ドヴォジャーク(ドヴォルザーク)の交響曲の探訪も
いよいよ終盤になってきました。
今日は、名曲として広く知られる「交響曲第8番」です。

イギリスの出版社から楽譜が刊行されたために、
一時期は「イギリス」等という作品の本質とは
全く無関係な副題が付されていたこともありました。
しかし、音楽的にはむしろ最もボヘミア的な、
ドヴォジャークならではの魅力の宝箱のような交響曲です。

この曲の初演の直前の1888年に「交響曲第5番」が
ジムロック社から出版された事にも関連性があると
推察されるのですが、この「第8番」は、
「第5番」と同様の音楽性を一段と成熟した筆致によって
独創性とボヘミア的な魅力を増して完成された作品、
と私には考えられます。

さて、この曲にまつわるエピソードを一つ・・・
指揮者:尾高忠明&東京フィルハーモニー交響楽団が、
大規模なヨーロッパ演奏旅行を行った際に、
この「第8番」をメインとしたプログラムを
本場チェコスロヴァキア(当時の呼称)で演奏したところ、
聴衆に熱狂的に支持されて、一部の現地ファンが
バスを仕立ててツアーの"追っかけ"を敢行して、
ドイツ公演等にも聴きに来たという逸話が残っています。

私の仕事場のライブラリーには、このCDが在ります。

ドヴォジャーク/交響曲第8番&第4番
 ヴァーツラフ・ノイマン指揮
 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
 SUPRAPHON / COCO-73001
ドヴォジャーク交響曲第4番


<交響曲第8番 ト長調 作品88 / B.163>
 1889年作曲 / 1890年初演@プラハ

[第1楽章]
ボヘミアの田園風景、森の情景等が、
次々と瞼の裏に浮かんでくるような、
素朴な魅力に溢れた、ソナタ形式による冒頭楽章です。
終結部の盛り上がりはなかなか劇的です。

[第2楽章]
短調のよる哀切な楽想が支配する主部と、
明朗な中間部が見事な対照を見せる
メロディー・メイカー=ドヴォジャークらしい、
魅力的な緩徐楽章になっています。

[第3楽章]
ドヴォジャークは、この交響曲の第3楽章に、
歌劇《がんこな連中》から楽想を転用した
ボヘミア風のワルツによる舞曲楽章を、
スケルツォに替えて置いています。
民俗的な躍動感に溢れた音楽です。

[第4楽章]
パッサカリア(シャコンヌ)という変奏曲様式を
採用したブラームスの「交響曲第4番」の終楽章に
刺激を受けた作曲家は、この終楽章を
自由な変奏曲形式によって作曲しました。
ブラームスの厳格な変奏とは異りますが、
次々と繰り出される様々な変奏に、
ドヴォジャークならではの伸びやかで自由な楽想の飛翔が
見事の展開されていきます。

全曲の演奏時間は40分足らずという、
やや小さめの規模ではありますが、
この作曲家の代表作に相応しい、
魅力と独創性を湛えた名曲です。

YouTube / パイタ ドヴォルザーク交響曲第8番