おはようございます。
昨日は、教養講座を主催させていただきました。
全く新しく聞くお名前の先生のご講演でしたが、14名の方に集まっていただき感謝しております。
上村先生は、無名ながら学術的にはかなり深いところで活動されている先生です。一般書を書かれていないので、知らない人は知らないと思いますが、非常に人格者でありますしフランクにお話ができる方です。
では、参りましょう。
水戸学は、義公水戸光圀こより創建された学問です。
水戸学というと直ぐに大日本史が思う浮かびますが、大日本史は朱舜水の教えにより、紀伝体の作法に寄りかかれた漢文の書物です。
つまり漢文で当時の活版印刷で刷られたものですが、300冊以上有り、残念ながら現代語訳で翻訳はされていないでそうです。
そして、水戸学はこの大日本史がクライマックスではありません。大日本史は明治に入って完成されましたが、あくまで儒学をベースに完成された歴史でしか有りません。それが水戸学の本質では無いのです。
水戸学は開かれたときから和文・和歌などの国文学、天文・暦学・算数・地理・神道・古文書・考古学・兵学・書誌など多くの著書編纂物などを編み、研究する日本最高の研究機関でもありました。
後期になり徳川斉昭により弘道館が開設されて、学問は大きく発展するとともに多くの人材を輩出するようになります。
その中でも会沢正志斎と藤田東湖に関しては、その後の日本を大きく変えるほどの人材になったのでした。その辺の詳しい話は時間的に間に合わなかったようですけれども。
そして、現在のみと学のポジションのお話がありました。水戸学を歴史家がテーマとするのは実はかなり困難で有り、歴史学会では異端とされている経緯などのお話もありましたが、要するに戦前に焚書坑儒された書籍がかなりあり、その中に水戸学に関する本も含まれているということです。
民族の誇りの源泉となるものの多くは米軍により消し去られたと言うことです。当然消されたので我々は知らないわけですし、知らなければ知りたいとも思わなくなってしまいます。
文化的にも、学問的にも完全に断絶してしまっておりますので、学ぼうとしても結構苦しいのだそうです。なお、大日本史に関してはもちろん写しが現存しており300冊あまりの著作が弘道館などに行くと出てきます。
その後、水戸学は維新の原動力ともなり、最終的に大政奉還に至る道筋が付けられるわけですが、そもそも水戸藩は徳川家の中に有り、徳川が天皇と争う事態になれば、天皇に付けと内密な支持を家康から直接受けていたということも有り、徳川慶喜が鳥羽伏見の戦いで敗走したのは、ある意味当然の帰結なのかもしれません。
最後の将軍が初めての水戸藩出身(実際は一橋だが)の将軍というのも、非常に面白い縁を感じるものです。
その他にも、神道の話、特に日本書紀と古事記のはじめの神が違う事に関する解説や、キリスト教の話なども出てきて、上村先生の交友関係の広さを垣間見せられた気がいたしました。
ちなみに、上村先生が聞いた話によれば、古事記で天之御中主神を含む3神が登場するのは、ネストリウス派キリスト教の影響を大きく受けているのではないかというものです。
造化三神がキリスト教の三位一体に通じるものだという解釈があるというものに、上村先生がショックを受けた話など、とても興味深いものでした。
まあ、学術的な根拠を持って話をされているわけではありませんので、先生の学生というわけではありませんがね。
先生の理解では、本来のキリスト教(つまり、オリジナルに近いキリスト教)は、西へ進んだというよりも、東に進んできた。つまり、ネストリウス派キリスト教というのも現在のカトリックよりもさらにオリジナルに近いのでは無いか?というお考えです。
キリスト教の教えの一つに赦しがあります。この赦しがある以上、現在の西欧諸国が行っているような戦争や殺し合いというのは、本来の教えに反することです。
どうして、そのようなことが起こるのか?という話も含めて次回のテーマとしていただくことになりました。
また、8月にでもご講演をいただくことになったので、もし今回参加できなかった方は、ご参加いただければと思います。