今回は、高校化学の気体の製法についてお話しします。
とくに、加熱が必要かどうかに絞って話します。
加熱が必要な気体の製法は次の3つだと思ってください
①熱濃硫酸を用いる反応
これは「熱」濃硫酸なのだから当然ですね
NaCl+H2SO4→NaHSO4+HCl↑
②固体と固体の反応
固体と固体は接触するだけでは反応をおこしません。
加熱が必要です。
2NH4Cl+Ca(OH)2→CaCl2+2NH3↑+2H2O
ところで、この反応、なぜわざわざ固体を用いるのでしょうか?
水酸化カルシウムの水溶液は普通にあります。
水酸化カルシウムの水溶液に固体の塩化アンモニウムをぶちこんじゃえば、加熱なしにアンモニアが発生するんじゃね?
そうです。するのです。が、問題があるのです。
アンモニアって水にめちゃくちゃ溶けやすい。
だから、水酸化カルシウムの水溶液を使っちゃうと、
アンモニアは発生するのですが、デキた途端に水に溶けてしまって、捕集することができない。
そういうわけで、固体を用いて加熱するという方法を採用しています。
入試で「なぜ、固体を用いるのか?」
まで問われることはないかもしれません。
でも、こういう裏話がわかっていると記憶に張り付きやすくありませんか?
アンモニアの製法?ああ、あの固体の塩化アンモニウムと水酸化カルシウム使うヤツな!
という具合に。
私は「物語で覚える」という方法を推奨しています。
③濃塩酸と酸化マンガン(Ⅳ)から塩素を生成する反応
MnO2+4HCl→MnCl2+2H2O+Cl2↑
この反応は加熱が要る特別な反応として覚えてください。
なぜ加熱が必要なのでしょうか?
まず、この反応は酸化・還元反応です。
左辺の酸化剤はMnO2
右辺の酸化剤はCl2
これ、実はCl2の方が強い酸化剤なのです。
ということは、この反応は普通左向きの逆反応が起こりますね。
それを無理矢理右に進ませるために
塩酸を濃塩酸にし、さらに加熱しているのです。
じゃあ、MnO2なんて弱い酸化剤を使わず、
強い酸化剤・過マンガン酸カリウムKMnO4水溶液を使えば加熱しなくてよくね?
そうなんです。しかし、問題があります。
塩酸は水溶液、過マンガン酸カリウムも水溶液
これ両者を混合すると分離する方法がありませんね。
すると、毒ガス・塩素が発生し続け、反応を止める術がないのです。
実験室ではこういう反応を行うわけにはいきません。
そういうわけでわざわざ固体の酸化マンガン(Ⅳ)を用いているのです。
固体と液体なら分離できますね。また、加熱をやめれば反応が止まります。
実験室の反応では、このように、反応を止めることができるか、ということも大切になります。
反応を自在に止められるようにするための工夫が、
滴下漏斗であり、キップの装置であり、ふたまた試験管なのです。
なんのためにキップの装置、ふたまた試験管を用いるのか、
ということは押さえておきたいところです。
以上、気体の製法と加熱について述べました。
気体の製法についてもっと詳しく知りたいという方は以下の教材をどうぞ
気体の製法の理論は整理して理解しておきましょう。