このところ、夜の記事シリーズとして、
ジャン・シベリウス(1865~1957)の
交響曲をご案内しています。

交響詩の分野で傑作を多数書いた後、
1898年から1899年にかけて作曲した<交響曲第1番>と
1902年に初演された<交響曲第2番>は、
ともにオーソドックスな4楽章構成でした。
その後、30歳代半ばを過ぎたシベリウスは、
独自の楽章構成を模索するようになっていきました。
1907年に発表した<交響曲第3番>では、
スケルツォとフィナーレを編合させたようにも
捉えることができる3楽章構成を採用して、
新たな境地に踏み出しました。
そして、この<交響曲第4番>では、緩急緩急という
バロック時代の教会ソナタ等式の構成にも通じる
独特の4楽章構成を試みています。
しかも、内省的な表現の極致と言えるような、
若くして彼岸の境地に到達したかのような、
全く独特の音世界を創出しています。

実は、<第3番>を発表した翌年に
喉の腫瘍の摘出手術を受けました。
幸いに良性腫瘍であったものの、酒と葉巻を禁止された
環境での加療生活を経験することになったシベリウスは、
"死"を身近に意識するようになっていったのです。
この<第4番>は1910年から11年にかけて作曲されました。

###シベリウス<交響曲第4番>イ短調 作品63###

[第1楽章]
やや朧げながらも自由なソナタ形式による、
しかし緩徐楽章的序章のような冒頭楽章です。
いきなりさざ波を思わせるような
第1番から第3番に感じられる若々しさとは一線を画す、
内省的で冷徹な音楽に支配されています。

[第2楽章]
複合三部形式に幻想曲風のコーダが付されたスケルツォです。
全曲を貫く内省的な音楽の中にあって、この楽章では時おり
絶望の中に希望を見出すかのような、仄かな明るさが射し込みます。

[第3楽章]
祈りと思索に耽溺するような緩徐楽章です。
1楽章と並んで、この作品の雰囲気を決定づけています。
序奏と終結部を持つ複合三部形式と見ることができますが、
延々と続く祈りと思索のように感じられる内省的な音楽です。

[第4楽章]
第2楽章に通じる仄かな明るさを湛えた楽章ですが、
しかし、その明るさや歓びは決して爆発には至りません。
グロッケンの可憐な響きも印象的ですが、
ヴォルテージが上がってもまた出直すかのように
展開が意識の底から復活するかのように立ち上がります。
内省的ではありますが、根底には肯定的な力強さが
感じられるフィナーレになっています。

下手な演奏をするとまるで様にならない作品、
実は難曲中の難曲ではないかと思われる、この<第4番>なのです。
私の仕事場のライブラリーにある、
オスモ・ヴァンスカ盤CDをご紹介しておきましょう。

♪シベリウス「交響曲第1番&第4番」CD♪
BIS/CD-861 オスモ・ヴァンスカ指揮/ラハティ交響楽団
シベリウス/交響曲第4番/ヴァンスカ盤

サロネン指揮の演奏のYouTubeもリンクしておきましょう。
YouTube / Sibelius, Symphonie Nr 4 a Moll op 63
      Esa Pekka Salonen,
      Symphonieorchester des Schwedischen