まずは発表済みのデータをここに再録する(詳しくはこちらを参照)。

 

 KTの9年間の長きにわたる「不思議な時代」2007-2015にぴったりと付合するように株式会社日本パルスからDVD「SING! SING! SING! 2007-2015」が発売されている。そのDVDのケースのなかに一枚の貴重すぎる栞が収められている。この期間のDMたちの短い短い手記である。DVD発売に際して後年書かれたのはものである。短いが無いより遥かに遥かにマシである。その文章を拾って行くことにしよう。もちろん動画そのものを載せることはできない。しかし出回っている海賊版等を添えて行く。(平松先生も,宮コーチも筆まめでなかったようだし,鬼籍の人たちである。卒業生も黙して語らない。学校も過去の宝を活用しない。T先生もマーチングそのものには詳しくない,というか興味がない。)

 

(1)2007年 第20回全日本マーチングコンテスト〔Line of DANCE〕

DM H. Kubota

 当時は大きなルール改正が行われた年で,今までは無縁だった「規定演技」への挑戦の年でした。KTといえば「ハイステップ」のイメージを,如何に規定演技の中で独特のカラーを出すか苦労しました。また,初めてだったため,練習方法に随分悩みました。見どころはシングシングシングのダンスと,クラリネットのソロです。全国大会,銀賞だった悔しさはかなりありましたが,7年ぶりに行けた時の感動は今も忘れられません。

(106,105,104期)

 

泣かしのY-コーチ
グラウンドでやっているのと何も変わらへん。いつも通り。
しぃーしぃ-。返事せーへんでいいから。
いつも通りやること!顔だけやってて。なぁ。いつもその顔すること!怒られた時の顔ちゃうで,褒められた時の顔なぁ。めったにないけどなぁ。その顔,その顔。その顔いつもしていること。お客さんは橘のその顔を待ってるぅ。とにかく,めいっぱい楽しめ!一番いい笑顔で,今まで生きてきたなかで一番いい笑顔で。ええかぁ,このためにほんま涙流してきたんやから。このために汗流してきたんやから。このために痩せたんやから。でもないかぁ。ようさん食べてるもんな。冷静に!あがってもうたら,なにもかもなくなってしまう。ただ,気持ちは切るな!戦え!お前らの世界を見してくれ。お前らの顔を楽しみにしている。俺も楽しみにしている。ひとりのファンやから。がんばってな(生徒達から「はい」という返事)。
(握手しながら)頑張れよ,その顔,その顔。
泣くなぁ!泣くな,おい。

 

演奏曲は

アニー・ローリー(スコットランド民謡,磯崎敦博 編曲)
ザ・バンド・ワゴン(P.スパーク 作曲)

シング・シング・シング(L.プリマ作曲,岩井直溥 編曲)

 

 この年から2年前の2005年に発明したダンシングSing×3を全国大会で初めてお披露目したことになるが。前年までとは異なる。前年までは「フェスティバルの部」でやっていたが,規則が改訂されてこの年から統一された「規定の部」で演技した。2006年以前の動画がないのでわからないが,ざっくり言って,前半の場内一周の行進が加わっただけであろう。後半のダンシングは,彼ら自身はある意味慣れていたのかもしれない。前半で減点されることもないだろう。ダンシングも他がやらないけど,斬新性に免じて大きくは減点されないだろう。しかし,滑らかなフォーメーションチェンジを見せるような場面がない。細かい繋ぎはランダムに駆け足して帳尻合わせのようなことをしている。銀賞がとれただけでも十分だと思う。

 演技前にYコーチが気合を入れている時とか,演技後の引き上げのシーンでT先生に存在感を感じないな。YコーチもT先生がいる前で,堂々としているな。何の遠慮も感じないな。

 

 

(2)2008年 第21回全日本マーチングコンテスト〔Swing with us!〕

DM S. Akita

 今年は今までのsingに改良を加えて,新しいKTに挑みました。目指すは全国大会金賞。新しい振り付け⋅音を自分たちのものにするのに,何度も練習を繰り返しました。関西大会前に怪我で出場できない部員がでたこともあり,全国大会は必ず全員で出場したいと気持ちが強まりました。念願の全国大会へ全員での出場が決まり,当日は緊張や不安よりも「私達のパフォーマンスを早く見てほしい!」そんな気持ちでいっぱいでした。部員の気持ちは最後の「HEY!」が全てを物語っていると思います。テーマは「Swing with us!」お楽しみください!

(107, 106,105期)

 

Yコーチのお言葉:

よーし,こっち来い。
やっとしんどい思いして,本番が来たから,もういつものやつ,「やりたい,やりたい」言うて,その顔で入ってきてよ。ぼくらにしかでけへん,私らにしかでけへんことを精一杯,力一杯やって楽しんでほしいねん。それが一番。最後の本番,これが3年生も,2年生も,1年生も力一杯,自分の持てる力を冷静に発揮してこい。お客さんはみんなお前らを待っていると思え。多分待っている。(生徒達笑い)多分待っている。みんなで作ったエンターテイメントをみんなでやってくれ。ええ顔で。ええなぁ?(生徒達「はい」)今日が頂点なぁ。これ以上いいもんがでけへんというところまで燃え上がれ。なぁ,頑張ってやろう。いつも通り。(生徒達「はい」)

 

演奏曲は

アヴェ・ヴェルム・コルプス(W.A.モーツァルト 作曲,大久保圭子編曲)
ザ・バンド・ワゴン(P.スパーク 作曲)
シング・シング・シング(L.プリマ作曲,岩井直溥 編曲)

スウィング・スウィング・スウィング(J. ウイリアムス 作曲,J. Bocook 編曲)

 

 昨年度もよく似たことはやっていたが,この年から本格的に「ぐるぐる」をやり始めた。こういう早いスピードで前へ後ろへと二つの輪がぐるぐる回るような仕掛けはYコーチのアイデアであると思う。他校のオーソドックスな滑らかな曲線がゆっくりと綺麗に変化して行くようなフォーメーションチェンジとは全く異質な感じがする。いずれにしろ,このぐるぐるとダンスでKTのスタイルが確立仕掛けている年かな。金賞がとれたのだから認められたということであろう。問題はそれを何年も持続できるかということだ。

 

 

(3)2009年 第22回全日本マーチングコンテスト〔Let's dance all〕

DM Mai Taniguchi

 この年は,3年連続で全国大会に出場することができた年でした。特にステップを合わせることに重点を置き,一つ一つの角度やタイミングにこだわりました。
 また,ショーの中盤にある,回りながら進む動きは,今までののKTにはなかったものだったので,新しい一面を「魅せる」ことが出来たと思います。これまでと違った新たなKTのショーを楽しんで見て頂きたいです!
 

(108, 107, 106期)

Yコーチ:一発楽しいのんを見せてくれ。真剣にやっていないとは言わへん。めちゃくちゃ楽しくやっているはず。で,やってて楽しいはず。楽しいショーを俺に見してくれ。(生徒たち「はい」)たぶん,たぶん,たくさんファンはおると思うけど,その中で一番のファンは俺やと思う。これだけしんどい思いしてきたんやから,夏からずっとしんどい思いしてきたんやから,1年生も怒られながら辛抱してやってきたんやから,始まったら,もうお前らのショーや。お前らしかでけへんもんがあるはず。一番おまえらが楽しめ。(生徒たち「はい」)それが一番大切なことや。緊張するな。

 

演奏曲は

カンタベリー・コラール(J.v.デル=ロースト 作曲)

ザ・バンド・ワゴン(P.スパーク 作曲)
シング・シング・シング(L.プリマ作曲,岩井直溥 編曲)

スウィング・スウィング・スウィング(J. ウイリアムス 作曲,J. Bocook 編曲)

 

 ダンスと「ぐるぐる」が定番になってきたみたい。つなぎはほぼ全てで相変わらずバラバラに走って繋いでいる。たぶん,ダンスの振り付けが彼らの頭の中では一番重要なうウエイトを占めているのだろう。審査員は彼らのやっていることよりも,やっていないことを見ていると思う。しかし,これで金賞だから不思議だ。全国のレヴェルは高くなかったのだろう。

 ぐるぐるという高速回転が評価されたのかもしれない。まるで曲芸だ。走りながら吹いているのである。ダンスしながら吹くよりきつそうである。パーカッションは外側に備え付けだからこういう曲芸に参加しなくても良い。ひょっとして,のちにピット楽器禁止になるが,それとこの技との関連性が深いような気がした。こういう軽業師集団が他校でもあったのか知りたい。

 

 

 

(4)2010年 第25回国民文化祭・おかやま2010,マーチング⋅バトントワーリングの祭典〔Catch Your Heart!〕

DM Ayaka Ohara 

 この年は,前年までの全日本マーチングコンテスト3年連続出場によって,例年とは異なる一年でした。関西だけでなく全国各地へ遠征し,たくさんの方に私達のエンターテイメントを見ていただくことができました。応援してくださる皆様へ感謝の気持ちを込めて演奏⋅演技しました。この岡山の国民文化祭では,アメリカの有名なバンドの方から大きな拍手や歓声,お褒めの言葉をいただき良い経験になりました。
 

 KTが広く知られるようになるのは2018のRP出場からである。この時期は,2012のRPにもまだ行っていない時期で,彼女のいう「全国各地へ」というのは現在の彼らの行動と比べるとささやかなものである。その一つが国民文化祭である。いまなら,ファンが殺到して数多くの動画が残されるであろうが,そういうことは全く起きていない。もっとも,ほんの十数年前であるが,まだカメラ撮影が今ほどお手軽なものでなかった。そういうわけで,ここでは手に入る第23回全日本マーチングコンテストの京都府予選のビデオを載せておく。この年は三出休みの年だったので,「特別演奏」で審査対象外であった。(気合が入らなかっただろうと思ってしまうけどな。)

 「アメリカの有名なバンド」というのはDCIのCavaliersのことで,パーカッション部隊だけ来日している。DCIで修行した現マーチングコーチのSはこの2年後にKTに入学しているので,このときの来日とは関係がないと思う。

 

(109, 108, 107期)

Yコーチの送り出しシーンはなかった。

 

スーパーマリオブラザーズ(近藤浩志 作曲,星出尚志 編曲)
いつか王子様が(F. Churchill作曲,岩井直溥 編曲)
シング・シング・シング(L.プリマ作曲,岩井直溥 編曲)
 
 2023年の彼らの演奏演技と比べると,ずいぶんいい加減だ。元気があって飛び跳ねているけど,マーチングと言えるのは前半の規定の行進だけだ。あとはダンス部だ。最近のファンは昔の方がダンスとかに創造性があってよかった。いまは面白くないとかいう人が多い。一面正しいけど,これはマーチングの大会だということを言いたい。2010年当時は他校のオーソドックスなマーチングからみれば異端すぎる。後半部分だけだけどね,ここで言いたいのは。とにかく,こんなのを大会にぶつけてくる度胸が凄すぎる。いくらファンウケがいいからと言ってもね。なお,ぐるぐるはなくなって,よりダンスのウエイトが高まっている。後の有名人Mさんは終始固定されていたドラムでの演奏であった。
 

 

 

(5)2011年 第24回全日本マーチングコンテスト〔Share Best Smile〕

DM H Asada

 この年は,全国大会3年連続出場明けの年で,全国大会経験者が少ない,部員数が少ないなど多くの問題がありましたが,1年生の時に立った全国の舞台にもう一度立ちたい!KTの伝統を途絶えさせない!という強い思いを持って練習に励みました。そして,たくさんの困難を乗り越え周りの方のサポートのおかげで,やっと目指していた舞台に立つことが出来ました。がむしゃらに追っかけてきた110期生,1年間で大きく成長し頼もしい109期生,最後まで諦めずに一緒に戦った108期生。最高に楽しんでいる私達の演奏演技をお楽しみください!〔Share Best Smile〕
 

(110, 109, 108期)

やるだけのことはやってきたから。でぇ,しんどいめぇしてきたんやんか。この春からずっーと。今までしんどいめぇしてきた分いっぱい拍手もらえるから,先輩信じて,後輩信じて,友達信じて,お客さん信じて,絶対いいもんできるから。ブスいらんで,ブスいらんで。ブスは一人もいらんからな。(生徒たち「はいい」)ええ顔で入ってよ。(生徒たち「はい」)頼むで!解散。
鼻出る,鼻出る。
何怒ってるんや,お前。すごいショットになってるで。
(最初から,全員涙,涙,緊張して,感極まって,高揚感の塊状態。それをさらに高めるYコーチ。そばで,いつもぼーっと聞いている顧問。コーチが全てを仕切っている。毎度おなじみのシーン。)
 

その胸に抱け青雲の志(内藤淳一 作曲)
ザ・バンド・ワゴン(P. スパーク作曲)
シング・シング・シング(L.プリマ作曲,岩井直溥 編曲)
チュニジアの夜(J.D.ガレスピー作曲,真島俊夫 編曲)
スウィング・スウィング・スウィング(J.ウィリアムズ作曲,J. ボコック編曲)

 

 三出休明けで時間的に余裕があったと思うが,演技内容は2009年度とさほど変化していない。「ぐるぐる」にはまだこだわっていたようだ。抜本的に刷新する余裕がなかったのであろう。今初めて思うことではないが,CGの人数がこの時代は多い。「フェスティバルの部」の影響をまだ色濃く残しているのだろうか?2006年以前のマーチングコンテスト関連動画を見たことがない。観てみたい。

 この年はテレビ取材があり2012年1月にはRPに初参加で,KTにとってかなり重要な年である。もちろん,これらによりほらっちゃDMが世間に知れ渡った。

 当時のKTのような部員数の少ない高校にとっては三出休み制度は過酷だっただろうな。生徒達の頑張りに涙が出る。

 

 

 

(6)2012年 第40回関西マーチングコンテスト〔We are Entertainer〕

DM A Yamaguchi

 この年は,密着取材の放送をみて影響を受けた1年生がたくさん入部してくれた年でした。2・3年生がそれぞれ20名程に対し,1年生が70名近くいましたが,その分2⋅3年生の結束力やフォローは心強く,1年生もやる気のある子がたくさん集まったため,部員に助けられながら毎日奮闘しました。
 また,ピット楽器が禁止になった1年目でもあり,人数制限の規定がない最後の年だったため,おそらくここ数年で1番多い人数で出場した年だと思います。見どころがたくさんある年です♪

 

(111, 110, 109期)

Yコーチの送り出しシーンなし。
 
祈り、そして誇りを胸に(内藤淳一 作曲)
ザ・バンドワゴン(P. スパーク作曲)
シング・シング・シング(L.プリマ作曲,岩井直溥 編曲)

 

 細かいところは違いはあるが,構成は昨年までと大きくは変わらない。人数が多いため,いつも走って繋ぐ部分がよりばらばら感が目立っていた。また,1年生が多いためか少し音にもばらつきを少し感じた。ダンスの部分は個々人には激しい動きを感じるが全体のフォメーションは単純な形で固定された静の状態になっている。したがって,ステージショーだったら楽しいだろうが,マーチングとしてみたら,変化が乏しく面白味が欠けるのではと,これをみて初めて感じた。やっている本人たちは息切れするくらいの激しさを感じているだろうが,わたしは,ゆっくりしたフォメーションの連続的なきれいな変化を求めたい。

 

 

 

(7)2013年 第41回関西マーチングコンテスト〔Hit like sunshine〕

DM N Saito

 私たちは「Hit like sunshine」をテーマに,みんなを照らす太陽のように,見ているお客さんを自然と明るく元気づけられるそんな演奏⋅演技を目指し,一生懸命練習に励みました!3年生21人で100人の後輩という環境の中,たくさんの苦労もありましたが,まず自分たちが”楽しむ”ということを忘れず,練習を重ね,努力を重ね,全員で作り上げたマーチングショーです。

 

(112, 111, 110期)

Yコーチの送り出しシーンなし。
 
カンタベリー・コラール(J. ヴァン. デル. ロースト作曲)
ザ・バンドワゴン(P. スパーク作曲)
シング・シング・シング(L.プリマ作曲,岩井直溥 編曲)
スウィング・スウィング・スウィング(J.ウィリアムズ作曲,J. ボコック編曲)
It don’t mean a thing(D. エリントン作曲,J. フェドチョック編曲)
 
 マンネリ化している構成であるがそれなりに進化していた。ピット楽器が禁止され,人数制限が設けられたことにより,非常にスッキリした。マーチングする隊列だけでシンプルに美を追求する方向性が明確になった。良いことだと思う。ダンスのステップはひとりひとりの位置固定で行っていたが,今回は個々がステップを踏みながら,全体像を動かすという新しい試みが見られた。新鮮に感じた。しかし,なぜかまだぐるぐるに執着していた。
 彼らだけ見ていると確実に進化していた。しかし,全国にはいけなかった。他校の演奏演技が勝っていたということだろう。どこの学校も進化している。ここも厳しい世界だな。

 

 

 

(8)2014年 第27回全日本マーチングコンテスト〔Dream Come True〕

DM N Fujiwara

 この年は3学年全員が全国大会未経験者の年でした。動きだけのバンドと呼ばれたくなくて,一人一人が自分自身の音と向き合い,仲間と向き合い,時には喧嘩して,時には泣いて,前に前に進んできました。
 どんなに辛くても諦めなかった3年生と懸命についてきてくれた1,2年生は,自分たちの夢を自分たちの力で掴み取りました。”夢は叶う”ということを証明してくれた112人のオレンジの悪魔が作り出すDreams come trueをお楽しみください。

 

(113, 112, 111期)

 
Yコーチのお言葉:
いろいろあったとおもうねん。ほんまにこの1年間,よく努力したと思う。先生も君らと本気で頑張ったつもり。だから先生も中に入れてもらって見してもらおうと思ってねんけど。とにかく先生の想いは君らが楽しんでくれること,いつも笑顔で。で,君らは周りにはオレンジの悪魔と言われているわけやん,当たり前のように,いつも通りに先輩たちはやってきた。君らもできるはず。同じ所の空気を吸って。おんなじように育って,同じ先生と触れ合って,おんなじようにやってきたんだから。自信を持って。間違ったらどうしようと思わなくていい。ずれたら,ずれたで放っておけ。もう訂正効かへんから。すんませんて言うて,けつ掻くわけにもいかんし,頭掻くわけにもいかんし。忘れて,ただ,君らが精一杯のことができることを先生は祈っています。今までずーっと思い続けてきたんやな,3年生。ここへきたかったんやな。俺は泣けてくるわ。でも,俺もここへきたかった。君らと一緒に来たかった。で,やっと来れたわけやから精一杯ほんとに心から楽しんで。僕らにしかでけへんこと,君らにしかでけへんこと,しっかりやりましょう。(はい)。それだけの準備はしてきました。合わへん列がある,合わへん音がある,まだまだ積み残しはいっぱいあるけど今できることは精一杯絶対やってきた。背中を見せようと思ってやってくれた。嫌われる先輩もいっぱいおったと思う。嫌われようと思って嫌われたんじゃない。背中を見せて頑張る姿をみせようとおもって頑張ってきてくれたはず。1年生2年生も頑張ってきてくれたはず。泣きながらやってくれたはず。でも今日まで。君らは仲間といっしょに過ごすことを楽しんでほしい。たくさんの人間でたくさんの同じ夢を見ることは楽しいんや。いい夢を見て,わかった?(はい)6分間絶対忘れへんようなショーを。緊張しないで。緊張して真っ白になったら飛ぶからな。気がついたら出口でしたみたいな,私の靴はどこへ?みたいな。ようある話やけどな。そうならへんようにしっかり意識を持って頑張ってください。
 

キャッツ テールズ(P. グラハム作曲)

メリーゴーランド(P. スパーク作曲)
テイク ファイブ(P. デズモンド作曲,櫛田胅之扶 編曲)
スウィング スウィング スウィング(J.ウィリアムズ作曲,J. ボコック編曲)
シング シング シング(L.プリマ作曲,岩井直溥 編曲)

 

 異端は異端なりに磨き続けてきて,ここにきてかなりの水準に達したと感じる演技だった。最初のトランペットソロ(そばに現Sコーチも一緒にいたが)が最高によかった。ファンを楽しませると言う基準で言うと金賞。しかし,これが銀賞だったのは不思議だ。たぶん,彼らが行わなかった点が審査されているのだろう。周りとの比較だし。ダンスはうまいし楽しい。彼らは最大限に体を動かしているが,そのダンスの間は隊形(フォーメーション)は静止しているのだ。動いているが止まっているのだ。たぶん,ダンスしながらは重心移動は難しいだろう。なにしろ,楽器も吹いているから。今のファンが昔は良かったと言う気持ちはよくわかる。

 このくらいの時代になると私も動画でよく見かける顔が多いので,身内の演技を見ている感じがしてきた。

 会場へ入る前のYコーチのスピーチは特に今回力が入っていた。生徒たちも気持ちが高まっているのがヒシヒシと伝わってくる。T顧問がそばにいても,Yコーチは自信満々に最高責任者としての堂々の振る舞いだし,生徒も同じように自信に裏打ちされた強い心持ちを表している。そこにまるで顧問の存在がないかのように。彼には,放任主義と言う言葉で評価されることが多いが。それは正確な表現ではないと思った。このビデオで視聴者がたぶん感じ取るであろう姿が真の姿だと思った。

 

 

(9)2015年 第28回全日本マーチングコンテスト〔FIND YOUR ADVENTURE〕

DM Y Okamoto

 演技のテーマとは別に掲げた合言葉,「Hearts Are One」私たちの心がいつもひとつでありおますように。どんなときもみんなの心はきっと繋がっていると信じ,自分たちらしさ,KTらしさを追い求めました。全国大会直前,みんなの音がひとつになったとき,心はひとつだと本当に感じられた気がしました。これまでの先輩方に導いていただき,そしてみんなを信じる気持ちで掴み取った全国大会金賞。あの瞬間を一生忘れません。

 

(114, 113, 112期)

 
生徒の先制攻撃:泣いたら吹けへんので泣かさんといてください。
Yコーチ:もう時間ないさかい,あんまり話せえへん。
もう一歩入ったら君らの世界や,昨日のリハーサルとは違う。十分楽しんでください。(はい)あの暑い時から死ぬほどやったんやから。3年生。シングなんか何千回やったんやから。
この3日間くらい,めちゃくちゃ,うもうなってきてるやんか。自信持って。うもうなったら顔が変わるよな。それを持ってちゃんと入ってほしい。わかった。(はい)ちょっと前も行ったんやけど,一人で見る夢より,みんなで見た夢の方が楽しいやんな。まさにこれ。今からドアが開くと,君らの夢の舞台。だからここしっかり楽しむ。みんなで見る夢は,ほんまに面白い。みんなでやりきって楽しいのではなく,やっている途中が楽しいんや。それをしっかり感じなさい。終わってから感傷に浸って楽しかったじゃなくて,やってる最中でどんどんおもしろなれ。君らにはそれを覚えてほしい。わかった。(はい)頑張って。前から見ています。頑張ってな
 
HIGHLIGHTS FROM PLANES(M. マンシーナ作曲,M. ブラウン編曲)
メリーゴーランド(P. スパーク作曲)
Here's That Rainy Day(J. バーグ& J. ヴァン・ヒューゼン作曲)
シング・シング・シング(L.プリマ作曲,岩井直溥 編曲)
Swing Swing Swing(J.ウィリアムズ作曲,J. ボコック編曲)
 
 根本的な問題点を除けば,彼らの目指してきた演技が,この年もさらに進化を遂げ,金賞に値するできであったと思う。マーチングとしてでなくエンターテイメントしてかなり優れたできであったと思う。
 根本的な問題とはマーチングの真髄と思う滑らかフォーメーションチェンジをプログラムに入れていないことである。彼らは意図的にそれを目指していなかったと考えられる。意地でも自分達のやり方を貫き通すと言う意志が読み取れる。
 この年は,2018のRPでその活躍が目立つことになるChippiが大会メンバーから落ちていた。層が厚いのか,先輩を立てる伝統なのか知らない。ここでもいうけど,コンテスト主催者側の意図には沿っていないがファンの心はきちんと掴んでいる内容だったと思う。この9年間のビデオで最高の出来。
 
 
 

●まとめ

 このDVDを復習して大変勉強になった。この学校のマーチングの歴史を勉強するときの必修教材だと思った。
 
1. 2005年に発明したダンシングSing×3を提げて全国大会初登場が2007年。そこから,そのスタイルに磨きをかけて行って,2015年に一応の完成をみた。しかし,2007年の出場からして既に,全国大会への出場の可否は他強豪校の動向に完全に支配され続けた。エンターテイメントでの成功に反し,大会には非常に弱かった。それでも出場すれば金賞も取れる年もあった。この9年は不思議な時代であった。
 
2. 2015年を境に2016年から第二次氷河期に入っていく。理由は弱かったからで,他校が正統派のマーチングを身につけていたが,KTは自分達の編み出した異端のマーチングを頑なに変えなかった結果である。今思えば,主催者側がダンシング禁止令でも出してくれていたら,KTの正統派への移行は早まっていたと思う。穿った見方をすれば,大会の主催者はKTのダンシングを邪道として禁止したかったが,KTの人気も考えると,それができなかったかもしれない。おまけに2015年に金賞まで与えてしまっている。それでどうしたか?主催者は関西の代表枠を一つ減らす方策に出た。これが功を奏して,KTは全く全国に進めなくなってしまった。このやり方で,主催者はKTから恨みを直接買うことはなかったと想像する。KTは第二次氷河期中の2020年になってようやく気付かされた。正統派のマーチングでなきゃ全国に行けないことを。マーチングコンテストから撤退すると言う手はあったがそこまでやる勇気はなかったようである。2018年から新顧問,2020年から新マーチングコーチに代わった。これも,生徒たちからしても自ら変身できる良いきっかけになっただろう。ダンシングを極端に減らし,普通の滑らかな曲線を形造り,それを連続的に動かしていくという技術を習得した。これで普通の高校になれた。2021年から3年連続で金賞と安定期に入ったといえる。それで,一応の区切りがついたと言うことで,主催者側は関西からの代表枠を2023に4校,2024に5校へと緩和させた。主催者側はダンシングは邪道ですよという考えを徹底させることに成功した。
 
3. KTのファンから見ると,上のビデオで言えば2015のKomareたちの演技は良かったと懐旧の念が芽生えてくるのである。尤もだと思う。しかし,KTはこれから年月をかけて今のスタイルにも新しい魅力を創造していかなければならない。たとえそれが以前のダンシングのような革命的なものでないにしても。
 
4. Yコーチが生徒たちに接するときのいいところは,彼も生徒たちも相手の目を見て話をしたり聞いたりしている。しかも生き生きとした眼差しで。また彼は生徒たちとの会話ができる人だとよくわかる。生徒たちとの信頼関係はばっちり築けている。教師の鏡だ。DVDの中のこのようなシーンを見ているだけで人となりとか部内の人間模様が非常によくわかった。ここで言葉にしておく必要もないと思う。

 

 

●追記(2024/04/13)

 昔も今もあまりテレビは見ない。特に今はテレビも携帯も車も持っていないこともありみない。しかし,パソコンでテレビ以上にYouTube見るからな。今日はNHKの「新プロジェクトX」をみた。よくできた番組だと思う。しかし,もう一つ感動がない。人間は誰でも人生かけて仕事しているのだ。各人が種類は違うが同じようなレヴェルの体験をしている。場合によっては見ている人間の方が複雑でもっと多くのスリルを味わうような体験談をいくらでも持っている。見ない方が自分のためだなとと思って,途中でスイッチを切った。

 朝のテレビドラマは,むかし「おはなはん」を見た記憶しかない。無理して4月からの「虎に翼」を1週間見た。芝居がうまいと思った。ところが今週月曜日のみて,急にアホらしくなってやめた。学校ってあんなんと違うぞと。経験もない作家の描く世界は薄っぺらい。こちらはもっと現実の面白い世界に生きている。わざわざ,そんなテレビの中に入っていく必要もない。というか,耐えられない。

 そういう自分も,なんでこんな分析やっているんだ。俺って馬鹿すぎるな。