前回の記事で紹介されていたmaiLabの、新型コロナワクチンについて解説した動画をご紹介します。



設定から自動翻訳の日本語字幕も表示できますが…ちょっとわかりづらそうです。
以下に、内容をまとめて書きます。

この動画では、新型コロナワクチンに対してよく疑問に思われる点について、解説されています。説明欄では、根拠となるホームページもアドレスが表示されています。
ちなみに、接種の優先順位などはドイツの人に合わせた説明になってます。

問い1:どうしてワクチン開発がそんなに速く進んだのか? そんなに速いのに、安全なの?

理由1:世界的な伝染病なので、研究も数多く行われた。

理由2:開発するために多額の資金が投入された。
    たとえば、ドイツだけでも7億5千万ユーロ。

理由3:SARS1とMERSとの類似性がある。
    いずれもコロナウイルスであり、0から始める必要が無かった。

理由4:複数のプロセスを同時進行させた。
    優先事項であり、リソースが十分にあったので実現できた。
    しかし通常の場合同様注意深く実行されている。
    (たとえば第2段階の検証、評価、改善を待たずに第3段階に進めているとして懸念する動画もありました:Toko)
ここで挙げられた図は次のHPで見られます。

理由5:ローリングレビュー。
    管轄機関はレポートが上がってくるのを待たずに、常に結果を検証している。

理由6:感染者数が多い。
    そのため、被験者の半数には試薬、半数にはプラセボを渡して数ヶ月後の結果を見ればよい。感染が拡大していればしているほど、結果を確認するのは簡単になる。

問い2:アストラ・ゼネカのワクチンは十分に良いと言えるのか?

効果が70%ということは、ワクチンを接種していない成人が1000人のうち18人が感染したところ、接種した成人では1000人のうち5人が感染したということ。

現時点では65歳以上の接種データがまだ少ないため、効果があると断言できていないが、時間とともにデータが集まれば、65歳以上の人にも薦められるだろう。

それまでの間、優先順位が2や3の若い人たちが順位を飛び越して接種を受けられる可能性がある(実際、昨日から教職員と保母・保父グループは、アストラ・ゼネカのワクチンが受けられることが決まりました:Toko)。

その他の利点としては、m-RNAワクチンと違って、ベクターワクチンはそれほど低温にする必要がない。輸送中の問題がなく、家庭医に接種してもらえるようになるかもしれない。

「2流のワクチンなんて受けたくない…」という人もいるだろう。もちろん選べるなら、70%の効果より95%の効果の方がいいに決まっている。

しかし入手できるワクチンは必要とされる量よりずっと少ない。そういう状況は長く続くだろう。だから、ワクチンを選べる状況にはならないだろうし、有意義に分配しなくてはならない。つまり、受けられるワクチンを受ける他ない。

たとえば、Covid-19にかかった場合のおばあちゃんのリスクは、私よりもずっと高い。
その高いリスクが95パーセント抑えられるのと、ずっと少ない私のリスクが70%抑えられるのとを比べれば、私のリスクは結局おばあちゃんよりそう高くはないことになる。実際には、そう差はない。70%というのは、そもそも非常に高い(インフルエンザのワクチンは50%前後だったと記憶しています:Toko)。

問い3:遺伝子ベースのワクチンが私の遺伝形質を変えることはあるのか?

まずワクチンの土台から(とげとげのついた球状のコロナワクチンの形は、よく知られてますね)。突き出たとげの部分がスパイクプロテイン。このスパイクプロテインだけでCovid-19の症状を引き起こすことはないが、これだけで免疫システムを活性化させるには充分なので、ワクチンとして使える。

多くのワクチンは、ウイルスの一部または非活性化したウイルス全体を使うが、培養するのに非常に時間がかかり、現状には実用的ではない。

RNAまたはDNAベースのワクチンは、スパイクプロテインの設計図が入った部分のみを使う。
設計図は細胞内で解読され、細胞自身がスパイクプロテインを生産する。

遺伝子ベースのワクチンはラボで比較的簡単に生産でき、複雑なプロテイン生産を私たち自身が請け負う。

今まで(ヨーロッパで)認可されたワクチンはすべて遺伝子ベース、ビオンテック・ファイザー社とモデルナ社がm-RNAワクチンで、アストラ・ゼネカ社はDNA-ベクターワクチン。キュアバックのm-RNAワクチンとジョンソン&ジョンソンのベクターワクチンも、まもなく認可されるだろう。

ベクターワクチンでは、コロナスパイク遺伝子を送り込むために、無害のウイルスが運送手段として使われる。このウイルスがベクター。ウイルスは増殖できるウイルス(たとえばエボラワクチンで使われる弱毒化されたはしかウイルス)と、増殖に関わる遺伝子を不活性化した増殖できないウイルス(たとえばアストラ・ゼネカのアデノウイルス)がある。

これが細胞と細胞核に送り込まれる。細胞核ではスパイク遺伝子DNAからm-RNA(メッセンジャーリボ核酸)に書き換えられ、この設計図が細胞核からプロテイン工場である細胞内リボソームに送られ、そこでスパイクプロテインが生産され、免疫反応がスタートする。

直接m-RNAを送り込むのがm-RNAワクチン。ここでは運送手段としてウイルスではなく脂質ナノ粒子が使われ、細胞核に送り込まれることもない。

これらのワクチンが遺伝形質を変えることはあるのか。

まずm-RNAでは細胞核には入らずDNAとは接触しない。また自然にm-RNAがDNAに書き換えられることはありえない。
またコロナウイルスに感染すれば、ウイルス自体のm-RNAが体内に入り増殖するわけで、ウイルス遺伝子を恐れるなら、それよりももっとコロナウイルスを恐れるべき。感染でもワクチン接種でも、遺伝子の変化は起こらない。

アストラ・ゼネカのDNAワクチンでは、送り込むのはDNAであってRNAではなく、細胞核に直接送り込むので、以上の理由により遺伝形質を変えることはない。

それでは体外から来たDNAは、私たちの細胞核でゲノムを組み込むことはありうるのか?

根本的にはありうる。私たちのゲノムの8%はウイルスゲノムである。ただしそのためには、特殊な補助手段が必要。一つはDNAからRNAに書き換える、リバース・トランスクリプターゼという酵素。二つ目はウイルスDNAを宿主ゲノムに組み入れられるようにするインテグレースという酵素。

第一に、これらの酵素はワクチンには含まれていない。
第二に、アストラ・ゼネカもジョンソン&ジョンソンもアデノウイルスを使っている。このウイルスは普通の風邪にも含まれているが、このウイルスは組み入れを行わないウイルスであり、細胞核には送り込まれるが、DNAに組み込まれることはない。さらに、スパイクプロテインが生産されて免疫反応が働けば、どっちにしてもこの細胞は殺される。

従って、遺伝子ベースのワクチンがゲノム変化による副作用を起こすのではないかという懸念には、根拠がない。

問い4:非常にまれではあるが、重い副作用については?

まず接種後によくある副作用としては、接種箇所の痛みや頭痛、疲労感などで、これらの反応は普通の接種反応であり、反応源性とも呼ばれ、私たちの免疫システムが自分の仕事をしている印である。

それよりも重い副作用は、接種ではまれだ。接種に対する安全性の要求が極端に高いからだ。
たとえば死に至るガンに対しては、非常に重い副作用も甘んじて受けることがある。しかし、健康な人に対して行う接種は、そうではない。

それでも、副作用がまれであればあるほど、見つけ出すのは難しくなる。

ビオンテック・ファイザーの第3(最終)臨床試験では、参加者は4万人。普通は数千人であることを考えれば、非常に多い。1万人のうち一人に重い副作用があったとしても、統計的には意味があるとは見なさない。

ワクチンは、非常にまれな副作用のリスクが残された状態で認可される。
そのため、ワクチンでは薬品同様に、第4段階、つまり認可後に注意深い観察期間が設けられる。

接種保護法は、接種後に起こったすべての副作用を保険局に申請する義務を定めている。
パウル・エルリッヒ研究所がすべてのデータを集めている。
また、たとえばこの用紙を使って、誰もが自分で申請できる。

第4段階で難しいのは、プラセボを注射したコントロールグループがないこと。
そのため、非常にまれな副作用が接種のためなのかそうでないのか、見極めるのは容易ではない。
第4段階の目的は、注意深く観察して疑わしい症例を見つけ、さらに詳しく調査することである。

どうして何十万人単位でもっと臨床試験を進めないのか。不可能ではないが、ワクチンはその間留め置かれることになる。ワクチン接種が遅れるリスクと、非常にまれな副作用リスクを天秤にかけて考慮すれば、遅れるリスクの方が大きくなる分岐点に至る。もともとCovid-19のリスクは、ワクチンのリスクの比ではない。

問い5:長期間で見た影響はどうなの?(ナルコレプシーが起こったことがあったんじゃないの?)

接種後数時間、数日、数ヶ月に起こらなかった副作用が、ずーっと後になって起こったら?
これに関連して、しばしば豚インフルエンザのワクチン、パンデムリックスがナルコレプシーを引き起こしたことが指摘される。

ナルコレプシーはカタプレクシーなどを伴う、比較的まれな病気であり、カタプレクシーは筋肉が突然弛緩して、ある期間動けなくなる、いわば意識を保ったまま気絶するような症状。

パンデムリックス・ナルコレプシーのケースはサイエンス推理小説のようにスリリングで、コロナワクチン接種にとってもかなり重要である。

しかしかなりややこしい話になるので、maiLabチームのラルスが別に記事を書いて、詳細を説明してくれた。

https://lars-und-die-welt.de/2020/12/17/narkolepsie-schweinegrippe-impfung/

ナルコレプシーは慢性病なので、パンデムリックスのケースは、ワクチン接種が長期的副作用を起こした珍しいケースである。しかしナルコレプシーの兆候は、たいてい接種後数週間から数ヶ月の間に現れている。他のワクチンでも同様である。

m-RNAの臨床試験は2020年夏に始まり今(2021年2月)も続いているけれど、遅れて現れた副作用は今のところない。もっと試験期間を長くすることもできるけれど、その間ワクチンは留め置かれる。今まで見つかっていないような予期できない長期的な副作用が起きるリスクは、Covid-19のリスクに比べてずっと小さい。

つまり、今、接種せずに様子を見ている人は、接種を受ける人に比べてリスクを好んでいるということになる。

問い6:ウイルス変異種に対してワクチン接種は効果があるのか?

ウイルスは宿主の細胞で自身をたくさんコピーして増殖する。コピーの過程でいつも小さなミスがあり、ウイルスの遺伝形質がわずかに変異する。たいていの変異はさして重要ではないが、たまに元のウイルスより有利な変異、たとえば感染しやすいなどの変異が偶然起こる。変異が有利であれば、変異種が原型より優勢になる。ー進化ー

ウイルスにとって有利なのは、感染力が強いけれども宿主がある程度元気で、そこらじゅう歩いて周りの人に感染させてくれること。そうすればもっと感染拡大できる。

現在の変異種はその中間で、毒性は強いままで感染力が強まっている。

もし変異種のスパイクプロテインがすっかり変化して、免疫システムが認識できなくなったら、インミューン・エスケープ、つまりウイルスは免疫反応をすり抜けることができる。

たとえそうなったとしても、また振り出しに戻ることはない。
ウイルスが極端に変異して、いきなりまったく別のウイルスになり、免疫システムが何もできなくなるということは考えられない。予防接種を受けた人や、すでに感染した人は、基礎免疫または交差免疫があるので、また感染する可能性はあるけれども、症状は軽くなるだろうと考えられる。

しかし問題なのは、まだ十分にワクチン接種がなされていない今の段階で、感染力を強めた変異種がはやっていることだ。

ということは、今の段階では他の措置、つまり保護措置や衛生措置が頼りで、それらの措置が機能しなければ、容易にクラスター感染、新たな感染波、ロックダウンに陥る。これらは実際いつでも起こりうる。

少なくとも今ここでもっとも多いイギリスの変異種B1.1.7に対しては、どうやらすべてのワクチンが効果があるようだ。南アフリカなど他の変異種に対しては、ワクチンの効果はまだ正確にはわかっていない。

コロナウイルスが変異をし続けて、ワクチンが効かなくなる可能性は否定できない。そうなれば、ワクチンを実際に調整する必要がある。ここでも遺伝子ベースのワクチンには、大きなメリットがある。まず培養しなければならない従来のワクチンに比べて、遺伝子ベースのワクチンは、ずっと容易に速く調整して生産し直すことができる。

問い7:接種を受けたらもっと自由になれるの?

接種を受けたらまたレストランやコンサート、クラブに行けるようになるのか?
これはもちろん社会上、法律上の問題だけれど、その土台となるのは重要な学術的問題、つまり無ウイルス免疫(自分が免疫があるだけでなく、他の人にも感染させない免疫)の問題だ。
接種を受けた人は、他の人に感染させる可能性があるのか?

今までのところわかっているのは
1. 完璧な無ウイルス免疫は想定できない(接種を受けた人も他の人に感染させる可能性がある)
2. しかしワクチン接種により、他の人に感染させるリスクは減るらしい

しかしリスクがどれほど減るのかはわかっていない。わからない限り社会上、法律上の問題も、有意義に評価することはできない。

ここで答えていない問い「接種を受けたら妊娠できなくなるのか」については、マーティン・モーダースの動画を強くお勧めする。

(まとめ終わり)

ちなみに、ここでは触れていない可能性が一つあります。それは・・・
ワクチン接種もせず、感染もしないうちに新型コロナ肺炎が下火になること。
ワクチン接種したくないって人は、たぶんそういう可能性を願っているんじゃないかと思うんだけど。
まあ、ウイルスがこれからどのように変異してどれほど影響力をふるうかは、予測不可能なので、予防医学の立場としては取り上げる必要はないんだろうな・・・。