医者はとても丁寧にゆっくりと説明してくれましたが、私の頭は真っ白になってしまい、完全に思考停止しました。
このときのことは、ショックで記憶が飛んでいます。
気がつくと夫が医者に色々質問していました。
夫は極力再手術せずに、回復を待ちたいが、口からの摂取が3か月から6か月も出来ないし、最悪、腸が狭窄閉塞になってしまったら緊急手術をすることになってしまう。
だからといって、手術をして小腸を切ってしまったら、一生点滴生活になってしまい自由に行動することが出来なくなる。
簡単に決められることではなかった。
しかし、今すぐに決めなくてはいけない。
そんな雰囲気でした。
私の頭の中は、最初の手術後に医者から言われた、小腸50㎝以下になってしまったら、一生点滴生活になることと、ほぼ口から食事を摂ることは難しい。
「余命2年。」が頭をよぎりました。
もし再手術をしてしまったら、あと2年しか一緒にいられない。
残された2年間は好きなものを食べることも、旅行に行くことも出来ない。辛い思いをしながら弱って行く姿をずっと見続けなければならない。
とても耐えられない。
まだまだずっと一緒にいたい。
私と夫の未来がこんな最悪に終わっていいのか。
「胸が苦しくて呼吸が出来ない。誰か助けて!」と心の中で何度も叫んでいました。
ぼろぼろ涙が止まらなくて、一番辛いはずの夫が私の頭をずっと撫でていました。
夫は決断しました。
「再手術をします」と。
医者の表情が少し緩んで、「では、明日手術をしましょう。」
「えっ!明日?!」私も主人も顔を見合わせて同じセリフを言っていました。
今思うと、医者は始めから再手術をするつもりで説明していて、あとは本人の口から再手術を希望することを言わせたかったんだと思います。
・手術は10月28日14時開始
・壊死した腸管切除
・時間は4~6時間
術後
・10月30日頃一般病棟に戻り歩行訓練を開始
・10/31には飲水開始
・11月4日~7日位に口からの食事を開始(栄養剤を飲むところから始める)
・順調にいけば年内に退院できる
医者からの説明後、夫は私の手をとりエレベータまで送ってくれました。
こんな状況でも夫はとても優しい笑顔で「また明日ね」と私を気遣ってくれました。
夫の大変なときに、私は泣いてばかりで何も出来ませんでした。
一人で今日のことを考えながら家に向かい、途中息子と娘にLINEで明日再手術になった事を伝えました。
同居している娘から「夕飯食べる?」と聞かれましたが、「とても食べられない」と回答しました。
娘は私をとても心配してくれていて、オムライスを作って待っててくれました。
私は娘の気遣いを無駄にしてはいけないと思い、「一口だけ」と口にすると、あまりの美味しさでぺろりと全部食べてしまいました。
そのときの味はとても優しく、悲しく辛い心を癒やしてくれました。
お腹が満たされると少し元気が戻ってきて、「手術してみないと分からないよね。もしかした、50センチも切らずに済むかもしれないよね」と娘と話し、なんとか気持ちを落ち着かせました。
この続きは次回書きますので、読んで頂けると嬉しいです。
このときの苦しい思いを趣味のピアノで弾いてみました。
下手な演奏ですが是非聴いて下さい。