6月15日、16日の記事の通り、
T氏から<天風愛舞和庵>のタイトルをいただいて以来、
密に心に秘めていた構想がありました。
天・風・愛・舞・和・庵という6文字の漢字のイメージに沿った
6つの部分から構成される作品、できれば二胡とオーケストラの為の
協奏曲を作曲したいと考えていたのです。
その想いは、指揮者=大野和士氏と
東京フィルハーモニー交響楽団との協働プロジェクト
<アジア環太平洋作曲家シリーズ>の中で、
実現することになりました。
同シリーズ第1回の演奏会で、初演されたのです。
###胡琴協奏曲<天風愛舞和庵>###
(1998)
東京フィルハーモニー交響楽団委嘱作品
演奏時間:約20分
楽器編成:2222/422/3perc.hp/strings
初演:1998年11月 文化村オーチャードホール(東京)
演奏:胡弓=許可(シュイ・クゥ)
管弦楽=東京フィルハーモニー交響楽団
指揮=沼尻竜典
モンゴルの草原で青空を見上げるような
澄み切った雰囲気の「天」で始まり、
やがて(二胡の演奏による)馬の鳴き声が聞こえ「風」がふき、
連綿と二胡独奏のミニ・カデンツァの断続が「愛」を語ります。
一転してリズミカルな「舞」の音楽が
二胡と同じ抱絃楽器の仲間である津軽三味線の
エッセンスを盛り込みながら興奮をかき立てていき、
遂には全てを包み込むようなクライマックスとなる
「和」に到達します。
その頂点が崩れ落ちるように収束した後、
「庵」によって、静寂の中を揺蕩うようなエンディングとなる、
そのような6部分から構成される協奏曲が結実しました。
その初演は、素晴らしく美しい演奏でした。
許可さんの時に大胆で時に繊細な独奏と、
色彩感豊かな東京フィルのサウンドが相俟って、
CD化されていない事がもったいない位の名演になりました。
2管フル編成で20分の演奏時間という大作になった為も
あって、なかなか再演の機会に恵まれないのですが、
私自身ももう一度聴いてみたい作品です。
尚、タイトルの「胡琴協奏曲」の「胡琴」という言葉は、
胡弓属楽器の正式な呼称ということです。
許可さんから伺いました。
通常の二胡(大小もあるようです)、
板胡(蛇皮の変わりに板を張った北方の楽器)
京胡(京劇の伴奏につかうタイプの胡弓)
等の総称ということです。
この作品では、演奏者が自由にこれらの楽器を持ち替えて
演奏してよいという設定にしてあります。
ヴァイオリン協奏曲としても演奏可能です。
<天風愛舞和庵>シリーズの紹介はこれで最後です。
さて、明日からの話題は何にしましょう!
写真は、久しぶりに香港の夜景にしました。