普段渋谷なんて歩かない俺が、偶然出会った映画。
これもまた思い出。

たまたま見つけた看板にひかれてついつい入ってしまったのがこの「ムトゥ」。
しかも並んでしまった。なぜだか思いだせない。

先の上映の終わるのを外のフロアで待っているとき、中からものすごい笑い声と、
驚くべきことに大勢の観客の拍手が聞こえてきた。ショックだった。
あとでパンフレットなどにこの映画の見方、のような感じで拍手しよう、ってくらいのことが書いてあった。
とにかくちとびっくりさせられて、わくわくしながら席についた。
近くにインド人の初老の夫婦の方々も見えた。
あとはだいたい日本の若者。
はじまるやいなやインドのキムタクことスーパースター、ラジニ・カートンの名前が他の俳優とは比べ物にならない大きさで画面奥よりズーム!
大拍手。大笑い!
ラジニが真っ白な服で出てきて抱え込み前方宙返りかなんかして馬車に飛び乗ってこれまた拍手!大笑い!
なんだか映画館だっていうのに、なんだろこの一体感は?って感じで、いくらコメディー映画とはいえ、この異質なテンションはなんだろう?って驚いた。
渋谷の映画館でねぇ~。
自分は「クラブ」とかなんとか、そういうハイカラな若者文化じみた場所には行かないからわからないけれど、あの日のこの映画を観たあの空間ってのも、なかなかどうしてレトロな人間くさいエネルギーと開放感が漂っていてすごくいいなって感じた。

インド映画はとりあえず大勢でダンスするのがお決まりみたいだけど、これもこれでもかってくらい踊ってた。
でもそんなに退屈には感じなかった。
それだけギャグの部分が面白かったし、さすがに「インドのキムタク」ってだけあって、キャラクターが立ってた。
そういう意味では本家よりも立ってるといえる。見た目単なるおっさんなんだけど、たしかに妙なセクシーさがある。
日本でいうところのそれではなくて、もっとプリミティブな感じの。
あと相手やくの女優さんは綺麗だね。
もともとインドの人だし目鼻立ちはバリっとしてるし美形というか、例のインドのけばいメイクとど派手な演出でもってもう神々しいのなんの。
これも文化の違い。

後日。
一年かそこらしてビデオ屋でレンタルされてるのを見つけて借りようと思い、一度手にとりかけて、すこしためらった。
「これはきっと、あの映画館の雰囲気が無いと意外につまらないぞ....。」
そんな考えがよぎったから。
それでも結局一度は借りて観た記憶がある。
そしたら、まずまずだった。
たしかに面白いことはおもしろい。
でもやっぱり、インド映画は映画館でね。
それも拍手と爆笑の渦の中、大勢で見ないと楽しさ半減だよ。
でもそういう「文化」ってことでとらえたら、なんだかインドっていいな、って思う。
いい映画を撮るってのもエライことだし、それを認める教養もたいしたもんだと思うけど、映画の一側面でこういう大衆の一体感が得られるなんてところもなかなか価値あることだと思う。
良し悪しも当然あるけど、これも一つの見方だから。

DVDとか安くなってますます映画館に行く人がへってるんじゃいかって思うし、作る人たちだってあるていどそういう映像の流通とか消費の形態とかわかってつくってるふしがあるからなんかかえって不自然な様相を呈しているように感じる今日このごろ。
インドの映画の見方。大勢で観る。あるいは大家族的に団欒で観る。
煮え切らないなんて言われるような表現しかなくても、それはそういう用途や文化背景ゆえ。
なにか人間的な実際のつながりとともにあるような映画の存在は、なんかいい感じがする。

もっともこれも数年前のはなし。
いまはどんな状況か?よく知らないし。

ちなみに音楽も良くって、サントラ持ってる。
インドの音楽なのに電子楽器ふんだんに使ってる。
いわゆるテクノではないけどまあ、音はそれ系な感じにやっている。
インドの旋律でやっててばっちりはまってるからかっこいい。
日本も負けてらんないよこりゃ。
、とあえて言おうと思う。
いいかい?「品質」だけがすべてじゃないよ。
大衆文化としては、わかりやすさの中のエネルギーも大事だと思うんだ。