名古屋市天白区にあるPhysio Conditioning Lab.(フィジオコンディショニングラボ)|パーソナルトレーニング×ピラティス&ボディメンテナンス 理学療法士トレーナーの柴田です。
はじめに
「椅子から立ち上がるとき、最初の一歩で膝がズキッとする」
「トイレや車の座席から立つときも、膝が気になる」
「しばらく歩いていると落ち着くけれど、立つときがつらい」
そんなお悩みはありませんか?
日常の何気ない動作で膝が痛むと、「このまま悪くなるのでは」「歩けなくなったらどうしよう」と不安になりますよね。
結論からお伝えします。
椅子から立つときに膝が痛む背景には、変形性膝関節症の初期変化が隠れていることがあります。
また、太ももの筋力、股関節や骨盤の動きなど、膝以外の要素が関わることもあります。
大切なのは、痛みの出方を整理して、受診が必要なサインを知ることです。
この記事では、考えられる原因、日常で見直したいこと、受診の目安をお伝えします。
読み終えると、「自分の膝は様子見でよいのか、相談すべきか」の判断材料が得られます。
椅子から立ち上がる動作と膝の関係
椅子から立つときは、上半身を前に傾けて重心を足に移し、足で床を押しながら膝と股関節を伸ばして体を持ち上げます。
ここからは、動作を解剖学的に考えた私の見立てですが、膝だけではなく、太ももの筋肉、股関節、骨盤が連動して働く動作です。
この連動について、理学療法ジャーナル59巻1号(2025年・加藤浩先生)では、荷重をかけた姿勢では、骨盤からの影響と足部からの影響が、それぞれ膝に異なる動きのパターンを生むと解説されています。
また、股関節と膝関節の間では関節にかかる力(関節モーメント)のトレードオフがあり、姿勢や動作の効率が保たれているとされています。
つまり、膝が痛むときでも、原因が膝だけにあるとは限らないということです。
ただし、「膝の痛みは必ず股関節が原因」というわけでもありません。
まず膝自体の問題がないかを確認することが大切です。
椅子から立つときに膝が痛む主な原因
① 変形性膝関節症の初期変化
最も知られている原因の一つが、変形性膝関節症です。
日本健診財団の解説では、変形性膝関節症は膝関節の軟骨や半月板がすり減り、痛みが生じる疾患とされています。
原因は加齢が多いですが、肥満、遺伝、膝のケガなどが関与することもあり、40代以降の女性に多く見られるとされています。
この資料では、初期の症状として、歩き始めなど動作開始時の痛みが挙げられ、しばらく体を動かすと徐々に痛みがやわらぐこともあると説明しています。
警察病院整形外科の医師コラム(古澤達也先生)でも、50歳以降で膝の痛みを起こす代表的な疾患として変形性膝関節症を挙げ、立ち上がりや歩き初め、階段昇降で膝が痛む、O脚が進んできた、といったことが主な初期症状で、レントゲンで診断が可能であると述べています。
進行の目安として、日本整形外科学会のウェブサイトを参照した医療情報サイト(QLife)では、初期は立ち上がりや歩きはじめの動作開始時のみ痛み、中期は正座や階段の上り下りが難しくなり、末期は安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、歩行が難しくなると紹介されています。
椅子から立つときだけ痛むのは、初期のサインの一つとして、整形外科で確認してほしい状態です。
この病気の治療について、国立病院機構の岩国医療センターの情報誌(2017年)では、保存的治療では損傷した軟骨は正常に戻らないと説明されています。
だからこそ、早めに状態を把握して、適切な対応を選ぶことが大切です。
② 膝のお皿の周り(膝蓋大腿関節)の痛み
膝の前側、お皿(膝蓋骨)の周りが痛むタイプもあります。
理学療法ジャーナル56巻5号(2022年・森口晃一先生)では、変形性膝関節症のうち膝蓋大腿関節(お皿と太ももの骨の間の関節)に焦点を当てた症例が紹介されています。
その症例は64歳の女性で、初診の約2か月前からしゃがみ込む際に膝に軽い痛みが出て、その後、歩行時の痛みはほとんどないのに、椅子からの起立時や階段昇降時にも痛みが出てきたとされています。
痛む部位は主に膝の前方(やや内側寄り)です。
これは1例の紹介ですので、「同じ状態の人が多い」という意味ではありません。
こうしたパターンもあるという目安として受け取ってください。
③ 太ももの筋力の低下
太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)は、立ち上がるときに膝を伸ばすときに大きく働く筋肉です。
国立病院機構の理学療法士による資料では、大腿四頭筋の筋力が弱ると膝への負担が大きくなると説明されています。
また、医療情報サイトQLifeの紹介記事では、運動習慣のない人は年齢とともに筋力が確実に落ちていくと述べられています。
長崎大学の論文では、大腿四頭筋訓練が変形性膝関節症患者に対する運動療法として広く実施されており、下肢伸展位挙上運動を8週間続けた群で、非ステロイド系消炎薬を服用した群と同程度の痛みの軽減が認められたという多施設共同研究が紹介されています。
ただし同じ論文では、これまでの研究は進行期の患者が対象となっていることが多く、早期や末期の患者でも同じ効果が得られるかは明らかではないとされています。
「筋力を鍛えれば誰でもよくなる」という話ではありません。
④ 股関節や骨盤の動きの影響
膝の痛みの背景に、股関節や骨盤が関わることもあります。
第52回日本理学療法学術大会の抄録では、「股関節疾患患者の骨盤アライメントは立ち上がり能力に影響する」という題名で、片側の股関節疾患患者52名を対象にした報告があります。
骨盤が後ろに傾いている症例では、前に傾いている症例と比べて、健側の膝を伸ばす筋力が大きいにもかかわらず、立ち上がり能力が低下していたとされています。
これは股関節疾患の患者を対象にした報告ですので、すべての方に当てはまるわけではありません。
ただ、立ち上がり動作は膝の筋力だけで決まらないというヒントになります。
⑤ その他の膝の問題
病院の医療トピックス資料では、変形性膝関節症には、半月板損傷や関節内遊離体(関節ねずみ)、膝の後ろのベーカー嚢腫を合併することがあると説明されています。
炎症が強くなると関節液がたまり、膝がはれて、曲げると強い痛みを伴うとされています。
膝がはれる、熱をもつ、曲げると強く痛むといった変化がある場合は、早めの受診をおすすめします。
3. 日常で見直したいこと
以下は一般的な工夫です。痛みが強いときや、膝がはれているときは無理をせず、医療機関で相談してください。
- 立ち上がるときは、肘掛けや机に手をついて、膝だけに負担が集中しないようにする
- 深く座りすぎず、高めの椅子やクッションを使うと立ちやすくなる場合がある
- 膝を冷やさず、入浴などで温める(日本健診財団の資料では、冷えにより痛みが増すことがあるとされています)
- 体重が重い場合は、膝への負担を考えて減量を検討する(同資料では、歩くだけでも膝への負荷は体重の3〜4倍程度かかると言われていると紹介されています)
- 筋力を高める運動は、痛みを我慢せず、痛みを生じない程度で行う(国立病院機構の理学療法士の資料より)
これらは痛みを悪化させにくくするための工夫です。
原因を治すものではありません。
おすすめの運動は、膝の状態によって違うため、医師や理学療法士に相談してから進めてください。
受診を考えたほうがよい目安
次のような場合は、整形外科の受診をおすすめします。
- 膝の痛みが長引いている、または強くなっている
- 膝がはれている、熱をもっている
- 正座ができない、階段の昇降が難しい
- O脚やX脚が目立ってきた、膝がピンと伸びない
- じっとしているときや、夜間にも痛む(安静時痛)
- 転倒やひねり、強い力を加えたあとに痛む
病院の医療トピックス資料では、長引く膝の痛みやはれ、O脚やX脚変形、正座ができないなどの症状があれば、変形性関節症の可能性もあるため整形外科の受診をすすめています。
「安静時痛」は末期の症状として紹介されています。
その他の項目は、一般的な受診の目安として挙げたものです。
気になる場合は医療機関で確認してください。
フィジオコンディショニングラボでできること
当ジムは、名古屋市天白区植田にあり、痛み改善・姿勢改善など身体機能の改善に特化したパーソナルジムです。
瑞穂区、昭和区、日進市からもアクセスしやすく、無料駐車場(2台)もご用意しています。
椅子から立つときの膝の痛みは、膝そのものだけでなく、太ももの筋力、股関節や骨盤の動き、立ち上がり方のクセが人それぞれ違うため、評価が欠かせません。
当ジムでは、施術でもトレーニングでも、最初に医学的な身体評価を行います。
立ち上がる動作、膝・股関節・骨盤の動き、筋力、動作のクセなどを確認し、原因を丁寧に探したうえで、ストレッチやトレーニングなどのアプローチ方法を組み立てます。
姿勢改善などを目的にトレーニングを行う場合も同じです。
いきなり運動を始めるのではなく、まず身体評価を行い、原因に対して必要なトレーニングやエクササイズを選んで進めていきます。
なお、病気の診断は医師が行うものです。
受診が必要と思われる場合は、医療機関への受診をおすすめすることがあります。
効果の出方には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束できるものではありません。
まとめ
- 椅子から立つ動作は、膝だけでなく太もも・股関節・骨盤が連動して働く動作です
- 原因として、変形性膝関節症の初期変化、膝のお皿周りの痛み、太ももの筋力低下、股関節・骨盤の影響などが考えられます
- 手をつく、冷やさない、体重を見直すなど、日常の工夫で痛みを和らげる工夫もあります
- 膝がはれる、安静時痛、正座ができないなどがあれば、まず医療機関へ
- 人と同じ運動ではなく、自分の膝を評価してから進めることが大切です
「膝の痛みを放っておいていいのかわからない」「自分に合う運動を知りたい」という方は、お気軽にご相談ください。
名古屋市天白区植田で、あなたの身体の状態に合わせてお話を伺います。
参考・出典
- 日本健診財団「膝」(2024年10月号) https://nihonkenshin.jp/pdf/202410/03.pdf
- 国立病院機構 岩国医療センター「岩国医療センターだより」2017年 No.123(日本整形外科学会の引用を含む) https://iwakuni.hosp.go.jp/files/000104063.pdf
- 国立病院機構(熊本)の理学療法士 柴 彩人「変形性膝関節症に対するリハビリテーション」 https://kumamoto.hosp.go.jp/files/000208380.pdf
- 警察病院 整形外科 古澤 達也先生 医師コラム vol.12 https://www.keisatsubyoin.or.jp/PDF/shinryoka/seikei/vol.12_Dr-Column.pdf
- QLife 注目疾患「変形性膝関節症」(2019年8月7日) https://www.qlife.jp/square/noteworthy_disease/story65168.html
- 本川 智子「早期および末期変形性膝関節症の痛みに対する大腿四頭筋の筋収縮運動の効果」(長崎大学) https://www.am.nagasaki-u.ac.jp/physical/2019/ARGH15-10.pdf
- 森口 晃一「変形性膝関節症—膝蓋大腿関節」理学療法ジャーナル56巻5号(2022年) https://imis.igaku-shoin.co.jp/contents/journal/09150552/56/5/1551202654
- 加藤 浩「股関節と膝関節関連障害—1.運動学的関連性」理学療法ジャーナル59巻1号(2025年) https://imis.igaku-shoin.co.jp/contents/journal/09150552/59/1/091505520590010055
- 島村 奈那・南角 学ほか「股関節疾患患者の骨盤アライメントは立ち上がり能力に影響する」第52回日本理学療法学術大会抄録 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2016/0/2016_0353/_article/-char/ja
- 病院の医療トピックス資料(変形性膝関節症) https://www.uno.or.jp/medicaltopics/pdf/osteoarthritis.pdf
