この作品は、昨日初演となった私の最新作《邦楽語り劇「天守物語」》の序曲に使用、
各段の楽想が劇中の主要場面の音楽や主要登場人物のテーマにもなりました。
その公演のアーカイブ配信をこの記事の最下段にURLを記載しておきますので、
お時間の許す時にご視聴ください。

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2018年8月31日〜9月2日に、洗足学園音楽大学を会場として
【全国邦楽合奏フェスティバル in 川崎】を
現代邦楽研究所&同大学現代邦楽コースの全面協力で
開催することができてから、既に4年余りが経ちました。

この作品は、そのフェスティバルの最終演目でも上演された、
<新譜音悦多Ⅱ〜合奏七段今様>です。
【全国邦楽合奏フェスティバル in 川崎】の最終日に開催される
〖全国邦楽合奏コンサート〗の最後のステージで
私自身の指揮によって再演されました。



さて、この作品は、
洗足学園音楽大学の現代邦楽コースの年間最大の演奏会
【邦楽定期】のための書き下ろし作品として、
2017年10月9日に私自身の指揮の下に初演されました。

"段物再発見"のテーマの下に開催された今回の【邦楽定期】
は、古典の段物の数々が、様々な楽器編成によって
次々と演奏される趣向でした。
その最後に、現代の段物として私の新作が演奏されました。

古典では概ね"六段"や"八段"ですので、
私は"七段"として、七つの部分が連続する曲にしました。
一之段・・・1拍子 / 一音による素材が中心
二之段・・・2拍子 / 二音による素材が中心
という案配で曲は進行していきます。
したがって、皆さんのご賢察の通り、
五之段と七之段はかなり複雑な拍子やリズムになります。

同名の<新譜音悦多>の第1作とは、
楽想に少々の共通項を持つ姉妹作の関係と言えましょう。

第1作は1998年作曲でした。
まだ設立して間も無かった時期の現代邦楽研究所でしたから、
現代作品や複雑なリズムを未経験の受講生や
若手講師・助手も多く、練習の段階から物議をかもしました。
「なんでこんなことを書くんだ!」と食ってかかられたことも
ありましたが、次第に演奏がまとまっていくに従って、
徐々にそれらの声もトーンダウンして、
初演はまずまずの成功を収めました。
その後、この曲は同研究所のレパートリーとしてすっかり
定着して、数多くの再演を重ねていただいていますし、
同研究所の委嘱作品集CD(ALM RECORDS / ALCD-9028)
にも収録されています。

それから20年近くの月日を経て、5拍子や7拍子、
更には変拍子を含む複雑で機能的な音楽にも
現代邦楽コースの学生や現邦研の受講生は
柔軟に対応できるようになっていました。
ですから、<新譜音悦多Ⅱ〜合奏七段今様>(2017)
の初演に向けては、<新譜音悦多>(1998)のような
物議を醸すような騒ぎは何もなく、
和気靄々とリハーサルを進めることができました。

これぞ、伝統とは博物館に陳列するものではなく、
切磋琢磨して発展するところにある、という事だと
私はいささかの自負を持っています。

邦楽器を愛好されている方々、皆さんも是非、
新しい作品、未知の領域の楽曲にも
チャレンジしてみてください。
きっと、新しい発見や触発があることでしょう。

邦楽定期

初演演奏会の情報は下記の通りです。

#####洗足学園音楽大学【邦楽定期】#####
        〜段物再発見〜
 2017年10月9日(月祝) 開場 13:30 開演 14:00
       洗足学園 前田ホール
    入場料:1000円 未就学児入場不可

【出演】
石垣 清美 (箏・三絃) 名嘉 ヨシ子 (琉球箏)
吉原 佐知子 (箏) 野澤 佐保子 (箏) 
長谷川 慎 (柳川三味線) 野澤 徹也 (三絃)
市川 香里 (三絃) 西川 啓光 (囃子) 神 令 (尺八)
洗足学園音楽大学 現代邦楽コース学生 / 卒業生
現代邦楽研究所 研究生 / 修了生
森重行敏 (企画・司会)  他

Program
・「合奏曲六段」 藤井凡大 作曲 - 合唱付き-
・箏、柳川三味線、一節切尺八合奏「すががき」
・琉球箏曲「六段菅撹」
・箏曲「五段砧」
・三絃合奏「八段すががき」
・箏曲「六段・八段合奏」
・尺八古典本曲「一閑流 六段」
・「新譜音悦多Ⅱ〜七段合奏今様」松尾祐孝 作曲(初演)

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この作品は、2024年に更なる発展を遂げました。
洗足学園創立100周年記念公演として企画したコラボレーション公演で、
泉鏡花原作「天守物語」を題材として朗読劇との協働を行い、
その序曲として活用することになりました。

《邦楽語り劇「天守物語」》配信URL:
https://www.youtube.com/watch?v=6-aGRHzdnhU