今年は、楽聖=ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンの生誕250年にあたります。
小学校高学年の頃からオーケストラを聴くことに強い興味を持つようになった私にとって、
ベートーヴェンの交響曲の交響曲全曲を聴くことが先ず最初の目標でした。
カラヤン指揮:ベルリン・フィルの来日演奏会で、ベートーヴェンの田園と第5
というプログラムを聴いた時の情景は、まだ脳裏に鮮明に残っています。
それでは、今日から9曲の交響曲を番号順に探訪していきましょう。
写真:第1番&第2番 ホグウッド指揮&アカデミー・オブ・エンシェント盤(CD)
初回は《交響曲第1番ハ長調》をご案内します。上の写真は
私の愛聴盤、ホグウッド指揮 / アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック
による演奏による、第1番と第2番のカップリングです。
###ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン###
(1770-1827)
交響曲第1番 ハ長調 作品21
初演:1800年4月2日
ウィーン/ブルク劇場
交響曲第1番は、ベートーヴェン自身の指揮で初演されました。
全曲の演奏時間は30分弱の規模ですから、
ハイドンやモーツァルトの交響曲の規模をほぼ同じですし、
全体を聴いた印象も高雅な古典派という印象に範疇に留まりうる音楽です。
しかし、随所にベートーヴェンならではの創意工夫(=新機軸)を見出すことができます。
第1楽章は、先ず冒頭から意表を突かれます。
何と、IV度の和音(下属和音)を主和音に見立てたドミナントから始まって、
寄り道をしながら主調のハ長調を納得させるような序奏から始まるのです。
そして(ソーラシドレミファ#ソーーーソファミレド〜)とソナタ形式の主部が繋がります。
第一主題は(ドーーソーシドーーソーシドドソシドドソシド・ミ・ソ・シ・ド~)
と始まります。クラシック音楽ファンの方ならば、モーツァルトの最後の交響曲、
第41番「ジュピター」の第1楽章の第一主題(ドーーーソーラシドーソラシド〜)
との近似性にお気付きのことでしょう。
上行形主体の第一主題と下行形主体の第二主題が提示される提示部から
定型通りの繰り返しを経て、ハイドンやモーツァルトよりもやや長い展開部を経て
再現部に突入して、更に楽章を締めくくる部分の終結部が幾分拡大した構成を示す
ソナタ形式を扱いのよって楽章を閉じます。
第2楽章は、へ長調で基本的に穏やかな音楽です。
ソナタ形式の構成に乗せた緩徐楽章となっています。
各主題に第一楽章の各主題との近似性を見出すことができます。
第3楽章はハ長調で、メヌエットと表記されていますが、
実質的にはスケルツォと考えて良さそうです。
早めのテンポで全曲の中でスパイスのような存在感があります。
古典組曲の時代のトリオ付メヌエットの定型通りの構成になっていますが、
独特の強弱の交錯などにベートーヴェンの個性が色濃く反映されています。
この楽章の各主題にも、第1楽章や第2楽章の各主題との近似性が感じられます。
第4楽章もハ長調で、ソナタ形式による終楽章です。
短い序奏で(ソラシ・・・ソラシド・・・ソラシドレ・・・ソラシドレミ・・・
ソラシドレミファーー・・・)と導入されて、
第一主題(・ソラシドレミファソ・ソ・ミード・ド・レ・レ・ミレドレミーー〜)
と走り出す爽快な音楽が開始されます。
展開部の前半で第一主題が強調されるように発展することから、
ロンド形式にも近い側面を持つこの楽章は、ロンドソナタ形式と呼べるかもしれません。
再現部の後に、大きな停止を含む幾分大振りな終結部が置かれています。
ベートーヴェン流の四部構成ソナタ形式(提示部・展開部・再現部・終結部)が、
既にこの第1番から確立していたことがよく判ります。
写真:モントゥ―指揮&北ドイツ放送交響楽団盤(LP)
明日は、第2番を探訪します。