ISCM国際現代音楽協会創設100周年に寄せて、
開催から22年が経過したISCM横浜大会の回想録を続けています。

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三年前の2020年は、1930年に新興作曲家連盟として産声を上げた
現 特定非営利活動法人 日本現代音楽協会(通称:現音)の
創立90周年にあたりました。
現音は、1922年に創設された国際現代音楽協会(ISCM)に、
非西欧系国としては最も早い1935年に加盟をして、その日本支部となっています。
そして2001年に、長年の懸案であったそのISCM世界音楽祭を
日本が主催して開催できたのでした。
このところ、その音楽祭の開催準備秘話や
実際に開催した各演奏会等のイベントについての回想録をアップしています。

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<ISCM世界音楽の日々2001横浜大会
   ~日本現代音楽協会新世紀音楽祭>
公演回顧シリーズ vol.2

《オルガン&ウィンド・オーケストラ》
               “オープニング・コンサート”
10月3日(水)18:00開演/横浜みなとみらいホール 大ホール

第1部 “伝統と革新の触発”

1) 古典本曲(日本):秘曲 鶴之巣籠 
           喜染軒・蓮芳軒所傳尺八古典本曲
             尺八=三橋貴風
2) 近藤 譲(日本):ノヴィタス・厶ンディ(1998)
             org.=保田紀子
3) John CAGE(アメリカ):
  龍安寺 - 篳篥ヴァージョン(1983)
  篳篥=東儀兼彦 稲葉明徳 溝入由美子 打楽=神田百子
4) Victor REBULLIDA(スペイン):
          オセアニカ(1999/世界初演)
             org.:今井奈緒子
5) 松尾祐孝(日本):
        音・音 Ⅲ~笙とコントラバスの為に(2000)
6) David VIYO(アメリカ):
    祈り-オリヴィエ・メシアンの回想(1992/日本初演)
             org.:三浦はつみ

第2部 “吹奏楽の祭典”

7) Laszlo SARI(ハンガリー):
        ストラヴィンスキーの思い出(1981/1991)
8) 小鍛冶邦隆(日本):
        バンドのためのポルカ集・タンゴ集(1994)
9) Ottorino RESPIGHI(イタリア)/編曲:藤田玄播:
        ローマの松
 指揮:河地良智
 吹奏楽:洗足学園シンフォニック・ウインドオーケストラ

  総合司会:松尾祐孝  通訳:山岸 彩

1) 伝統音楽
2) 国際審査員作品
3) 5) プログラム委員会設定作品
4) 6) 7) 8) 国際審査会入選作品
9) 演奏者推薦作品

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アンサンブル・ノマドの素晴らしい演奏による
“ウェルカム・コンサート”の充実で、
海外からの参加者の度肝を抜かんばかりの
鮮烈なスタートを切った音楽祭初日は、
夜の大ホール公演 “オープニング・コンサート” を迎えました。

この演奏会は、ISCM音楽祭の日本初開催に相応しい
独自のプログラムを構成することに、実行委員会で
特に腐心した公演でした。

開催拠点として絶大なる協力体制を敷いていただいた
横浜みなとみらいホールの大ホールの正面には、
ホールのフラッグと、音楽祭ロゴのフラッグが、
会期中に掲出されました。
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-大ホール正面のフラッグ

第1部は、日本の伝統と西欧現代音楽が
案外に近い地平に存在することを象徴するように、
古典本曲でスタートしました。
大家=三橋貴風氏(横浜市在住)の凛とした尺八独奏が、
700名余りの聴衆の目と耳を一点に凝縮して、
演奏会は始りました。

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-WMD2001オープニング古典本曲

第1部は、横浜みなとみらいホールの誇るパイプオルガン
を活用して国際審査募集カテゴリーにも加えた
オルガン作品を挟みながら、
伝統音楽~海外の作曲家の邦楽器への関心~
日本では邦楽器と西欧楽器の協奏も日常的・・・
というストーリーを演出しながら、
私=松尾祐孝(実行委員長)と山岸彩さん(通訳)による
司会進行を交えて、進めていきました。

特にケージ作品の演奏には、宮内庁楽部・楽長=東儀兼彦氏
の出演を得ることができて、ISCM音楽祭の日本初開催に
格式を添えていただくことができました。
実に厳かな演奏と時間でした。

(ケージ<龍安寺>の舞台/東儀氏は最左側)
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-ケージ龍安寺・篳篥ヴァージョン

上述の「日本では邦楽器と西欧楽器の協奏も日常的」の例示
としては、横浜在住の演奏家2氏による演奏で、
拙作<音・音 Ⅲ~笙とコントラバスの為に>(2000)を
プログラミングしました。
偶然にも開催前年に誕生した作品を横浜在住の2演奏家に
初演していただいていたという巡り合わせに、
あらためて感謝したいと思います。

(松尾祐孝<音・音 Ⅲ>舞台/笙:眞鍋尚之 cb:溝入敬三)
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-WMD2001オープニング音音3

オルガン作品も、オルガンの存在そのものと相俟って、
オープニング公演に格調ある雰囲気を醸し出してくれました。

(荘厳なパイプオルガン)
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-WMD2001オープニング・オルガン

第2部は、洗足学園大学(現・洗足学園音楽大学)の協力を得て、
“吹奏楽の祭典” としました。
約1億円といっても、開催規模に照らしてみると
必ずしも潤沢とは言えない予算の下で、いかに大規模編成作品
の上演を数多く実現できるかということは、
開催実現に向けてとても難しい課題でした。
その解決策の一つが、この洗足学園シンフォニック・
ウィンドオーケストラの出演や、後日にご紹介する
桐朋学園オーケストラの出演といった、
教育的コラボレーションであったのです。

(河地良智指揮/洗足学園シンフォニック・ウィンドオーケストラ)
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-洗足学園シンフォニックwind-orch

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終演後は、音楽祭オフィシャルホテルのバンケットに移して、
オープニング・パーテフィーを行ないました。
先日の記事で経緯をご紹介したこの音楽祭を横浜で開催できる切掛
を作っていただいたキーパースン=みなとみらいホール渡壁館長
にもご挨拶をいただきました。

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-オープニングP・渡壁氏挨拶

また、ここでも不肖=私と通訳の山岸さんとで、
司会進行を務めました。自分で言うのも何ですが、
会期中の私たち二人・・・名コンビであったと思います。

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-オープニングP・司会コンビ

国際本部役員、各支部・準会員の代表、来日作曲家、演奏家、
現音会員、評論家等の音楽関係者・・・、多くの方々が集い、
和やかに談笑する光景を見ていると、
「開催できて本当によかった!」
という思いが込み上げてきました。

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-オープニングPの風景

しかし同時に、横浜泊まり込みで殆ど24時間態勢のような
状況で現場の運営を切り盛りする事務局スタッフや実行委員の
まだこれから1週間以上続く激務を考えると、
更に気を引き締めてかからないと大変だと、
決して安閑とはしていられない思いも
ずしりとのしかかってきたのでした。