邦楽器作品の創作と邦楽器演奏界の更なる振興を
ライフワークの柱に据えている私です。
このところ、自作邦楽器作品の紹介を続けています。



この作品は、私が洗足学園音楽大学の
現代邦楽コースのアカデミック・プロデューサー
(統括責任者)を務めるようになった直後に
作曲した大規模合奏作品です。
<新譜音悦多Ⅱ〜合奏七段今様>です。

2017年の洗足学園音楽大学【邦楽定期】で初演、
2018年の【全国邦楽合奏フェスティバル in 川崎】の
最終日に開催された〖全国邦楽合奏コンサート〗の
最後のステージで再演、共に私自身の指揮による
演奏でした。



前述の通り、この作品は、
洗足学園音楽大学の現代邦楽コースの年間最大の演奏会
【邦楽定期】のための書き下ろし作品として、
2017年10月9日に私自身の指揮の下に初演されました。

"段物再発見"のテーマの下に開催された今回の【邦楽定期】
は、古典の段物の数々が、様々な楽器編成によって
次々と演奏される趣向でした。
その最後に、現代の段物として私の新作が演奏されました。

古典では概ね"六段"や"八段"ですので、
私は"七段"として、七つの部分が連続する曲にしました。
一之段・・・1拍子 / 一音による素材が中心
二之段・・・2拍子 / 二音による素材が中心
という案配で曲は進行していきます。
したがって、皆さんのご賢察の通り、
五之段と七之段はかなり複雑な拍子やリズムになります。

同名の<新譜音悦多>の第1作とは、
楽想に少々の共通項を持つ姉妹作の関係と言えましょう。

第1作は1998年作曲でした。
まだ設立して間も無かった時期の現代邦楽研究所でしたから、
現代作品や複雑なリズムを未経験の受講生や
若手講師・助手も多く、練習の段階から物議をかもしました。
「なんでこんなことを書くんだ!」と食ってかかられたことも
ありましたが、次第に演奏がまとまっていくに従って、
徐々にそれらの声もトーンダウンして、
初演はまずまずの成功を収めました。
その後、この曲は同研究所のレパートリーとしてすっかり
定着して、数多くの再演を重ねていただいていますし、
同研究所の委嘱作品集CD(ALM RECORDS / ALCD-9028)
にも収録されています。

それから20年近くの月日を経て、5拍子や7拍子、
更には変拍子を含む複雑で機能的な音楽にも
現代邦楽コースの学生や現邦研の受講生は
柔軟に対応できるようになっていました。
ですから、<新譜音悦多Ⅱ〜合奏七段今様>(2017)
の初演に向けては、<新譜音悦多>(1998)のような
物議を醸すような騒ぎは何もなく、
和気靄々とリハーサルを進めることができました。

これぞ、伝統とは博物館に陳列するものではなく、
切磋琢磨して発展するところにある、という事だと
私はいささかの自負を持っています。

邦楽器を愛好されている方々、皆さんも是非、
新しい作品、未知の領域の楽曲にも
チャレンジしてみてください。
きっと、新しい発見や触発があることでしょう。

邦楽定期

初演演奏会の情報は下記の通りです。

#####洗足学園音楽大学【邦楽定期】#####
        〜段物再発見〜
 2017年10月9日(月祝) 開場 13:30 開演 14:00
       洗足学園 前田ホール
    入場料:1000円 未就学児入場不可

【出演】
石垣 清美 (箏・三絃) 名嘉 ヨシ子 (琉球箏)
吉原 佐知子 (箏) 野澤 佐保子 (箏) 
長谷川 慎 (柳川三味線) 野澤 徹也 (三絃)
市川 香里 (三絃) 西川 啓光 (囃子) 神 令 (尺八)
洗足学園音楽大学 現代邦楽コース学生 / 卒業生
現代邦楽研究所 研究生 / 修了生
森重行敏 (企画・司会)  他

Program
・「合奏曲六段」 藤井凡大 作曲 - 合唱付き-
・箏、柳川三味線、一節切尺八合奏「すががき」
・琉球箏曲「六段菅撹」
・箏曲「五段砧」
・三絃合奏「八段すががき」
・箏曲「六段・八段合奏」
・尺八古典本曲「一閑流 六段」
・「新譜音悦多Ⅱ〜七段合奏今様」松尾祐孝 作曲(初演)