交響曲第1番と第2番の初演がそれぞれ大成功となって、
ロシアで最初の本格的なシンフォニストとしての地歩を
固めていったチャイコフスキーでした。
そして、続く交響曲を1875年に作曲しました。

この作曲家の交響曲としては唯一、長調で開始される音楽であり、
また唯一5楽章構成を持つ作品になりました。
標題のポーランド(Polish)は、終楽章が
ポロネーズ調の音楽であることに由来するようですが、
作品そのものの成立や性格を象徴するものではありません。
むしろ最も絶対音楽的な性格が強い作品と言えるでしょう。

5楽章ということもあって、演奏時間は45分以上に及ぶ、
なかなか雄大な作品になっています。
私の仕事場のライブラリーに在るCDはこの盤です。

チャイコフスキー/交響曲第3番「ポーランド」
         戴冠式祝典行進曲
ミハイル・プレトニョフ指揮
ロシア・ナショナル管弦楽団
PENTATONE / PTC 5186383

チャイコフスキー/交響曲第3番CD

###チャイコフスキー/
     交響曲第3番 ニ長調 作品29###

第1楽章は、葬送行進曲調の序奏と明るく前進的な主部が
好対照を成す冒頭楽章です。
第一主題が提示された後に発展的な経過部の後に
一段とスケールアップして再提示されるといった、
独特のソナタ形式の扱いは、この作曲家ならではの筆致です。
第二主題のオーボエの旋律に、同時期に作曲していた
「白鳥の湖」との近似性も感じられます。

第2楽章は、ドイツ舞曲風(レントラー風)の素朴な舞曲楽章です。
トリオでは、三連符の伴奏音型がスケルツォ的な性格を加えています。
主部自体がABAの構成を持っているので、
全体としてはABACABAのロンド形式と見ることもできるでしょう。

第3楽章は、悲愴感漂う緩徐楽章です。
後年の三大交響曲の痛切・哀切な楽想の萌芽と感じられます。
展開部が簡略化されたソナタ形式と説明できる構成です。

第4楽章は、 スケルツォ楽章です。
但し、通常の3拍子ではなく2拍子の音楽です。
トリオとコーダでは、1872年の
ピョートル大帝生誕200年を記念したイベントの為に作曲
したカンタータから転用したテーマが用いられています。

第5楽章は、チャイコフスキー流のポロネーズによる
なかなか壮大な終楽章です。
ロンド形式と発展的手腕が見事に融合しています。
ABACAというロンド形式(短縮型)に続いて、
主要主題に基づくフーガ的発展が連綿と紡がれ、
最後は華々しいコーダで結ばれます。



この第3番でも、情緒豊かな旋律の数々と共に
動機の展開やソナタ形式の構成に細心の注意と
創意が盛り込まれている、チャイコフスキーならではの
音楽の構成・構造をお判りいただけることでしょう。