父と母と一羽の蝶が見送った 遠い秋の一頁 | 消しゴム君 寫画集

消しゴム君 寫画集

寫眞と物語と言葉で綴った寫画集

 
 
 
おかっぱ頭の幼い僕が
縁側で手を振っている
 
秋桜咲き乱れる小さな庭で洗濯物を干しながら
母が笑顔で応えている
 
そんな二人を茶の間から背中を丸めて
父がカメラに収めている
 
秋桜のパレットを飛び交っていた紋白蝶が
母の割烹着の裾に羽を休めた時
秋の風が子鹿のように
三人の間を通り過ぎていった
 
父と母と一羽の蝶が見送った
遠い秋の一頁
 
振り向けば秋桜が風に揺れ
大きくなった僕に手を振っていた