ブラームスの4曲の交響曲、それぞれに個性の豊かな
出来の良い4兄弟といった趣です。
一昨日の記事での4曲をまとめた音楽談義に続いて、
ポツポツと、各曲の魅力について私なりの寸評を披露しています。

今日の記事は<交響曲第2番ニ長調>。

あまりにも偉大なベートーヴェンの9曲の交響曲という巨峰群を意識するあまり、
交響曲の作曲には特に慎重な態度で望んでいた
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)は、
着想から完成まで21年もの歳月をかけて、初めての交響曲=
<交響曲第1番ハ短調>を1876年にようやく脱稿しています。
更に改訂を重ねて、1877年に決定稿が完成して、
ジムロック社から出版されました。

長年にわたる重圧から解放された作曲家は、今度は1877年に一気に
二番目の交響曲、つまりこの<交響曲第2番ニ長調>を書き上げました。
初演はハンス・リヒター指揮によるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団でした。

さて、楽章毎に音楽を追っていきましょう。

第1楽章は、ソナタ形式による冒頭楽章です。
開始の瞬間、Re-Do#-Re という音型がさりげなく奏されますが、
実はこれが全曲を統一する主要動機になっていることは、
音楽ファンの間では有名な話ですね。
<第1番>の重苦しい雰囲気とは打って変わって、
伸びやかで清々しい楽想が淀みなく続いていきます。
ベートーヴェンの<交響曲第5番>と
<交響曲第6番「田園」>を同時期に作曲した類似性と
音楽的正格の対照性にもどことなく似ているために、
ブラームスの「田園交響曲」とも呼ばれています。
提示部終止に反復記号は記載されていますが、
あまり実施はされていないように思います。

第2楽章は、緩徐楽章です。
ブラームス独特の哀愁が漂う楽想は、ここでも健在です。
構造を解読すると、“ソナタ形式を応用した緩徐楽章”とでもいうべきでしょうか。
緩やかなテンポながらじっくりと展開を繰り広げていく様は、
この作曲家の手腕の高さを物語っています。

第3楽章は、本来ならば舞曲楽章
(メヌエットやスケルツォ)が置かれるところですが、
ブラームスは交響曲の第3楽章に、
典型的なスケルツォ(或いはメヌエット)を一貫して置きませんでした。
この<第2番>では、メヌエット風の間奏曲といった感じの
主部とスケルツォ風(但し2拍子系)の副次部の組み合わせで、
ABABAとなっています。

第4楽章では、明るく力強く前進する音楽を聴くことができます。
ソナタ形式によって構成されていますが、
展開部の冒頭で第1主題がかなり明確に登場するので、
ロンド・ソナタ形式と言ってもよいと考えられます。
ベートーヴェンの<交響曲第7番>の終楽章の、あの
ロンドソナタ形式による活気溢れる音楽に一脈通じる、
聴く者の希望と勇気を鼓舞してくれる音楽です。

ブラームスの交響曲の中で最も屈託の無い明るい音楽を聴くことのできる
この<第2番>を愛好している方も、きっと多いことでしょう。
私も大好きな曲なのです。
かつて、FM放送をエアチェックして聴いた
カルロス・クライバー指揮による演奏のヴォルテージが、
今でも脳裏から離れません。


仕事場のライブラリーにあるCDのご紹介です。
指揮=ギュンター・ヴァント
管弦楽=北ドイツ放送交響楽団
RCA / BVCC-37253
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-ブラームス第2・4番ヴァント盤