夫の三回目の手術で最悪の結果を医者から聞き、絶望のどん底で過去の嫌な経験と、同時にどうやって生きてきたのかを考えていました。

 

もう毎日が辛くて、夫より先に死にたいと毎日思っていました。夫の居ない人生なんて考えられません。

 

夫は私を救ってくれた恩人です。寂しくて満たされない私に愛情を注いでくれました。過去の傷でボロボロになっている私の心を優しく時間をかけて癒してくれました。「俺は◯◯ちゃんしか見てないよ」、「俺は◯◯ちゃんだけいればいいんだ」とよく言ってくれました。それは私の一番欲しかった言葉でした。誰かの心の1番でいたい、安心出来る居場所が欲しいと、ずっと求めてきました。

夫には私の生い立ちから全てを話しました。何時間でも何度でも私が満足するまで、話を聞いてくれて、私を決して否定せず同情してくれました。

 

外を歩けば手を繋ぎ、寝るときには背中をとんとんと叩いて眠りにつくまで側に居てくれて、優しい表情で頭をなでなでします。私が親に求めていたものを夫がやってくれました。

 

また、貧しい生活が長かったので、海外旅行はもちろん、国内旅行もほとんど行ったことがありませんでした。飛行機も、船も乗ったことがありません。そんな私を夫は色々なところに連れて行ってくれました。初めての海外旅行、初めての飛行機、初めての船。感動だらけでした。

夫と一緒に美しい景色を観て、美味しいものを食べて、一緒に感動して、私には幸せ過ぎでした。

夫も私の反応が面白かったみたいで、次々と遊ぶ計画を立ててくれました。

 

また、夫は「やりたいことはやればいい」と言ってくれて、長年の夢だったピアノを簡単に購入し、ピアノ教室に通うこともできました。

自分のことを、「バカだから」とか「ブスでデブだから」と言っている私の言葉を完全に否定してくれて、「あなたはもっと自分に自信を持ったほうがいい」と言ってくれました。夫が居てくれたから私は本来の自分を取り戻すことが出来たのに。

 

連れ子同士の再婚だったので、難しい家族関係でしたが、問題が出るとすぐに話し合って解決してきました。血の繋がりはまったく関係ないことも一緒に経験してきました。今では夫を心配して、子供たちが駆けつけ、力になってくれます。とても頼もしく優しい人間に成長してくれました。

夫だから全て上手くいきました。

どんな難しいことも夫さえ側にいてくれれば乗り越えられるのに。

 

私は夫から愛情、楽しい経験、感動、沢山のものを貰いました。

困ったときはいつでも話を聞いてくれて、解決策を一緒に考えてくれました。

それなのに、夫の人生最大のピンチに私は何も出来ない。側に行くことすら出来ない。ただ泣いているだけです。

 

「なんでこんなことになってしまったんだろう?」.........「それはあのときに救急車を呼ばなかったから」ともう一人の自分が答えます。あのときすぐに病院に行っていれば、こんなことにならなかった。小腸の大半が壊死するほど苦しんでいた夫を放置して、私はぐっする眠ってしまった。

 

人生最大最悪の大失敗を私は犯してしまいました。

結局私は一人で何も出来ない。無能でバカで成長なんてしてなかった。

 

当時は実の母が亡くなったばかりで、そのショックから立ち直っていませんでした。

死んでしまうと、二度と声を聴くことも、肌に触れることも出来なくなってしまいます。どんなに会いたいと思っても二度とその姿を見ることが出来なくなってしまいます。それがどれ程悲しくて、寂しくて辛いことか思い知らされていました。

そんな貴重な体験をしていたのに、夫の異変に私は全く気が付かず、放置してしまいました。後悔は多々ありますが、これほどの大きな後悔はありません。

 

このときの私は夫を失うことばかりを考えていて、不安と恐怖に怯えて自分の無力さに怒り・悲しみやりきれない気持ちでいっぱいでした。

 

この続きはまた次回書きたいと思いますので、読んで頂けると嬉しいです。

このときの心境を趣味のピアノで弾いてみました。

下手な演奏ですがどうぞ聴いて下さい。