昨日の記事で誕生秘話をご紹介した[ディストラクション] シリーズを、
これから1曲づつ紹介していきます。

このシリーズ第1作は、昨日の記事でも紹介した通り、
アメリカのデュオ・ユニットからの委嘱に応えて作曲したもので、
私の作曲法・構造法の転機となった重要作です。

幸運にも、この作品は作曲の翌年に香港で開催された
ACL(アジア作曲家連盟)主催の作曲コンクール
(ISCM=ACL World Music Days '88の一環として開催)
に日本代表曲に選出され、
更にはその本選(審査員長=H.ラッヘンマン)で
第1位を受賞することができました。

この時、私は始めて海外を経験することになり、
以降の人生に多大な影響を及ぼす事になった訳ですから、
この作品は、正に人生の岐路を演出した作品と言えましょう。

下記の通り、楽譜やCDも出版されていますので、
興味のある方は是非、見て・聴いてください。

極端に限定された奏法によるピアノと、
縦横無尽に駆け巡るクラリネットが、
時に融和し、時に反発しながら、
音響の時空を生成していき、
終盤に正に"DISTRACTION"な崩壊が起き、
その後はピアノを共鳴体としても活用した微細な音響が
やがて彼方に消えていく・・・という音楽です。

クラリネット・パートには、
E. Michael Richards氏の著書「21世紀のクラリネット」に
記載されている運指や特殊奏法を随所に活用しています。
私にとって初めての国際コラボレーション作品になりました。
Richards氏とその著書の情報については、
下記のサイトを参照してみてください。

http://www.umbc.edu/music/faculty/richards.php
http://userpages.umbc.edu/~emrich/clarinet21.html


#DISTRACTION ( Ⅰ ) for Clarinet and Piano(1987)#
    The Richards / Tanosaki Duo 委嘱作品

演奏時間:約9分

初演:1987年/全米大学学会(ニューオリンズ)   
演奏:Cl.=E. Michael Richards Pf.=田野崎和子 

楽譜:日本作曲家協議会
        「錯乱~クラリネットとピアノの為に」
   全音楽譜出版「クラリネットのための2つの小品」

CD:Kazuko Tanosaki & E. Michael Richards
New Music For Clarinet & Piano by Japanese Composers
Nine Winds Records / NWCD-0188
(収録作品作曲家:
 本間雅夫、武満徹、湯浅譲二、松下功、松尾祐孝)

写真は、上記のアメリカ版CDです。
まだ輸入盤やネット検索で入手できるかもしれません。

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-Distraction no1 CD

最後に、最近の公演で演奏していただいた際の記録動画をリンクしておきましょう。