25年以上も心が通じ合っていた唯一無二の親友の訃報が届いたのはアフリカへ出発する直前だった。
ずっーと体調が悪くていつどうなってもと覚悟はしていた。だけどやっぱり早すぎるよ...
最後にあいつと会ったのは去年の11月だった。
その時はまさか今生の別れになるなんて微塵も思わなかった。今もまだ心が追いつかない。
頭では理解してるつもりなんだけどきちんとサヨナラができないでいる。
最近なんだか大切な人との別れが多い。みんな早すぎるよ...
全ての予定をキャンセルして帰郷し、お通夜に出席した。
そのとき初めてあいつのお母さんとお兄さんにお会いした。
「はじめまして。青木といいます」って挨拶したら2人とも「あなたが...」って。
あいつが生きてたころ、いつも俺のことを自慢の友人なんだって話してたと伺った。
涙が止まらなかった。
いつも俺やアフリカのことを気にしてくれていたし楽しみにもしていたから、早く形にして良い報告をしたかった。あいつの喜ぶ顔が見たかったんだ。
ウチらが初めて出会ったのは俺がまだ19歳のとき。あいつは俺の新しいバイト先の社員であり先輩と後輩として出会った。
最初の出会いは最悪で、この人とは絶対に仲良くなれないと思ってた。
当時の俺は無茶苦茶で全ての大人を嫌っていたし舐めくさっていた。仕事だというのに真面目に働かないし、お客さんともケンカするし、お店からしたら厄介者以外の何者でもなかった。
何かのときにあいつが俺に言った。
「試すなよ」
俺は何のことかさっぱりわかんなかった。
どうやら自分でも気づかないうちに癖になってた。
当時の俺は大人が信用できず、自分にとって敵か味方を判断するためにいつも誰かを試してた。
それがこんな俺が生きていくための唯一の手段だった。
「俺はお前を信じてる。だからお前はもう俺を試さなくてもいい」
あいつはそんなふうに言ってくれたけど俺は全く信用なんてしてなかった。
「そんなこと言ってもどうせあんたもいつか俺のことを見捨てるんだろう。他の大人たちと同じように..」
だけどあいつは違った。
本当に何があっても俺の味方でいてくれた。
周りを敵に回してでも。
どうしてなのか今でもわからない。
そうしていくうちに次第に自分のなかで何かが変わっていくのがわかった。
なんて言うか、すごく強くなれた。
何があっても安心というか何も怖くなくなった。
たとえ世界中を敵に回してもこの人だけは絶対に俺の味方でいてくれる。味方だよなんて口先だけじゃなくて本当に自らの身を挺して目の前にそびえる最強の盾になってくれるって信じられた。
そしたらすげー最強になれたんだ。
そしてとんでもなく自由にもなれた。
そうしてるうちにいつの間にか俺は自分のことを心から信じられるようになってた。
そのときわかったんだ。
きっと俺は怖かったんだ、この世の全てが。
今の俺があるのは間違いなくあいつのおかげ。
俺もこんな男になりたいって心の底から思えたのは、悔しいけど今まであいつ以外にいない。
もっともっと生きたかったよな。
俺はもっと一緒にいたかったよ。
これから俺は1人だよ。
これから俺はどうしたらいい?
もうすぐアフリカだというのに心にぽっかりと大きな穴が開いていた。