新型コロナウィルス禍の中で混迷からようやく脱出しつつある人類・国際社会ですが、
文化・芸術・スポーツといった人間が人間である証とも言える営みを、
絶やさずに次代に繋いでいきたいものです。

20世紀末から20年前にかけて私自身も構想段階から参画して開催した
世界平和に繋がる企画を振り返っています。

昨日まで掲載した<東京フィル・アジア環太平洋作曲家シリーズ>
の話題の続編でもある記事シリーズを、今日から綴っていきましょう。

人類は21世紀に入ってもまだまだ未熟な存在であると、
様々な事象を前にして思います。
例えば、私が2013年に訪ねて現代音楽祭のファイナルコンサートで
タクトをとったウクライナのドネツクという町は、
現在はウクライナとロシアの紛争の最中に在ります。
一日も早い、事態の平和的な収拾を願ってやみません。

そこで、私が1998年から2001年に大野和士氏と共に
企画を立案した東京フィルの国際プロジェクト、
<アジア環太平洋作曲家シリーズ>の最終公演として
21世紀の開幕の年に実現した国際共作連作 [新世紀への讃歌] について、
様々なエピソードを披露していきましょう。

♪♪♪国際連作共作「新世紀への讃歌」♪♪♪
全曲:東京フィルハーモニー交響楽団委嘱作品

初演:2001年10月19日/
        東京オペラシティコンサートホール
    東京フィルハーモニー交響楽団特別演奏会
      アジア環太平洋作曲家シリーズvol.4
プランニング・アドヴァイザー:松尾祐孝
演奏:指揮=渡邊一正
独唱:ソプラノ=リー・ビュンリウル 
   バリトン=河野克典 
合唱=東京少年少女合唱隊

この企画は、この企画立案当時の東京フィル常任指揮者
大野和士氏が、サントリー音楽財団主催の現代音楽祭
<サマーフェステフィバル>において、
[和解のレクイエム] の日本初演を指揮した公演終演後の
サントリーホールの楽屋での会話に端を発しています。

[和解のレクイエム] は、
第2次世界大戦終結50年を記念して、
シュトゥットガルトを拠点とした<ヨーロッパ音楽祭>が
企画した国際連作共作でした。
シュニトケ、クルターク、ベリオ、リーム、湯浅譲二、等の
国際現代音楽シーンを代表する錚々たる顔ぶれの作曲家が、
1曲ずつ書いて全体で一つのレクイエムを構成するという、
非常に壮大な企画・楽曲でした。
各曲の彫琢そのものも、演奏の充実も、共に聴き堪え充分で
素晴らしい公演となりました。

しかし「キリスト教典の"レクイエム"を
テキストに使っている限り、
結局はヨーロッパ人の視点からのみの企画になっていたのが
何とも惜しいね!」という事を、
終演後の楽屋で大野氏と語り合った記憶があります。
そういった共通認識の上で「今度がアジア・東京から、
もっと自由な発想の企画を発信したいものだね!」
と意気投合したのでした。

その後、東京フィルが1998年度から2001年度にかけて、
<アジア環太平洋作曲家シリーズ>を企画することになり、
私がプランニング・アドヴァイザーを
担当することになりました。
そして、大野氏と協議を重ねながら、
各年度1回ずつの計4回の公演の
作曲家の人選や作品の選曲を進めていったのです。
その際に、最終回は丁度21世紀の開幕の年=
2001年になるので、[新世紀への讃歌] と題して
[和解のレクイエム] では成し得なかった、
キリスト教典に囚われない自由な発想の国際連作共作を、
このシリーズの最終回=集大成として実現しよう
という事になっていったのでした。
そして遂に、世界平和と地球環境保全への
壮大なメッセージを包括した、
アジア環太平洋出身の作曲家8名による
[新世紀への讃歌] が、誕生したのです。

第1曲="序章:人類の未熟さに対して"
松尾祐孝(日本)/Masataka MATSUO (Japan)
演奏編成:オーケストラ、児童合唱

第2曲:”土の未来~母なる大地へ”
陳圭英(韓国)/Kyu-yung CHIN (Korea)
演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱

第3曲:”水の未来~海へ、川へ”
于京君/ジュリアン・ユー(中国/オーストラリア)
/Julian Yu (china/Australia)
演奏編成:オーケストラ、児童合唱

第4曲:”空気の未来~森へ、大気へ”
ディエゴ・ルズリアガ(エクアドル)
/Diego Luzuriaga (Ecuador)
演奏編成:オーケストラ、バリトン独唱

第5曲:”火の未来~エネルギーへ”
周龍/ツォー・ロン(中国/アメリカ)
/Zhou Long (China/USA)
演奏編成:オーケストラ、児童合唱

第6曲:”宇宙の未来~星たちへ”
ランス・ヒューム(アメリカ)/Lance HULME (USA)
演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱

第7曲:”命の未来~人へ、まだ見ぬ命たちへ”
チナリー・ウン(カンボジア/アメリカ)
/Chinary UNG (Cambodia / USA)
演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱、バリトン独唱

第8曲:”エピローグ~希望”
イグナチオ・バカ=ロベラ(メキシコ)
/Ignacio BACA=LOBERA (Mexico)
演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱、
     バリトン独唱、児童合唱


明日からの記事で各曲の概説をアップしていきます。
乞うご期待!


CD「共作連作<新世紀への讃歌>全曲世界初演」
   企画:東京フィルハーモニー交響楽団
   プランニング・アドヴァイザー:松尾祐孝
   Live Notes / WWCC-7414 
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-新世紀への讃歌CD