ハイリゲンシュタット | 還暦過ぎたピアニスト

還暦過ぎたピアニスト

青が好き。色も、響きも、そしてその意味も。若々しい躍動的なイメージがあり、未熟な初々しいイメージもある。「ヨーロッパの赤には、青が一滴」という発想も素敵だと思う。シニアになった今も、できれば青の近くで、楽しみたい・・。

ベートーヴェンの残した遺書で、音楽通の人達にとっては、世界的に有名な地名となった、ハイリゲンシュタット。


最初に訪れた時は、本当にあるんだ~、といった感慨があったなあ。


多分、当時と大きくは変わっていないだろうと思われる、ウィーン郊外、ウィーンの森一帯の中にある。


留学して間もない頃、お天気が良いので今日はウィーンの森へ行ってみようと思い立ち、近くの公園でベンチに腰かけていたおばあさん達に、地図を広げて訊いてみた事があった。


「ウィーンの森へ行きたいのですが、どちらの方向へ行けばよいでしょうか・・?」


すると、並んで座っていた二人のおばあさんは「ウィーンの森は、どちらの方向なのか、だって?」と笑いながら


「ウィーンの街の周りが全部、森なのだよ・・」と、教えてくれたのだった。


若い、というのは良いなあ・・、何となく。


未だに、ウィーンに滞在して時間が許せば、ウィーンの森のハイリゲンシュタットは、必ず訪れてみる場所だ。


近くを流れる、ベートーヴェンが散歩をしていたという小川のほとりも、必ず立ち寄って、ゆったりと歩いてみる。


頭の中は勿論、田園交響楽の二楽章「小川のほとりの情景」である。


小川沿いの小径には、「ベートーヴェン・ガング(ベートーヴェンの小径)」という名がついている、


つまり、小川沿いの高級住宅地に住む人たちは、自分の住所が「Beethovengang」という訳だ。ちょっと、魅惑的・・。


遺書を書いた家の窓から、すぐ近くに教会が見える。


この教会の鐘の音が聞こえなくなって、ベートーヴェンは絶望の余り遺書を書いた、とも言われている。


小さな博物館になっている彼の部屋で、15分も佇んでいれば、教会から時を告げる鐘の音が聞こえてくるのに・・。


今回訪れた時は、3時少し前だったので、15分に一度の定例の鐘の音と、3時を告げる鐘の音を聞いた。


そして私は、窓から見える青い空のあまりの美しさに誘われて、地下鉄で一路、シェーンブルン宮殿の庭園へと足を延ばしたのだった。