夜の記事シリーズとして、
ジャン・シベリウス(1865~1957)の
交響曲をご案内しています。

交響詩の分野で傑作を多数書いた後、
1898年から1899年にかけて作曲した
<交響曲第1番>が高く評価されて、
30歳代半ばにして、シベリウスは
シンフォニストの仲間入りを果たしました。
その余勢を駆って、
1902年には<交響曲第2番>を発表し、
これもまた大成功となりました。

この2曲の交響曲は、ソナタ形式による冒頭楽章、
緩徐楽章、スケルツォ、そしてソナタ形式による終楽章、
というオーソドックスな4楽章構成を持っていました。
しかし、今日ご案内する<第3番>以降、シベリウスは
独自の楽章構成を模索していくようになります。

この<第3番>は、1907年に完成されました。
<第2番>と<第3番>の間に、
日露戦争が勃発していたという
時系列になります。フィンランドを圧政下に置いていた
ロシアが、この頃から混迷の度合いを深めていき、
やがて第一次世界大戦に繋がっていってしまうのです。
そのような時代に誕生した<交響曲第3番>です。

###シベリウス<交響曲第3番>ハ長調 作品52###

[第1楽章]
ソナタ形式による冒頭楽章です。
<第1番>と<第2番>に通じるシベリウスならではの
響きの感触は健在ですが、全2作の若々しさから
緻密な透明感に魅力の核が変化しているように感じられます。

[第2楽章]
変奏曲を応用した構成による緩徐楽章です。
とても質素な印象をもたらす音楽です。
後年の燻し銀の境地に至るシベリウスの特性の萌芽が
この<第3番>から色濃く認めることができます。

[第3楽章]
モデラートの序奏の後、スケルツォ風にも聴こえる
戦闘的な前半部が、一気に展開していきます。
様々なテーマや動機が交錯しながら発展を続けるという
シベリウス独特の音楽的進行を見せていきます。
やがてチェロ等の弦楽器がコラール風の主題を
朗々と奏し始めると、楽章の後半部になっています。
見方によっては、スケルツォとフィナーレを編合した楽章と
捉えることができるように思われます。

3楽章構成で全曲演奏が30分程度という規模で、
<第1番>や<第2番>程の演奏機会には
恵まれていない作品ですが、
シベリウス・ファンや音楽通の間では、
なかなか評価の高い交響曲です。
私の仕事場のライブラリーにある、
オスモ・ヴァンスカ盤CDをご紹介しておきましょう。

♪シベリウス「交響曲第2番&第3番」CD♪
BIS/CD-862 オスモ・ヴァンスカ指揮/ラハティ交響楽団
シベリウス/交響曲第3番/ヴァンスカ盤

それから、YouTubeで歴史的録音を見つけました。
リンクしておきます。じっくり聴きたいものです。

YouTube / Mravinsky Sibelius Symphony No. 3   
      ムラヴィンスキー シベリウス 交響曲第3番