一昨日・昨日からの話題を続けます。

冬期オリンピック長野大会に際して制作された
CD:「小沢征爾 conducts 世界国歌」PHILIPS PHCP-11033/4
の録音当時を振り返ってみましょう。

合唱や吹奏楽のデモ・データを基に、
各国の国歌をオーケストレーションする。
しかも、選手村入村式表彰式国旗掲揚に使用するため、
40~100秒の範囲にまとめる、等の条件下の仕事でしたから、
心待ちにしていた長野オリンピック関連のプロジェクトとは言え、
楽譜を書いている頃の実感としては、型にはまった仕事に思えて、
強く心惹かれるような作業ではありませんでした。

ちなみに、私が担当したのは、
イスラエル、アルメニア、リトアニア、スロベニア、
ノルウェー、ヴァージン諸島(アメリカ領)、の6曲でした。
それでも、実際に編曲を進めていくうちに気合いが入ってきて、
最終的にはかなり入れ込んで取り組みました。

そしてそして、収録に立ち会ってみると・・・
各国歌の何と面白いことか・・・

演奏する新日本フィルハーモニー交響楽団の
新しいフランチャイズになる墨田トリフォニーホールで、
正式な竣工前の会場使用という特別な環境での
収録の実施となっていました。
なにしろ杮落し前の特別使用であったために、
床等に傷ひとつ厳禁の体制が敷かれ、
楽員等は足(靴)にシャワーキャップのような保護カバー
(靴を保護するのではなく床を保護するのです!)を被せて、
何やらものものしい感じで、収録はスタートしたのでした。

するとすると・・・
各曲それぞれの、お国ぶり、国歌制作背景等が、
小沢征爾氏の入魂のタクトと新日フィルの熱演によって、
実に個性豊かに浮き彫りになって、
とても興味深い収録になっていったのです。
自分の担当した国の収録以外も、都合のつく限り聴き通しました。
国歌がこんなに楽しいものとは、全く予想外の経験でした。

さて、私からのお勧めをご紹介しておきましょう。
勿論、私の担当した上記6曲のオーケストレーションは、
手前味噌ですが、是非お聴きください。

そして、何といっても強烈にアジアをアピールしていて
収録時から楽員にも大受けだったアゼルバイジャン国歌、
これは殆ど演歌魂と言えるようなエモーションで、
紅白歌合戦のトリで北島三郎さんか五木ひろしさんに
熱唱してほしいような曲ですよ!

そしてもう一曲のお勧めが、アメリカ国歌です。
あまりに頻繁に耳にする国歌ですが、
これほどド派手なオーケストレーションは前代未聞です。
フィギュアスケート女子シングルで優勝した
アメリカの天才少女=リピンスキーが、
金メダルを授与された表彰台の上でこの国歌を聴きながら、
あまりに豪華なオーケストレーションの響きに驚いて
「ワ~オ!」と絶叫していたシーン
(そういうふうに私にはテレビ場面で見えました)
が思い出されます。

CDの紹介は昨日の記事に掲載してあります。
まだ入手可能と思いますので、是非聴いてみてください。

下の写真は、長野の聖火台です。

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-長野の聖火台