ロシアの作曲家の交響曲紹介を続けましょう。
ラフマニノフの次の話題はスクリャービンにしました。

アレクサンドル・ニコラエヴィチ・スクリャービンは、
1872年に生まれて1915年に没したロシアの作曲家です。
近年の状況としては、ほぼ同世代のラフマニノフに比べると、
作品の演奏頻度にはやや物足りないところもありますが、
もっともっと認知されてレパートリーとして
取り上げられて良い作曲家ではないでしょうか。
ピアノ曲はそこそこ演奏されていますが、実は、
スクリャービンはシンフォニストとして
非常に重要な作曲家だと、私は思っています。

そのスクリャービンの交響曲第1番は、
副題に「芸術讃歌」を有した6楽章構成の作品です。
この作曲家の最初の本格的な管弦楽曲である
<ピアノ協奏曲>との共通点も多く見出せる
とてもロマンティックな作品ですが、
残念ながら演奏機会には恵まれていません。

[第1楽章:レント]
序章にあたる楽章です。終楽章と楽想を共有していて、
全曲の統一を図っていると考えられます。
いかにもスクリャービン節といったロマンティックな旋律が、
冒頭楽章からたっぷりと紡ぎ始められます。

[第2楽章:アレグロ]
通常の交響曲では冒頭楽章に相当するソナタ形式楽章です。
第2番以降の作品の萌芽が明確に聴き取れる筆致に、
この作品においてこの作曲家が
既に独自の作風を確立していたことが判ります。

[第3楽章:レント]
緩徐楽章に相当する音楽です。
クラリネットに主旋律を歌わせる場面等、
スクリャービンの得意技を随所に聴くことができます。

[第4楽章:ヴィヴァーチェ]
スケルツォの相当する楽章で、軽妙洒脱な味わいがあります。
小粒ながら上質のスパイスのような存在感を発揮しています。

[第5楽章:アレグロ]
通常の交響曲では第4楽章=フィナーレに相当するような、
ソナタ形式による堂々たる楽章です。

[第6楽章:アンダンテ]
この終楽章には、独唱(メゾ・ソプラノ&テノール)と
合唱が導入されています。
前半には独唱が導入され、第1楽章や第2楽章で提示された
テーマや素材が回帰して、全曲の統一を打ち出しています。
後半部には合唱が導入され、
「芸術に栄光あれ、永遠に栄えあれ!」という意の短いテキストを
繰り返しながら、途中でフーガも登場して、
最後は壮大な“讃歌”となって全曲を閉じます。

つまりこの作品は、通常の4楽章ソナタの前後に
序章と終章を付加して、特に終章には声楽を導入して、
独自の6楽章構成になっていることが解ります。
滅多に演奏されないのが惜しい、美しい作品だと思います。

この作品の私の愛聴盤は、
少々意外なディスクに感じられるかもしれない組み合わせですが、
ムーティ&フィラデルフィア管のCDです。

スクリャービン/交響曲第1番「芸術讃歌」
指揮=リッカルド・ムーティ
管弦楽=フィラデルフィア管弦楽団
EMI Angel / CC33-3320

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