司馬遼太郎著「坂の上の雲」〜多くの問題を抱える世界情勢の中の日本を改めて見つめる〜 | 松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

創造芸術は人間の根源的な表現欲求と知的好奇心の発露の最も崇高な形。音楽家・作曲家を目指す貴方、自分の信じる道(未知)を進んでいきましょう。芸術・音楽・文化と共に人生と社会を豊かにしていきましょう。~頑張れ日本!〜がんばろうニッポン!

2019年5月1日から始まった「令和」時代が、
もう令和6年を迎えています。

ここ数年吹き荒れたコロナ禍、
集結の見通しが全く立たないウクライナ戦争、
更に勃発したガザ地区の問題、
緊迫する台湾海峡や南シナ海...etc、
「令和」の日本はどのように国際社会を渡っていくのでしょうか。

明治維新以来、明治・大正・昭和と、
日本は戦争を重ねてきました。
「平成」30年間に日本が戦争を経験せずに済んだことは、
今の私たちにとっては当たり前に思えてしまいますが、
よく考えてみると、いろいろと思い当たることがあります。
私は昭和34年生まれですが、私が生まれるほんの14年前までの
日本は、戦争の当事国だったのです。
私の今までの人生の四分の一足らず前に、
日本は戦争の只中にあった訳です。

「令和」の時代も「平成」の時代に続いて、
戦争のない日本が続くことを願ってやみません。

そして、戦争がない時代だからこそ、
戦争をせざるを得なかった時代がどのような状況であったのかを
戦争の経験を持たない私たちも知っておくことは、
実はとても重要だと考えています。

ここで日本という存在について想いを馳せてみましょう。

極東の小さな島国である日本が、結果的には
欧米先進国に占領されたり植民地化されることなく
(第2次世界大戦終結後の数年間を例外としてですが)
様々な時代に成立した芸能・芸術・文化が
同時並列的に今なお共存している・・・
このような幸せな国は、世界中を見渡しても
そうそうあるのもではありません。

江戸時代末期=つまり幕末期から、日本は、産業革命
によって工業化による武力と経済力の両面で飛躍した
欧米列強の地球規模の勢力拡大の図式に中に
いやおうとなく組み込まれていきました。

ちいさな国に「藩」という自治国家のようなものが
群雄割拠していたことが却って幸いしたのか、
極東の端であまりにヨーロッパから遠かったからか、
アメリカが南北戦争最中で、
日本を本気で攻める余裕が無かったのか、
とにかく植民地にならずに明治維新を達成できたことは、
今から振り返ってみてもまず第一の奇跡のように思われます。

そして、明治時代に入ってから、
重税に喘ぎながらも国民はそれでも黙々と働き、
「日清戦争」と「日露戦争」の二つの戦争を
慎重で謙虚な状況分析と大胆且つ繊細な決断や作戦を重ねて、
なんとか凌いで凌いでいくのです。
特に「日露戦争」が周到な準備と多大な犠牲の上に
何とか達成されたギリギリの辛勝であったことは、
もっと広く正格に日本人は知っておくべきでしょう。
残念ながら学校教育の通常の授業の中では、
このあたりの近代史について時間をかけて
十全な考察を巡らせる余裕は無いようです。

せめて私たちは、例えば司馬遼太郎著「坂の上の雲」等の
歴史小説や調査文献を読んで、
その時代の空気と日本人の気概に
思いを巡らせる経験を持つ必要はありそうです。
明治の時代に、
正岡子規(短詩型文学者)
秋山好古(陸軍将校・日本騎兵の祖)
秋山真之(海軍将校・日本海海戦作戦参謀)
の3人が奇しくも同郷の幼なじみとして松山に育ち、
日本の歴史の動向の中心に飲み込まれていき、
そこで精一杯に真摯且ついきいきと邁進する様に、
当時の日本人の持つ気概と徳を見出すことができます。
それにしても、初版本で全6巻、文庫本で全8巻、
凄まじいばかりの長編小説です。

2009年暮・2010年暮・2011暮と3年計画で、NHKが
この「坂の上の雲」を特別ドラマとして放送した事は、
まだ記憶に新しいところです。
映画にも匹敵する素晴らしい巨篇ドラマでした。

「日露戦争」以降、日本はどういう訳か
思考の肥大化を起してしまします。
そして、遂には日中戦争や太平洋戦争を拡大させ、
遂には昭和20年(1945年)の終戦を迎えるに至った訳です。

21世紀に入った今日の私たちの感覚からすれば、
こんなに何度も戦争を繰り返した
明治時代から昭和前期までの
日本はいったい何だったのだろうと感じます。
自国の市場拡大や資源確保の為には、他国と競ってでも
後進国を植民地や属国にしても良いというような、
帝国主義が国際的に主流の考えとして
君臨していた時代だったということなのでしょうか。

流石に今の世界の世論の中では、
そのような軍事的な帝国主義は陰を潜めていますが、
違う形での大国の横暴や局地的な武力の行使による
悲劇的な事件は世界中で後を絶ちません。
人類はまだまだ未熟なのでしょうか。

芸術や文化、音楽といった素晴らしい概念や能力を有する
人間・人類でありながら、醜いことも数知れず・・・

平成最後の「建国記念の日」に寄せて、
自分・日本・人類を見つめ直したいと思います。

箱根からの富士山

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

21世紀開幕の年に世界平和を祈念して発表した
私が企画の参画した東京フィルのCDをご案内しておきます。
(もう絶版で入手は難しいかもしれませんが)

♪♪♪国際連作共作「新世紀への讃歌」♪♪♪
全曲:東京フィルハーモニー交響楽団委嘱作品

初演:2001年10月/東京オペラシティコンサートホール
   東京フィルハーモニー交響楽団特別演奏会
    アジア環太平洋作曲家シリーズvol.4
プランニング・アドヴァイザー:松尾祐孝
演奏:指揮=渡邊一正
独唱:ソプラノ=リー・ビュンリウル バリトン=河野克典 
合唱=東京少年少女合唱隊

第1曲="序章:人類の未熟さに対して"
松尾祐孝(日本)/Masataka MATSUO (Japan)
演奏編成:オーケストラ、児童合唱
演奏時間:約9.5分

第2曲:”土の未来~母なる大地へ”
陳圭英(韓国)/Kyu-yung CHIN (Korea)
演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱

第3曲:”水の未来~海へ、川へ”
于京君/ジュリアン・ユー(中国/オーストラリア)
/Julian Yu (china/Australia)
演奏編成:オーケストラ、児童合唱

第4曲:”空気の未来~森へ、大気へ”
ディエゴ・ルズリアガ(エクアドル)
/Diego Luzuriaga (Ecuador)
演奏編成:オーケストラ、バリトン独唱

第5曲:”火の未来~エネルギーへ”
周龍/ツォー・ロン(中国/アメリカ)
/Zhou Long (China/USA)
演奏編成:オーケストラ、児童合唱

第6曲:”宇宙の未来~星たちへ”
ランス・ヒューム(アメリカ)/Lance HULME (USA)
演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱

第7曲:”命の未来~人へ、まだ見ぬ命たちへ”
チナリー・ウン(カンボジア/アメリカ)
/Chinary UNG (Cambodia / USA)
演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱、バリトン独唱

第8曲:”エピローグ~希望”
イグナチオ・バカ=ロベラ(メキシコ)
/Ignacio BACA=LOBERA (Mexico)
演奏編成:オーケストラ、ソプラノ独唱、バリトン独唱、児童合唱

新世紀への讃歌CD