1990年代から2000年代前半まで、
私は東京フィルと密接な関係を持ち
様々なプロジェクトで協働してきました。

1998年度から2001年度にかけて開催した
<アジア環太平洋作曲家シリーズ>では、
プランニング・アドヴァイザーを務めました。
その中で誕生した作品が、今日ご紹介する
胡琴協奏曲<天風愛舞和庵>です。

<天風愛舞和庵>という風変わりなタイトルは、
天・風・愛・舞・和・庵という6文字の漢字の
イメージに沿った6つの部分から
構成される作品という、
曲の内容を示すと同時に、私の知人にまつわる
エピソードに基づく「テン・ファイヴ・ワン」
という語呂を組み合わせたものとなっています。

このタイトルによる世界的名手=許可(Xu Ke 氏)
のための二胡協奏曲を作曲したいという長年の想いは、
指揮者=大野和士氏と東京フィルハーモニー交響楽団
との協働プロジェクト
<アジア環太平洋作曲家シリーズ>の中で、
実現することになりました。
そして、同シリーズ第1回の演奏会で、初演されたのです。

#東京フィルハーモニー交響楽団
         <アジア環太平洋作曲家シリーズ>#
          第1回「アジアから」
    1998年11月10日/文化村オーチャードホール
 指揮:沼尻竜典 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
 胡琴:許可(Xu Ke/中国)

プログラム
陳 錦標 / Joshua CHAN(中国/香港):
         "馥郁曦思"(日本初演)
松尾祐孝(日本):胡琴協奏曲<天風愛舞和庵> 
     (異文化交歓協奏曲シリーズ第1弾・世界初演)
チナリー・ウン / Chinary Ung(カンボジア/USA)
:"Inner Voices"
陳 其鋼 / Qigan CHEN(中国):YUAN "源" (日本初演)

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-アジア環太平洋シリーズ冊子

##### 胡琴協奏曲<天風愛舞和庵> #####
        (1998)
東京フィルハーモニー交響楽団委嘱作品

演奏時間:約20分
楽器編成:2222/422/3perc.hp/strings

初演:1998年11月 文化村オーチャードホール(東京)
演奏:胡弓=許可(シュイ・クゥ)
   管弦楽=東京フィルハーモニー交響楽団
   指揮=沼尻竜典

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モンゴルの草原で青空を見上げるような雰囲気の
「天」で始まり、やがて(二胡の演奏による)
馬の鳴き声が聞こえてきて「風」がふき、続いて連綿と
二胡独奏のミニ・カデンツァの断続が「愛」を語ります。
一転してリズミカルな「舞」の音楽が
二胡と同じ抱絃楽器の仲間である津軽三味線の
エッセンスを盛り込みながら興奮をかき立てていき、遂には
全てを包み込むようなクライマックス「和」に到達します。
その頂点が崩れ落ちるように収束した後、「庵」によって、
静寂の中をたゆたうようなエンディングとなる、
そのような6部分から構成される協奏曲が結実しました。

その初演は、素晴らしく美しい演奏でした。
許可さんの時に大胆で時に繊細な独奏と、
色彩感豊かな東京フィルのサウンドが相俟って、
CD化されていない事がもったいない位の
名演になりました。
2管フル編成で20分の演奏時間という
大作になった為もあって、
なかなか再演の機会に恵まれないのですが、
私自身も、もう一度聴いてみたい作品です。

尚、タイトルの「胡琴協奏曲」の「胡琴」という言葉は、
胡弓属楽器の正式な呼称ということです。
許可さんから伺いました。
通常の二胡(大小もあるようです)、
板胡(蛇皮の変わりに板を張った北方の楽器)
京胡(京劇の伴奏につかうタイプの胡弓)
等の総称ということです。
この作品では、演奏者が自由にこれらの楽器を持ち替えて
演奏してよいという設定にしてあります。
ヴァイオリン協奏曲としても演奏可能です。