黒牢城 | ありのす

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混沌とした毎日の日記
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梅雨が明けました。今日は暑かったですね。

なんだか体がついていかないので、家で読書をしています。

米澤穂信の新作読みました。

郊外の館ものなのかと思っていたら、櫓の写真に黒田の紋の表紙。ばりばりの時代劇でした。

舞台は戦国まっただ中、荒木村重が信長に謀反を起こして立て籠もった有岡城。

黒田官兵衛が説得のため訪れたところから始まります。

 

実はこの史実を全く知らず、予備知識なしの状態で読んでいましたが、それなりに面白かったです。

当時の常識?としては、反乱した敵方に単身説得に乗り込んで、成功しなければそのまま殺されるか帰されるのが普通だったようですが、村重は官兵衛を捕らえて、そのまま地下牢に幽閉してしまいます。

史実によると、官兵衛は1年あまり有岡城の地下牢に閉じ込められ、おかげで足が不自由になってしまったそう。

そのあたりの描写は小説内でも鬼気迫るものがありますが、米澤氏の本領発揮は、この状況を安楽椅子探偵になぞらえたこと。

いや、土牢にソファがあるわけもなく、虫が這い回る多湿の不衛生な環境ですが、牢屋の官兵衛があまりに切れるので、つい村重が城内の不可解な事件を相談してしまうという展開は、安楽椅子探偵そのものでしょう。

 

とはいえ、描写といい会話の言い回しといい、そのまま大河ドラマに使えそうな重厚感とリアルさがあって、細かい所の作り込みというか、凝り方というか、丁寧さはさすがに米澤作品だなあと感心しました。

まあ、こういう異種ジャンルミステリは一度「折れた竜骨」で経験してますので、あるかなーとは思ったのですが、冒頭50ページ弱は読んでて普通の時代小説かと思ったくらいです。

今年もミステリ賞3冠あるかもと思える野心作ですねー。

 

個人的には村重の生涯といい、一向宗と信長の血で血を洗う戦闘といい、最後の官兵衛のエピソードといい、知らないのもありますが新鮮で勉強にもなりました。

まだまだ外出も旅行も控えろとされそうな夏ですが、オリンピックを横目の読書におすすめします。