東京フィルハーモニー交響楽団<アジア環太平洋作曲家シリーズ>
シリーズ第3回は、2001年2月9日に、
東京オペラシティ/コンサートホールで開催されました。

この回は、海外作曲家3名の来日は
残念ながら実現しませんでしたが、
日本現代音楽協会との協働プロジェクトとして、
日本の若手作曲家2名の作品もプログラミングされ、
多くの邦人作曲家も会場に終結する、
新しい展開にもなりました。

###東京フィルハーモニー交響楽団
       <アジア環太平洋作曲家シリーズ>###
     第3回「ラテンアメリカへのまなざし」
 2001年2月9日/東京オペラシティ コンサートホール
指揮:渡邊一正 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ソプラノ:塚田京子 尺八:三橋貴風(日本)

プログラム
于 京君 / Julian Yu(中国/オーストラリア)
               :"オアシス"(日本初演)
二宮玲子(日本):ソプラノと管弦楽のための交響曲
             <ルバイヤット> 
       (日本現代音楽協会出品作品・世界初演)
久行敏彦(日本): "いづかたへ…" 
       (日本現代音楽協会出品作品・世界初演)
葉 小鋼 / YE Xaogang(中国):
            "釈迦の沈黙" ~尺八協奏曲
    (異文化交歓協奏曲シリーズ第3弾・日本初演)
ランス・ヒューム / Lance Hulm(USA)
           : "Stearing Fire" (日本初演)

ジュリアン・ユウ氏は、東京音楽大学で研鑽を積んだ
経験も持つ中国出身の俊英です。
再三このブログに登場してくる
陳其鋼氏や譚盾氏と同じ世代です。
現在はオーストラリア国籍を持ち、
旺盛な活動を展開しています。
この "オアシス" では 、中国の西域を旅した経験が
反映されている音楽を聴くことができます。

二宮玲子さんは、岩波映画の音楽も手掛けてきた
社会派の作曲家です。
また、インドの民族音楽にも造詣が深い方です。
この作品にも、そういったアジアの魂が込められています。
久行敏彦氏の作品は、トーン・クラスターとハーモニーを
共存させた独特の透明感を湛えた作品です。
この2作品は、日本現代音楽協会の
「現音活動全国展開シリーズvol.3」として、
東京フィルとの共同制作として初演されました。

葉小鋼氏の尺八協奏曲は、既成の作品でしたが、
このシリーズの "異文化交歓協奏曲シリーズ" 誕生
のヒントにもなった作品でした。
香港で委嘱初演され、
台湾のコンクールで第1位を受賞していましたが、
この時の演奏は日本初演でありまた改訂初演でもありました。
氏とは1988年の香港の現代音楽祭で面識を得ていましたが、
当夜も含めて、その後なかなかお会いできずに
居ることが残念です。現在は、
北京中央音楽院の作曲科主任等の要職に就いて居られます。

ランス・ヒューム氏は、ドイツ・カールスルーエを拠点に
国際的に活躍しているアメリカ出身の俊英です。
企画策定当時、カールスルーエに在る
バーデン州立歌劇場音楽総監督でもあった
大野和士氏の紹介による人選でした。
この作品 "Stearing Fire" は、
1998年ルトスワフスキ国際作曲コンクール第1位受賞作品
というだけあって、10分足らずの演奏時間ながら、
強烈な印象をもたらしてフィナーレを飾ってくれました。

このようにして、アジアからの視点を核としながら、
ラテンアメリカ圏や北米やオセアニアの
作曲家の作品にも光を当てながら、
3回の演奏会で13作品を紹介してきました。
そしていよいよ、共作連作 [新世紀への讃歌] 全曲委嘱世界初演
というファイナル・クアイマックスに向かったのでした。


今日の写真は、太平洋の南国の樹木越しの空のショットです。

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