独特のロマンの放射〜ブラームス<交響曲第3番> | 松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

創造芸術は人間の根源的な表現欲求と知的好奇心の発露の最も崇高な形。音楽家・作曲家を目指す貴方、自分の信じる道(未知)を進んでいきましょう。芸術・音楽・文化と共に人生と社会を豊かにしていきましょう。~頑張れ日本!〜がんばろうニッポン!

ブラームスの4曲の交響曲、それぞれに個性の豊かな
出来の良い4兄弟といった趣です。
5月27日の記事での4曲をまとめた音楽談義に続いて、
ポツポツと、各曲の魅力について私なりの寸評を披露しています。

今日の記事は<交響曲第3番へ長調>です。

もっとも演奏時間が短い小振りな佇まい・・・
全部の楽章が弱奏で閉じられるという珍しい構成・・・
半音階的な和声運用を駆使した新鮮なロマン性の表出と
ブラームス独特の叙情性や憂愁の深化・・・というように、
比較的地味なイメージがあるこの<第3番>ですが、
一方では終楽章の前進的・肯定的な音楽前進もあって、
かつての名指揮者=ハンス・リヒターは、
『ブラームスの「英雄」だ!』という言葉を残しています。

この三番目の交響曲は、1883年に温泉地として名高い
バーデン・バーデンに滞在して作曲され、
同年12月にハンス・リヒター指揮による
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって初演されました。
<第2番>も同じ演奏陣による初演でした。
どちらも大成功だったということです。

さて、楽章毎に音楽を追っていきましょう。

第1楽章は、ソナタ形式による冒頭楽章です。
冒頭の印象的な和音進行の中に潜む動機=Fa-La♭-Fa という音型が、
へ長調でありながらへ短調への接近も感じさせる響きの陰影を醸し出します。
実はこれが全曲を統一する主要動機になっていることは、
第2番冒頭のRe-Do#-Reと並んで有名な話ですね。
この響きの陰影を内包しつつも、
この冒頭楽章は基本的には力強く前進していきます。
提示部終止に反復記号は記載されています。
演奏時間が短い分、実際に反復を実施される演奏の頻度が、
高いのではないでしょうか。

第2楽章は、緩徐楽章です。
<第2番>の第2楽章に続いて、
“ソナタ形式を応用した緩徐楽章”とでもいうべき、
発展的な中間部を擁した充実した音楽になっています。

第3楽章は、本来ならば舞曲楽章
(メヌエットやスケルツォ)が置かれるところですが、
ブラームスは交響曲の第3楽章に、
典型的なスケルツォ(或いはメヌエット)を一貫して置きませんでした。
特にこの<第3番>の第3楽章は舞曲楽章の性格から遠いところにあるもので、
感傷的なテーマが印象的な三部形式による間奏曲となっています。
その旋律が有名で人気の高く、フランク・シナトラや
大貫妙子によって、歌詞を付されて歌唱されています。

第4楽章は、ブラームス流終楽章ソナタ形式の応用です。
<第2番>の動機を活用しているように聴こえる第1主題に始まります。
やがてこの作品の基本動機の核となる三度音程が絡みはじめ、
力強い音楽が前進していきます。
楽章の構成としては、<第1番>の終楽章で採用した
展開部と再現部を一体化した独自のソナタ形式の
序奏を無くして規模を小さくしたものと考えると、
かなりすっきり理解ができます。
力強い音楽のまま押しきらずに、
最後は回想や憧れを暗示するような穏やかな結尾となります。

弱奏で全曲を閉じる交響曲は、
古典派からロマン派中期まではほとんど例を見ません。
ところが、この作品の書かれた時期、つまり19世紀終盤から、
このブラームス<交響曲第3番>や
チャイコフスキー<交響曲第6番「悲愴」>の登場から、
次第に様相が変化していきます。
マーラー<交響曲第9番>を筆頭に、二十世紀に誕生した
交響曲には、弱奏で曲を閉じるものがとても多くなります。

さて、この<第3番>、ブラームスの交響曲の中では
最も演奏頻度の低いものかもしれませんが、
独特のロマンティシズ厶を讃えた音楽性を愛好している方も、
きっと多くいらっしゃることでしょう。
フランソワーズ・サガン原作の映画「ブラームスはお好き」にも流れてくる、
女性に人気の高い交響曲と言えるでしょうか。


仕事場のライブラリーにあるCDのご紹介です。
指揮=ギュンター・ヴァント
管弦楽=北ドイツ放送交響楽団
RCA / BVCC-37252
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-ブラームス第1・3番ヴァント盤