アジア環太平洋作曲家シリーズの第1回は、1998年11月10日の開催でした。
その日は、11月の一の酉でしたので、”酉の市" が立つ日でもありました。

私は、海外からのゲスト、陳其鋼(チェン・チガン)氏もお連れして、
浅草・鷲神社の酉の市でこのシリーズの成功を祈願してから、
会場の文化村オーチャードホール(東京・渋谷)に楽屋入りしました。
そして、縁起物の大熊手を開演前の舞台中央に鎮座させて、
開場そして開演を迎えました。

###東京フィルハーモニー交響楽団
       <アジア環太平洋作曲家シリーズ>###
        第1回「アジアから」
    1998年11月10日/文化村オーチャードホール
指揮:沼尻竜典 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
胡琴:許可(Xu Ke/中国)

プログラム
陳 錦標 / Joshua CHAN(中国/香港):
               "馥郁曦思"(日本初演)
松尾祐孝(日本):胡琴協奏曲<天風愛舞和庵> 
    (異文化交歓協奏曲シリーズ第1弾・世界初演)
チナリー・ウン / Chinary Ung(カンボジア/USA):
"Inner Voices"
陳 其鋼 / Qigan CHEN(中国):
              YUAN "源" (日本初演)

プログラミングに際しては、各作曲家の代表作にあたる
作品をノミネートすることをモットーとしたので、
非常に量感のある聴き応えたっぷりの演奏会になりました。

陳錦標氏の作品は、作曲家の好きな香港島の山中の朝の
情景を彷彿とさせる、芳醇な音詩でした。
拙作については、2013年9月24日の記事をご覧ください。
世界的二胡奏者=許可氏の独奏を得て、
作曲家冥利に尽きる印象的な初演となりました。
チナリー・ウン氏の作品では、
音楽界のノーベル賞とも言われる
”グローメイアー賞”受賞作品というだけあって、
氏の高潔な風貌にも似た、
どこか懐かしいような東南アジア的な
音像も湛えながら、連綿たる音楽が紡がれました。
陳其鋼氏の作品は、中国の民族性を内包しつつ、
晩年のメシアンに師事したという成果を感じさせる
華麗なオーケストレーションによって、
音楽のオーラが放射されるような
クライマックスとなりました。

3名の海外作曲家も来日され会場にお越しになり、
”東京から世界に音楽文化メッセージを発信する”
公演に相応しい充実した時間を、
聴衆の皆さんと共有することができました。


写真は、香港島の新開発地区=サイバーポートです。
躍動する・躍進するアジアを感じさせてくれる風景です。

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