スクリャービンの交響曲の紹介、第3弾です。

アレクサンドル・ニコラエヴィチ・スクリャービンは、
1872年に生まれて1915年に没したロシアの作曲家です。
ピアノ作品ばかりではなく、シンフォニストとしても
もっと注目されて良いのではないかと、私は思っています。

私がスクリャービンの交響曲の魅力に目覚めた切掛は、
1992年9月の東京フィルハーモニー交響楽団の
定期演奏会でした。
当時、常任指揮者就任直後の大野和士氏の指揮による、
氏が提唱して開始された「若手作曲家委嘱シリーズ」の
第一弾としての柿沼唯氏の新作が初演を含むプログラムの
最後のメインがこのスクリャービンの第2番だったのです。
オーチャードホール一杯に鳴り響いた量感たっぷりの
音楽と若々しい楽想に、私はすっかり魅了されました。
以来、私はスクリャービンの交響曲に
注目するようになったのでした。

因に、翌年9月の同楽団定期演奏会で、同じく大野氏の
指揮で、「若手作曲家委嘱シリーズ」の第二弾として、
拙作=<フォノスフェール第1番~尺八と管弦楽のために>
が初演されたのでした。

さて、その演奏会でスクリャービンの交響曲第2番を聴き、
すっかりスクリャービン・サウンドに魅了された私は、
比較的有名な<第4番「法悦の詩」>以外の交響曲も
聴こうと、CDを探して先ず最初に見つけたのが、
この<第3番「神聖な詩」>のディスクでした。
コンドラシンの指揮する演奏も素晴らしく、
スクリャービンの交響曲が益々好きになりました。

スクリャービン<交響曲第3番「神聖な詩」>

[第1楽章:闘争 / レント-アレグロ]
スクリャービン風ソナタ形式と言うべき構造の
美しくも量感に溢れる楽章です。
後の<第4番「法悦の詩」>や<第5番「プロメテウス」>
の登場を予感させる響きが、そこかしこから聴こえてきます。
第2番にも一脈通じる、胸が締めつけられるような
ロマンを感じさせる若々しい楽想が印象的です。
序奏の荘厳な音楽がコーダで回帰する構成が、
楽章全体を引き締めています。

[第2楽章:快楽 / レント]
連綿とした緩徐楽章です。
和声的書法と対位法的書法が高度にバランスしていて、
この作曲家の確かな筆致が浮き彫りになっています。

[第3楽章:神聖な遊び / アレグロ]
明るく前進する終楽章です。
第1楽章のテーマや素材が頻繁に登場して、
楽曲全体の有機的な構成を意識していた作曲家の意図が
充分に感じられる独自の構成に乗って
たっぷりとしたサウンドを聴き進めていくことになります。

尚、この3つの楽章は続けて演奏されます。
全体を通して、4管編成のゴージャスなサウンドが、
聴き手を魅了してやみません。
第2番の5楽章3部構成が、
この第3番で3楽章構成通奏になり、
遂には次の第4番で単一楽章構成に辿着いていきます。


キリル・コンドラシン指揮/アムステルダム・コンセルトへボウ
ETCETERA / 32CD-3118 KTC-1027

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-スクリャービン第3番CD

ライヴ録音とは思えないほど完成度の高い名演ですよ!