アントニン・レオポルト・ドヴォルザーク
(チェコ語:Antonín Leopold Dvořák)は、
1841年9月8日生まれで1904年5月1日没の、
チェコを代表する作曲家です。
このところ、その交響曲の探訪を続けています。

チェコ語の発音に近いカタカナ表記にすると、
アントニーン・レオポルト・ドヴォジャークとなるので、
私個人としては、ドヴォジャークと記すことにします。

「第1番」と「第2番」を1865年に一気に書いた
若き日のドヴォジャークでしたが、
交響曲の初演の機会には、長い間恵まれませんでした。
今日の現代音楽界の作曲家にとっては、
オーケストラ作品は実際に演奏される機会は、
そう簡単に得られるものではありませんが、
当時のヨーロッパにおいても、
管弦楽作品、それも長大な交響曲の初演の機会を
得ることは、極めて難しかったようです。

ブラームスをはじめとする先輩作曲家を敬愛しながら、
作曲家としての修練を重ねていたドヴォジャークは、
1870年代半ばに、再び交響曲という分野に挑みました。
その第一弾がこの「交響曲第3番」(1873年作曲)です。
舞曲楽章を欠いた、3楽章構成を採用しています。
続いて「第4番」(1874年作曲)と
「第5番」(1875年作曲)と一気に書いていきます。

アントニーンは1873年11月に結婚をしていますから、
この時期は特に気力が充実していたということでしょう。
そして「第3番」は、1874年に、作曲家としての著名な
スメタナの指揮によって初演されました。
つまり、ドヴォジャークが初めて実際に聴くことができた
交響曲が、この「第3番」であったということになります。

私の仕事場のライブラリーには、このCDが在ります。

ドヴォジャーク/交響曲第3番&交響曲第7番
 チョン・ミュンフン指揮/
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 グラモフォン / POCG-10014
ドヴォジャーク交響曲第3番


<交響曲第3番 変ホ長調 作品10 / B.34>
 1873年作曲 / 1874年初演@プラハ

[第1楽章]
ソナタ形式のよる冒頭楽章です。
全9曲の中で、この「第3番」の第1楽章だけ、
提示部の繰り返し記号が記載されていないそうです。
冒頭から、習作期の「第1番」と「第2番」に比べると、
スラブ的な楽想と流麗な表現の魅力が
大きく増しているように感じられます。
展開部の運びのよりスムーズになっています。
いかにもドヴォジャークらしいのびやかな音楽です。

[第2楽章]
三部形式(複合三部形式)による緩徐楽章ですが、
規模はかなり大きく、演奏時間は15分にも及びます。
ドヴォジャークの緩徐楽章は、奇をてらうことなく、
中間部に多少なりとも性格の異る楽想を挟んだ、
標準的な(複合)三部形式をとることが多いようです。
そして、メロディー・メイカーとしての魅力を
遺憾なく発揮しています。
中間部は、少しテンポ感が上がって始まり、
レントラー風な素朴な輝きの後に
雄大なクライマックスも現れます。
スケルツォ楽章が省略されている事に対する、
補完の役割も果たしているように考えられます。

[第3楽章]
スケルツォ楽章が置かれていないこの交響曲は、
緩徐楽章の後に、自由なロンド・ソナタ形式による
終楽章の闊達な楽想が続きます。
「第1番」や「第2番」の終楽章に比べると、
より引き締まった音楽になっています。
演奏時間は約8分で、次々の移り変わる楽想が
軽やかに駆け抜けるように奏されて全曲を閉じます。

3楽章構成ですが、それでも演奏時間は30分を優に越えて
35分近いなかなかに規模になっています。
日本のオーケストラの定期演奏会でも、
時にはプログラミングされて良さそうな佳品です。

YouTube / スウィトナーのドヴォルザーク交響曲第3番