今回はセンター試験の問題の解説をしたいと思います。
今年、平成31年化学 第2問の問3
溶解度積の問題、です。
この問題ちょっと引っかけ問題なんです。
引っかかった人が多かったと思うので解説してみます。
引っかけポイントは
溶液は混合したら体積が変わる!
ということです。
まず、溶解度積を求めましょう。
グラフのちょうど格子の交点上にある点を探すと
(1.8×10-5,1.0×10-5)の点があります。
ということは両者をかけて
KSP=1.8×10-10
ですね
それで、混合する硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液の体積が
ア~オまで5組与えられています。
イとオで間違えた人が多いと思うのでそれを採り上げます。
なお、面倒なので以下
濃度の積は「×10-10」を省略
濃度は「×10-5」を省略します。
濃度をかけたら溶解度積なんだろう、という理解の人がケッコウいると思いますが...
イは硝酸銀の濃度が2、塩化ナトリウムの濃度が2
この問題
2×2=4>1.8
で沈殿が生じるとしてしまった人がかなりいると思います。
溶解平衡、溶解度積の基本から説明します。
まず、沈殿が生じるかどうかまだ分かっていないので
「仮に沈殿が生じないとした場合の濃度」=「仮濃度」を求めます。
仮濃度は[Ag+]仮などと表すことにしましょう。
そして、仮濃度の積が仮溶解度積です。仮溶解度積はK仮と表します。
K仮=[Ag+]仮[Cl-]仮
ということです。
「仮濃度」「仮溶解度積」は私が勝手につくった言葉で他では通用しませんが、
この辺りの理解は大切だと思っています。
教科書に溶解度積の式が書いてあって、
KSP=[Ag+][Cl-]
溶解度積は濃度で決まる
と誤解している人が多いと思います。
溶解度積は温度で決まるものです。
ココ大切です。
教科書の式はある意味ウソです。
正確には
KSP=[Ag+]平衡[Cl-]平衡
この式の意味分かりますかね...
溶解平衡が成立している状態の濃度の積が溶解度積です。平衡が成立していることが条件です。
その場合も、濃度が溶解度積を決めるのではなく、溶解度積が平衡状態の濃度を決めます。
あくまで、溶解度積は温度の関数です。
その溶解度積と仮溶解度積を比較するのが定石です。
問題に戻ります。
この問題の仮濃度を
[Ag+]仮=2
[Cl-]仮=2
として
K仮=2×2=4>1.8(=KSP)
コレがダメな理由が分かりますか?
溶液を混合すると体積が変わるので仮濃度が変わる
ここが引っかけです。
この問題同体積を混合しているので
体積は倍、仮濃度は1/2になっているのです。
したがって
[Ag+]仮=1
[Cl-]仮=1
が正しい仮濃度の値です。
K仮=1×1=1<1.8(=KSP)
で沈殿は生じません。
オも同様で、仮濃度を1/2にするのを忘れると間違うケースです。
溶液を混ぜたら体積、引いては濃度も変化する
私はこれを力を入れて教えています。
緩衝溶液の問題など他のところでも使います。
本当は、体積保存の法則というのはないので
混合後の体積は混合前の体積の和になるとは限りません。
だから、この問題
「混合後の体積は、混合前の体積の和と考えて良い」
と一言、注意を入れなければいけないのですが...
センターの出題者のミスですね。
この問題は沈殿が生じるかどうかの判定だけで、
沈殿の量や、イオンの濃度を求める必要はありませんが、
求める問題も出題されることがあります。
それもケッコウ難しくテクニックが必要です。
そのあたり、以下の教材で説明しました。
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こういう教科書ではわかりにくいようなことも
わたくし大阪の家庭教師は丁寧に説明します。
家庭教師の依頼がありましたら。
大阪周辺で高校物理、高校化学を教えています。
皆さん、センター試験のこの問題正解できましたか?
参考にしてみて下さい。