ウクライナ情勢の混迷が続いています。
いったいあの美しく豊かな風土に恵まれた国は、
どこまで分裂してしまうのでしょうか。

私は、2013年5月にウクライナの大都市のひとつ、
ドネツクの現代音楽祭に指揮者として招聘され、
得難い国際交流の経験をする機会を得ました。
その時は、平穏で平和なウクライナでした。

一般市民の犠牲者が出るような悲惨な事態にならずに、
平和な解決・帰結を迎えられるよう、願ってやみません。

昼の記事シリーズとして、ウクライナの平和を願って、
2013年の想い出の記事を再掲載しています。

*****2013年6月2日の記事*****

5月28日の記事でも述べましたが、
ウクライナ・ドネツクの地元のオーケストラ、
アカデミック・フィルハーモニック・オーケストラ・ドネツク
とのリハーサルは、4時間のセッションが3回の中で、
(日本流に言えば「リハ2回のゲネプロ本番」の中で)
現代音楽作品6曲を仕上げるという、とてもハードなものでした。

しかも、1回のセッションは、
4時間と言っても45分音出し&15分休憩のパターンを
繰り返しますから、実質的には3時間です。
当初の計画では4回のセッションが予定されていたのですが、
音楽祭3日目夜の公演に同じオーケストラが出演することが
後から決まって、日程がタイトになってしまったようです。

1回目のリハーサル・セッションは、現代作品の場合は在る程度は
「譜読み&音出し」といった内容になります。
プロ・オーケストラと言えども、
楽員もよく解っているクラシック名曲を演奏する場合とは、
全く異なる状況になるからです。

その「譜読み&音出し」を経験した上での、
2回目のリハーサル・セッションが、非常に重要になります。
ここで、楽員と指揮者の音楽上でのコミュニケーションが
ぐっと上がってこないと、新鮮な創造の場が現出しません。
私にとってもオーケストラにとっても、
音楽祭4日目の10時~14時に行われた2回目のセッションは、
今回の演奏会の演奏が充実に向かうか向かわないかの
分岐点となる重要な時間となりました。

結果は、何とかお互いのコミュニケーションと
作品への共通理解を深めていくことに成功して、
本番の充実に期待が持てる状況を維持することができました。
それにしても、異国のオーケストラに一人乗り込んで、
「何物が来たか!」と身構える楽員を前にして、
自分の主導で音楽を作り上げていくという経験は、
非常にタフでしたがやり甲斐も大きく、
素晴らしい経験、心の財産になりました。

2回目のリハーサルを終えてから、
今回の独奏者でもありまた作曲家でもあり、
私をウクライナに呼んでくださった仕掛け人でもある
Vadim Larchikov氏の進言もあって、
本番の曲順を大幅に変更することにしました。
私の作品の特殊な舞台配置に伴う大幅な舞台転換や、
全6曲各作品の内容を勘案して、
最も現実的かつ興行的な選択を行ないました。
最終的に決定したオーダーは、下記の通りとなりました。

<Donbas Modern Music Art / Festival & Competition>
=[DMMA・2013] ファイナル・コンサート
[ Music of our time / Japan - Sweden/Finland - Ukraine ]

*2013年5月17日 / ウクライナ・ドネツク
*プログラム:
- Mirjam Tally / Winter Island (b) (c) *
- Thomas Liljeholm / Merging (b) (c) ***
- Masataka Matsuo / Phonosphere 4b (a) **
- Vadim Larchikov / Gethsemane *
- Masataka Matsuo / Eternal Livre (new version) (a) (c) **
- Kalevi Aho / 2-cellos Concerto (b) (c) *
(*** 世界初演 ** 欧州初演 *ウクライナ初演)
*演奏:
guit. / Magnus Anderssion (a)
cello / Vadim Larchikov (b)  Olga Veselina (c)
cond. / Masataka Matsuo 
orch. / Donetsk Academic Philharmonic Orchestra

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-路面電車やトロリーバスが行き交う市街
リハーサルの本番も、路面電車の背後に見える、
フィルハーモニー協会のホール
(セルゲイ・プロコフィエフ・ホール)で行われました。

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-入り口脇のポスター
ホール入口脇に掲示してあった音楽祭ポスター