昨日の記事で初演と台湾での再演の模様を紹介した、
今のところのフォノスフェール・シリーズ最新作、
<フォノスフェール第4番-b ~ギターと管弦楽の為に>は、
2013年にヨーロッパ初演を行なうことができました。

ギター独奏初演者でありこの作品の誕生から
深く関っていただいたマグヌス・アンデション氏が、
再演と録音を機会を求めて、氏の世界中の友人達の
ネットワークを駆使してリサーチをしていました。
その結果、氏の友人のウクライナのチェリスト夫妻が
ウクライナのドネツクだ始る新しい現代音楽祭に、
1夜の演奏会をコーディネイトしてくださいました。

何と、<Donbas Modern Music Art 2013>という
新たに創設される現代音楽祭のファイナル・コンサートに、
私を指揮者として招聘していただくことになりました。

コーディネイターのVadim Larchikov氏の提案で決定した
<フォノスフェール第4番-bを含む>拙作2曲と氏の自作に
北欧の作曲家の作品を組み合わせた全6曲という、
しかも協奏曲作品が5曲という破格にナードなプログラムに、
短期間の準備期間で取り組むことになりました。

松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-ファイナル演奏会チケット表
松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-ファイナル演奏会チケットウ裏

ウルトラ・ハードなプログラムにも関らず、
リハーサルは4時間のセッションが3回という、
極めて厳しい条件の中で、正に死力を尽くしての
荒技の連続によるリハーサルとなりました。

本番当日には、地元テレビ局からインタビューがあり、
燕尾服をベストまでは着込んだ格好で、
ロビーに出て取材に協力しました。
インタビュアーの女性は英語ができず、
私はウクライナ語もロシア語もできませんから、
チェロ独奏者のOlga Veselina女史に通訳をお願いしての、
インタビューとなりました。

同様のインタビューは、開演前や休憩時間に行われた模様で、
私の作品のギター独奏者=Magnus Anderssion氏も、
下の写真のようにインタビューを受けたそうです。

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-Anderssion氏インタビュー

そして遂に演奏会本番の開演時刻を迎えました。
こちらのご当地スタイルとして興味深かったことは、
クラシック音楽の演奏会であっても
1曲毎にアナウンスが入って、曲目や演奏者の紹介が
セレモニーのように行われるところでした。

この演奏会でも、音楽祭ダイレクター=
Yevgeni Petrychenko氏が挨拶と紹介を行なっていました。

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~


<Donbas Modern Music Art / Festival & Competition>
=[DMMA・2013] ファイナル・コンサート
[ Music of our time / Japan - Sweden/Finland - Ukraine ]

*2013年5月17日 / ウクライナ・ドネツク
フィルハーモニー協会 / セルゲイ・プロコフィエフ・ホール
*プログラム:
- Mirjam Tally / Winter Island (b) (c) *
- Thomas Liljeholm / Merging (b) (c) ***
- Masataka Matsuo / Phonosphere 4b (a) **
- Vadim Larchikov / Gethsemane *
- Masataka Matsuo / Eternal Livre (new version) (a) (c) **
- Kalevi Aho / 2-cellos Concerto (b) (c) *
(*** 世界初演 ** 欧州初演 *ウクライナ初演)
*演奏:
guit. / Magnus Anderssion (a)
cello / Vadim Larchikov (b)  Olga Veselina (c)
cond. / Masataka Matsuo 
orch. / Donetsk Academic Philharmonic Orchestra

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本番の演奏は、ひとことで言えば、爆発的大成功でした。
しかし、そこは現代音楽作品が6曲、
しかも協奏曲が5曲も並ぶ
ウルトラ・ハード・プログラム、正直に吐露すりならば、
細かいミスはかなりましました。
あるところでは、あるパートが1小節先行してしまったり、
あるところでは別のパートが1小節遅れてしまったり、
等々・・・
しかし、その都度、私はできる限りのアイ・コンタクトと、
大きめのタクトワークで指示と気を放射して、
大事故に繋がる齟齬を回避して、総体的に
作品像をダイナミックに彫琢していくことができました。
楽員諸氏にも、その状況と音楽全体の感興を
ひしひしと感じ取っていただけた様子で、
演奏が進行するにしたがって、難局を乗り切るにしたがって、
集中度を増していくことになりました。
その結果、1曲毎に大きな拍手喝采が聴衆から沸き起こり、
独奏者も楽員達も大いに満足気な表情を浮かべていました。


#3曲目=拙作<フォノスフェール第4番-b>の演奏直後#
    ギター独奏者はMagnus Anderssion氏
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-Phonosphere4-b演奏直後

#Vadim Larchikov氏とOlga Veselina女史のご夫妻と共に#
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-Vadim&Olgaの二人と共に


最後の気力を振り絞って望んだ最終演目、
フィンランドの作曲家=アホの珍しい作品、
<2チェロと管弦楽の為の協奏曲>の丁々発止のやり取りを
リハーサル時を遥かに上回る凝縮度と燃焼度を持った
演奏を実現して振り終えた瞬間の達成感は、私の
音楽家人生の中で忘れられない1ページになるものでした。

スタンディング・オべージョンになった客席の熱狂の中、
何度もステージに呼び戻される中で楽員の間を歩くとき、
楽員の多くから「Thank you maestoro !」と声を
かけていただき、とても嬉しい思いが込み上げてきました。

現代音楽の分野での国際交流&国際協働として、
多くの一般聴衆に支持される演奏を実現できたこと、
自分でもかなり納得のいく闊達な演奏を達成できたことに、
大いなる歓びと満足を感じることができました。

このような出会いと機会に感謝!

フィルハーモニー協会建物

しかし、この時は平和だったウクライナも、
現在はロシアとの対立で緊張状態にあるようで、
事態の推移が心配されます。
くれぐれも平和裏に解決するよう、願ってやみません。

そして、これからもPHONOSPHEREシリーズを
書き続けて行きたいと考えています。