このところ、午後の記事シリーズとして
私の邦楽器作品の紹介を続けています。

今日の作品は、私の造語タイトルの一つ、
「コントラストリングス=Contrastrings」シリーズの第1弾となった、
三味線とコントラバスの為の作品です。
昨年CDがリリースされました。(詳しくは記事の最後で紹介します。)



この作品の誕生は1999年に遡ります。
当時、洗足学園音楽大学に音楽学の教員として勤務しておられた
芦川紀子氏が企画・構成にあたっておられた、
<MUSIC LAB 1999 音楽の実験室>というシリーズがありました。
その第7回公演に際しての委嘱作品として誕生したという訳です。

この回では、気鋭の三味線奏者=西潟昭子氏に
スポットライトが当てられることになり、
三味線と西欧楽器のための二重奏曲を書くことになりました。
そこで、三味線とコントラバスの触発し合いながらも
深刻ではなく楽しい音楽を書こうと思い立ちました。

作曲を進めながら、邦楽器の中の絃楽器と
西欧楽器の中の弦楽器の対照と協創という作品の持つ
キーワード二つ、対照=Constrastと絃・弦=Strings
を組み合わせて、Contrastringsという
新たな造語タイトルが頭に浮かび上がりました。

作品は次にような4つの部分が切れ目無く通奏される
約10分の音楽として完成しました。
先ず、定常的な拍節感の全く無い
【第1部分=プレリュード】に始まり、
コントラバスがメロディーを浮遊するように歌い上げる
【第2部分=メロディア】を経て、
三味線とコントラバスが
メカニカルなアンサンブルを初めて見せる
【第3部=スケルツォ】でヴォルテージを上げて、
無窮動の同音連打パッセージの中で
二つの楽器が丁々発止のやり取りを繰り広げる
【第4部=トッカータ】をスリリングなクライマックス
として全曲の幕を閉じます。

初演コンサートの情報を含めて、この作品のデータを
下記にアップしておきます。

###<Contrastrings No.1>
   ~三絃とコントラバスの為の四章~(1999)###
   MUSIC LAB 1999 (芦川紀子主宰)委嘱作品
   Ⅰ. プレリュード Ⅱ. メロディア 
          Ⅲ. スケルツォ Ⅳ. トッカータ
           演奏時間:約10分

初演コンサート:
♪♪♪♪ MUSIC LAB 1999 音楽の実験室Ⅶ ♪♪♪♪♪
           時を超える古典  
  〖西潟昭子の三絃 - 邦楽古典からの問いかけ - 〗
        企画・構成 :芦川紀子
      1999年6月18日(金)19:00開演
    グリーンホール相模大野・多目的ホール
曲目:地唄 / 三絃二重奏曲「楫枕」
      三絃三重奏曲「太鼓の曲」
   田中悠美子 / 「向かい合って en presénce」
   松尾祐孝 / Contrastrings No.1(1999年・初演)
   菅野由弘 / 波濤の舞 - 三味線とピアノのための -
                  (1999年・初演)
出演:西潟昭子(三絃) 田中悠美子(三絃)
   吉田 秀(コントラバス) 大竹紀子(ピアノ)
助演:野澤徹也(三絃) 上原潤一(三絃) 
   大森美樹(三絃)
   
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-MusicLab1999

初演は白熱した素晴らしい演奏で飾っていただきました。
以後、様々な場面で、様々な演奏家の方々に、演奏されている作品です。
楽譜等のお問い合わせは、作曲家に直接コンタクトしてください。

この作品が収録されているCDをご案内します。
初演者の西潟昭子氏のリサイタルのライヴ録音が収録されています。

・・・CD 西潟昭子 / 三絃「縁どられた沈黙」・・・
      TA sounds / TASD-4511
収録曲:三枝成彰 / 三絃協奏曲
    三宅榛名 / くれなゐに涙の色の
    佐藤聡明 / 究極の旅
    松尾祐孝 / コントラストリングス第1番
    菅野由弘 / 波濤の舞
    YUKI森本 / Where being and being seen coincide…
定価=3000円(amazon等で取り扱い中)