回想録<東京フィルハーモニー交響楽団ヨーロッパ演奏旅行1994>vol.4〜イギリスへ | 松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

創造芸術は人間の根源的な表現欲求と知的好奇心の発露の最も崇高な形。音楽家・作曲家を目指す貴方、自分の信じる道(未知)を進んでいきましょう。芸術・音楽・文化と共に人生と社会を豊かにしていきましょう。~頑張れ日本!〜がんばろうニッポン!

<東京フィルハーモニー交響楽団
           ヨーロッパ演奏旅行1994>
の回想録を続けています。
前半のドイツ公演シリーズを終えて、いよいよ後半、
拙作がプログラミングされた後半のイギリス公演シリーズに入っていきます。

実は、ドイツ公演シリーズの最後のエッセン公演後の
12日から、イギリス公演シリーズの最初のリーズ公演の
15まで、楽員には自由行動が許された様子でした。
大野氏ご夫妻と私と楽団事務局幹部は、
一旦ロンドンに寄って、マスコミの先行取材を受けました。
フィナンシャル・タイムズ等が、写真入りの記事を掲載した模様でした。

そして、私たちは陸路の鉄道で、リーズ入りをしたのでした。
(鉄道ファンの私としてはとても嬉しかったのですが!)
到着日のリーズは濃霧で、飛行機がなかなか着陸できず、
ここから合流する尺八の三橋貴風氏のフライトが
キャンセルになりそうだったという、
長旅の中でのエピソードもありました。

さて、再集結した東京フィルのメンバーに、
今度はヴァイオリンのラファエル・オレグ氏と、
尺八の三橋貴風氏が同行して、ツアーの後半、
イギリス公演全8コンサートのシリーズが始まりました。

リーズ公演プログラム表紙

◉10月15日:リーズ @ タウンホール
♪松尾祐孝/フォノスフェール第1番
     (尺八独奏=三橋貴風 付打ち=松尾祐孝)
♪プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第2番
     (ヴァイオリン独奏:ラファエル・オレグ)
♪R.コルサコフ/交響組曲「シェへラザード」
指揮=大野和士
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

リーズの会場は教会のような雰囲気の空間で、
オーケストラが並ぶと祭壇のような感じになりました。
拙作は尺八音楽の遠いルーツにあたるチベット仏教
(ラマ経)の儀式をオーケストラのサウンドに投影した
序奏部から始まりますから、なかなかフィットしました。
「フォノスフェール第1番」の実際の演奏風景を
御存知の方はおわかりでしょうが、
尺八独奏はその序奏部が突然停止した直後に、
客席の何処かから忽然と吹き流しで現れ、
オーケストラが長い休止を続ける中、付打ちの
合の手を伴いながらステージに上がっていきます。
ですから、連日の乗り打ち公演になる演奏旅行では、
毎回、ゲネプロの前に場当たりを行う必要がありました。
そのような訳で、リハーサル前の場当たりが、
三橋氏と私の日課のようになりました。

尺八協奏曲とヴァイオリン協奏曲が並ぶ
とても贅沢なプログラム前半から、聴衆は
東京フィルと独奏者の演奏に惹き込まれていきました。

拙作のイギリス初演が大成功となったことは、
大いなる歓びでした。
ステージでは、紋付き袴の出立ちで、舞台上手、
チェロの後ろに陣取って、付打ちを叩きました。
序奏部が終わって尺八が響き始めて、
時折付打ちが音空間を引き締める訳ですが、シーンと
息を飲むように静まりかえる客席を見下ろしながら、
三橋氏との阿呍の呼吸を図りながら付を打つ時間は、
作曲家冥利と演奏家冥利の両方を同時に味わえる
至福のひとときとなりました。

また、オレグ氏(私と同年齢)の独奏も素晴らしく、
以後しばしば言葉を交わすようになりました。
氏は尺八の演奏に強い興味を抱いた模様で、
ゲネプロではじっくりと尺八を聴き入っておられました。

リーズ公演パンフレット

さて、ドイツ編以上の珍道中になったイギリス編、
明日以降に続けていきます。