父と母と一羽の蝶が見送った 遠い秋の一頁 おかっぱ頭の幼い僕が 縁側で手を振っている 秋桜咲き乱れる小さな庭で洗濯物を干しながら 母が笑顔で応えている そんな二人を茶の間から背中を丸めて 父がカメラに収めている 秋桜のパレットを飛び交っていた紋白蝶が 母の割烹着の裾に羽を休めた時 秋の風が子鹿のように 三人の間を通り過ぎていった 父と母と一羽の蝶が見送った 遠い秋の一頁 振り向けば秋桜が風に揺れ 大きくなった僕に手を振っていた