日本は、四季折々の自然の変化に富んだ風に恵まれています。
日本は、様々な時代に成立した多様な伝統文化・伝統芸能・
伝統興業にも恵まれた、歴史的な文化国家です。
ですから、各地に様々な祭や儀式や興業が今も息づいていて、
そこでは多彩な「日本の音」を聴くことができます。
本当に素晴らしいことです。

2011年に、東日本大地震(大津波)が起こり、
その震災・被害があまりに甚大であったために、
直後の3月や4月といった震災直後の世論としては、
祭や花火大会といった催し物は、
全て自粛・中止に向かうべしという論調でしたが、
その後、自粛だけでは真の復興はおぼつかないことに
ようやく社会全体が気づき始めて、
その後に年を重ねるにつれて夏の祭、つまり夏祭りや盆撮りや花火大会などが、
東北地方を含む多くの所で、予定通り開催されるように戻ってきました。

天皇・皇后・両陛下(現・上皇・上皇后・両陛下)が、
幾度にもわたって被災地を訪ねられて、被災者に優しく接するお姿には、
いつも心を打たれる思いがしました。
そして、現在の天皇・皇后・両陛下もその想いを引き継がれておられます。

しかしまた2020年来、新型コロナウィルス禍によって、
日本はもとより世界中が大変な状況に陥ってしまいました。
感染症の危険を回避しながら祭祀を実施・維持することには
大変な困難が伴うことは確かだと推察されますが、
伝統が途絶えることなく、次代に繋いでいっていただきたいと、
心から願う次第です。

祭には、亡くなった方々を偲ぶ意味、魂が里帰りする意味もありますから、
災害があった年などは特に、祭は実施すべきなのだと、私は考えています。
しかし、祭りの開催には膨大なエネルギーが必要です。
そして今年は特に感染症への対策が必須な状況ですから、尚更大変でしょう。
実現・開催に奔走されている方々の誠意と努力に、敬意を表したいと思います。
日本全国各地で営まれている伝統的な祭りが、
これからも伝承されていくことを願っています。

皆さん、祭などの伝統的な行事・祭祀に足を運んで、
「日本の音」に耳を澄ませてみてください。
祭の雑踏の中で(安全を確保しながら)
目をつむって耳を澄ませてみてください。
いろいろな音が聴こえてきますよ!

さて、名著を一冊、ご紹介しておきましょう。

小泉文夫著「日本の音」~世界のなかの日本音楽~
平凡社ライブラリー ISBN4-582-76071-6

民俗音楽の研究家・フィールドワーカーとして、
貴重な仕事を重ねてこられた小泉文夫氏の名著です。
芸大在籍時に、名授業「音楽通史」を受講できたことは、
今も記憶に鮮明で幸せな出来事でした。
残念ながら、まだまだこれからという年齢で
夭折されてしましましたが、
この「日本の音」を始めとする著作の数々は、
未だに我々音楽家にとって、
そして日本人の日本文化再発見にとって、
バイブルと言える存在で在り続けています。

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-小泉文夫著「日本の音」