邦楽器作品の創作と邦楽器演奏界の更なる振興を
ライフワークの柱に据えている私です。
このところ、自作邦楽器作品の紹介を続けています。

今日ご紹介する作品は、
【全国邦楽合奏フェスティバル in 川崎】の初日、
2018年の8月31日の夕方に開催された
〖作曲家4団体によるコンサート「夏の終わり」〗でも
抜粋版が演奏された、琵琶の世界に一石を投じた組曲です。

2018年8月31日の記録動画が、NPO法人全国邦楽合奏協会公式HPの
新サイト「今邦楽ができること、夏の終わり創作リレー」にアップされています。
http://zensokyo.org/natsu.html
お時間の許す時にどうぞお聴き(ご覧)ください。



では、<歳時記>の作曲に至るストーリーを
ご紹介しましょう。

随分前から、私に琵琶の魅力を伝えてくださった
田原順子さんから、お弟子さんたちのための
現代音楽作品への導入になる練習曲の作曲を
勧められていました。

その話を聞いて、最初はピアノ教則本の「ハノン」のような、
メカニカルな練習曲を発想して実現しようと考えたのですが、
どうしても自分で気に入るカタチに
練り上げられませんでした。

そこで今度は、今まで書いた私の作品の随所に盛り込まれた、
新しい記譜法や奏法、
或いは伝統的な奏法を発展させたもの等の、
一つ一つに焦点を当てた小品をたくさん作曲して、
それを並べた組曲(曲集)とする方向に、
構想を固めていきました。

最終的には、一月~十二月の12曲から成る組曲、
しかも普通の組曲とはことなり、
独奏曲、二重奏曲、三重奏曲、を組み合わせた
組曲というカタチを決断しました。

2013年の11月7日に、その内の半分が先行初演されました。
「一月:瀧凍る」(独奏曲)
「三月:燕飛ぶ」(二重奏曲)
「六月:草蛍」(独奏曲)
「七月:大雷雨」(三重奏曲)
「八月:走馬燈」(独奏曲)
「十月:阿蘇噴煙」(三重奏曲)

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-音のカタログvol.4表

そして初夏までに全12曲が完成して、
2014年9月に開催された<松尾祐孝邦楽器作品個展>で、
全曲版の初演が行われました。
「一月:瀧凍る」(独奏曲)
「二月:梅仰ぐ」(二重奏曲)
「三月:燕飛ぶ」(二重奏曲)
「四月:しゃぼん玉」(二重奏曲)
「五月:粽結う」(二重奏曲)
「六月:草蛍」(独奏曲)
「七月:大雷雨」(三重奏曲)
「八月:走馬燈」(独奏曲)
「九月:大やんま」(二重奏曲)
「十月:阿蘇噴煙」(三重奏曲)
「十一月:冬紅葉」(二重奏曲)
「十二月:初雪~降誕祭」(三重奏曲)

演奏は、田原順子琵琶研究所《聚の会》のメンバー6人で
分担していただきます。三重奏曲は1パート二人にして、
6人全員で演奏していただきました。

琵琶演奏メンバー:重山紀子  伊藤純子  中村祐子     
         竹本彩乃  藤本はるか  樋口真子  

松尾祐孝邦楽器作品個展

琵琶史上に類例を見ない小品集の誕生となりました。
その後、部分演奏や全曲演奏等、
田原さんのお弟子さん達を中心に、
数多く演奏を重ねていただいています。

追記:
そして、昨年(2022年)から、この<歳時記>の
三味線ヴァージョンの作曲に取り掛かっています。
来たる1月18日にその中の4曲が先行初演となる予定です。
その演奏会の情報は、このブログやfacebook等で逐次ご案内いたします。