ラフマニノフの交響曲の話題の第3弾です。

<交響曲第1番ニ短調>は、初演は大失敗に見舞われたものの
実は相当の秀作で、その後に大成功を収めた
<交響曲第2番ホ短調>との近似性も高いものでした。
ところが、この<交響曲第3番イ短調>は、
第1番や第2番とはかなり異なる音楽性を持つ作品です。
楽章の数も、通常の4つではなく3つになっています。

ロシア(その後にソ連)からの亡命を余儀なくされ、アメリカに渡った後、
一時期にヨーロッパでの活動拠点であったスイスの
ルツェルン湖のほとりの別荘で作曲されたこの作品は、
ラフマニノフ流の新古典主義というべき、もしくはまた
或いはラフマニノフ流の近代交響曲とも言えるような、
引き締まった音楽を聴かせてくれるものになっています。

1936年の完成したこの作品は、オーマンディの指揮による
フィラデルフィア管弦楽団によって同年内に初演されました。

晩年の作曲者は、この作品とそのオーケストレーションに
相当な自信を持っていたらしく、自身の指揮による録音も残しています。
その貴重な音源がYouTubeにアップされていましたので、
下記の記事の中にリンクしておきましょう。

第1楽章は、短い序奏に始るソナタ形式楽章です。
ロマン的な茫洋としたスケールからは脱却した、
引き締まった音楽を聴くことができます。
勿論、随所にラフマニノフ独特のロマン的な旋律が謡われてもいます。

アシュケナージ指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ
の演奏による第1楽章のYouTubeをリンクします。



第2楽章は、深淵な緩徐楽章調の音楽から始ります。その後、
スケルツォを思わせる軽快な楽想に移行していきます。
緩徐楽章とスケルツォという中間楽章に見られる
二つの要素を併せ持つ楽章として捉えられるでしょうか。
前半に緩徐楽章に準じた楽想を配して、
後半はスケルツォの楽想に乗せて発展を見せて、
最後に緩徐楽章調の楽想が回帰して静かに楽章を閉じます。

アシュケナージ指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ
の演奏による第2楽章のYouTubeをリンクしておきます。



第3楽章は、からり自由にデフォルメされた
ソナタ形式による、ラフマニノフ流の終楽章です。
展開部の導入にフーガの手法が盛り込まれ、
そのまま押し切るように発展していく様は圧巻です。
フーガを終楽章に用いる事は、20世紀前半の作曲家に
多く見られる特徴として指摘できます。
再現部の最後で一旦静かに収束した音楽は、
最後の約4分間の終結部(コーダ)の間に
次第にヴォルテージを上げて一気呵成に全曲を閉じます。


アシュケナージ指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ
の演奏による第3楽章のYouTubeをリンクしておきます。



この第3番、もっと演奏されて良い作品であると、
私は思うのですが、皆さんはいかがでしょうか。

ラフマニノフ交響曲全集
CD:ラフマニノフ交響曲全集 / ロッテルダム・フィル
   指揮=エド・デ・ワ―ルト