民俗郷土芸能の元来あるべき姿や魅力というのは、その土地の五穀豊穣や平安成就を祈願して舞い奏でる土着のものであり、信仰の対象でなければならない。
また、それぞれの郷土芸能は時代の流れに合わせて各地方に伝播され、時に新しきものを融合し、その地域独自の形となることも多い。
金津流獅子躍(鹿踊り)もそのような古来よりの荒波に揉まれながら、200年程前に現在の姿へと完成されたと聞く。
先代たちから相伝されてきた美しく完成された姿は、観るものすべてを魅了する。
そして、門徒であり舞い手である我々は多くの思いや念を背負って、頭(カシラ)に神を宿して一心不乱に勇敢に躍らなければいけない。
今回、日本と遠く離れたイギリスの地で、我々の躍りと初遭遇することになった数万人のヨーロッパ人からの反応を体験できたことは非常に貴重である。
中には獅子躍(鹿踊り)の存在を知っていて楽しみに観に来てくれた人々も多くいたが、やはり演者からして最も刺激的な反応を感じることが出来たのは、テムズ・フェスティバルのサンバや吹奏楽のカーニバル・パレードを目的に集まっていた数万人の観衆であろう。
蛍光色派手なカーニバル・チームの間に挟まれて、悠然と太鼓の調べを奏でる東北の至宝は彼らオーディエンスにとっては目を見張るものだったに違いない。
白のささらと朱の獅子頭(鹿頭)、藍の装束は夕暮れのロンドンにどのように写っただろうか。 もしかしたら『日本の東北には忍者や侍がまだいるのではないか。』とか『もののけ姫のシシガミさまが現れた。』とか色々驚いて夢膨らませてくれたロンドンっ子もいたかもしれない。
時を同じくして、フランスのパリでは同じく東北の郷土芸能、早池峰神楽が公演をしていたと伝え聞く。 ヨーロッパの人々の日本の郷土芸能に対する関心は非常に高いと感じる。
どのような環境でも精進して一心に舞を躍ることが我々門徒の使命であるが、今回のカーニバルのような異文化交流はとても楽しく刺激的なものであったし、客観的に観ても非常に面白かったと思う。

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