、「プーチンは精神異常なのではないか」と疑っています。

東京新聞3月3日。

<ウクライナへの侵攻に伴って疑問の声が出ているロシアのプーチン大統領の精神状態について、米情報機関が分析に乗り出したとの報道が米国で相次いでいる。

ウクライナの民間施設への攻撃が激化し市民の犠牲者が増えているうえ、プーチン氏は核兵器の使用までちらつかせており、常軌を逸した言動を不安視する声が高まっている。>

つまり、アメリカ情報機関は、

狂人が核兵器発射ボタンを所有している

と考えている。

だから、

・ウクライナに戦闘機を供与する
・プーチンは、「NATOが参戦した」とみなし、バルト三国やポーランドに侵攻する
・しかし通常兵器の戦いには勝てないので、核使用を命令する

こういうシナリオを、アメリカやNATOは恐れているのです。

ウクライナを助けたい。
しかし、一線を越えると第3次世界大戦が勃発し、核戦争がはじまるリスクがある。
だから、戦闘機を与えることができない。

現在はそういう状況なのです。

「バイデンは弱気だ」と批判する人も、こういう事情があることを知っておいてほしいと思います。

国際社会は、ウクライナを支援しつつ、なおかつ

第3次世界大戦、核戦争を起こさない

という難しい状態になっています。

そういうリスクが少なからずあることも、知っておきましょう。