自信を持って推薦する最高傑作!〜マーラー/交響曲第6番「悲劇的」〜前編〜 | 松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

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「マーラーの交響曲の中で一番好きなのは何番?」という話題を、
作曲家仲間の間ですることがあります。貴方は何番でしょうか。

私は、実はこの第6番「悲劇的」なのです。
相当に重苦しい楽想が支配的な長大な作品ですが、
私はこの作品から、マーラーの輻輳した心情を、
ストレートに感じることができるような気がするのです。

全体の楽章構成は、前作=第5番のような
5楽章3部構成というような独創的なものではなく、
古典的なソナタ形式・スケルツォ・緩徐楽章・フィナーレ
という構成になっています。
中間楽章の並びについては
マーラー自身にも迷いがあったようで、
実際の演奏やリリースされている録音にも、
ソナタ形式・緩徐楽章・スケルツォ・フィナーレの順序を
採っているものも見受けられますが、長い間、私自身は、
前者の必然性が高いと確信していました。
しかし、後述する通り、近年になって、
ソナタ形式・緩徐楽章・スケルツォ・フィナーレの並びが相応しいと、
考えを改めました。

では、今回と次回の2回にわたって、各楽章を探訪していきます。

第1楽章は、ソナタ形式による冒頭楽章です。
意外にも、所謂私の言うところのマーラー流ソナタ形式を、
ここでは採用していません。
何と、第1番「巨人」に先例が有るとはいうものの、
提示部の最後に反復記号も持つ、
古典的なソナタ形式の外観を持っているのです。
しかも、一般的には推移主題と解釈されているテーマも
極めて独立性が高くまた展開部や終結部で
重要な素材として扱われているので、
私はむしろ、ブルックナーに近い三主題によるソナタ形式
として捉えた方が分かり易いと考えています。

さて、このように書くと、あまりマーラー的ではない楽章
と思われるかもしれませんが、
実はそのような事はないのです。
実にマーラーらしいの音がしますし、
マーラーならではの厭世観や、起伏の激しい心情の放出を、
ストレートに感じることができます。

この作品は、「悲劇的」というタイトルではありますが、
マーラーの「英雄の生涯」といった内容を持っています。
この第1楽章の第一主題は、
過酷な運命に立ち向かう自分自身
を暗示していると思われますし、
第三主題(一般的の言う第二主題)は、
妻=アルマを描いたと、自身の手紙に告白しています。

ベートーヴェン以来の、
提示部・展開部・再現部・終結部という
4部構成を持つ典型的なソナタ形式の外観を借りつつも、
マーラーが自己の心情を素直に投影した楽章だと
私は強く思うのです。

第2楽章は、過酷な運命に立ち向かう英雄(自分自身)の、
束の間の休息、平和や天国への憧れ、のように感じられる、
それは美しい緩徐楽章です。
古今東西の緩徐楽章の中でも、
特に傑出した美しさを湛えていると私は思っています。
構成はソナタ形式に準じて解きほぐすことができます。
じっくりと目を閉じてお聴きいただきたい楽章です。

以前、私は、この第6番の中間楽章の演奏順については、
第2楽章=スケルツォ、第3楽章=緩徐楽章が
しっくりくるように思っていました。
しかし、近年の音楽史研究による諸情報の解明を知り、
また先年の音楽大学フェスティバルオーケストラの
素晴らしい演奏(指揮:高関健)を聴いて、
今では、第2楽章=緩徐楽章、第3楽章=スケルツォ
が本来の姿であると確信するようになりました。

この第6番は、私が最も愛好する交響曲だけに、
文章が長くなってきてしましました。
後続の楽章については明日の記事に続けましょう。

ここで、私の愛聴盤をご紹介しておきましょう。
最近はもっぱらバーンスタイン盤CDを聴いていますが、
LP時代には、下の写真の盤をよく聴いていました。

この曲の私の一押しが、このショルティ盤です。
シカゴ交響楽団の黄金期の録音で、
とにかく勇壮な演奏です。
マーラー/交響曲第6番「悲劇的」
指揮=ゲオルグ・ショルティ
管弦楽=シカゴ交響楽団
LONDON / SCL 2387~8
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-マーラー6番・ショルティ盤

それから、懐かしの名盤と言うべきものが、
このバルビローリ盤です。
EMI-Angel / EAC-50055-56
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-マーラー6番・バルビローリ盤

演奏時間約80分の大曲ですが、
じっくり味わって聴く価値のある素晴らしい交響曲です。
心を静めて、音楽に向き合ってお聴きください。