ジャン・シベリウス(1865~1957)の
交響曲の軌跡を辿っています。

交響詩の分野で傑作を多数書いた後、
1898年から1899年にかけて作曲した<交響曲第1番>
と1902年に初演された<交響曲第2番>は、
ともにオーソドックスな4楽章構成でした。
その後、30歳代半ばを過ぎたシベリウスは、
独自の楽章構成を模索するようになっていきました。
1907年に発表した<交響曲第3番>では、
スケルツォとフィナーレを編合させたようにも
捉えることができる3楽章構成を採用して、
新たな境地に踏み出しました。
そして1911年に発表した<交響曲第4番>では、
緩急緩急というバロック時代の教会ソナタ等式の
構成にも通じる、独特の4楽章構成を試みています。
さて、今日ご紹介する1915年発表の<第5番>では、
どのような構成を採っているでしょうか。

##シベリウス<交響曲第5番>変ホ長調 作品82##

[第1楽章]
シベリウス流のユニークな構成を持つ冒頭楽章です。
ソナタ形式による前半部と、
スケルツォに相当する後半部が
統合されて一つの楽章になっています。
初稿(1915年版)の段階では、別個の楽章になっていて
アタッカで続けて演奏する指定になっていましたが、
第2稿から一つの楽章に統合され、
最終稿(1919年版)にもそのまま引き継がれています。
北欧の森と湖の自然を空から俯瞰するようなイメージの
伸びやかな楽想が、この曲の雰囲気を決定づけていきます。
<第3番>ではスケルツォとフィナーレを編合した
第3楽章を考案したシベリウスは、この<第5番>では、
ソナタ形式冒頭楽章とスケルツォを編合するという
新機軸を打ち出している訳です。

[第2楽章]
シベリウスが得意とする自由で伸びやかな
変奏曲形式による緩徐楽章です。
弦楽器のピツィカートによる伴奏音形に乗せて
この作曲家らしい素朴な北欧の歌が歌われます。

[第3楽章]
シベリウスが終楽章でしばしば用いる構成、
二つのテーマが発展的に二度ずつ現れる
A・B・A・B・コーダという進行を見せる終楽章です。
テーマが発展的に扱われて高揚するので、
ソナタ形式を聴くような
充実感もある見事なフィナーレです。
まるで鳥になって大空を舞ながら、
森と湖の大自然を俯瞰するような、
大らかな気持ちにさせてくれる音楽です。
近年になって、この第3楽章を中心に
世界的に人気を博している、この<交響曲第5番>です。

シベリウス/交響曲第5番/ヴァンスカ盤

私の仕事場のライブラリーには、
オスモ・ヴァンスカ盤CDがあります。
4楽章構成の原典版(オリジナル版)と
3楽章構成にまとまった現行版の両方が収録されている
とても興味深いアルバムです。
リリース当初は大きな話題になりました。

♪シベリウス「交響曲第5番」(オリジナル版&現行版)CD♪
BIS/CD-863 オスモ・ヴァンスカ指揮/ラハティ交響楽団

珍しい音源がYouTubeにアップされていますので、
リンクしておきましょう。
YouTube / シベリウス 交響曲第5番 第3楽章 
      チェリビダッケ指揮 スウェーデン放送交響楽団