ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱」を正格に聴く!
・・・・・「第1楽章」解説・・・・・

ベートーヴェンが確立した四部構成のソナタ形式、
即ち、提示部・展開部・再現部・終結部から構成されています。
しかも、4角部分が概ね均衡した小節数になっていて、
均整の取れた構造美を持っています。
また、バロック時代の舞曲の構成の名残を留める
提示部終始の反復記号が、遂に姿を消しているところにも、
時代の推移を認めることができます。

この冒頭の開始の手法は、既に語り尽くされていますが、
実に独特なものです。
空虚5度の響きから動機が断片的に見え隠れしながら
次第にヴォルテージを挙げて、
遂には総奏による第一主題に至るというドラマは、
何度聴いても劇的です。

後世の作曲家、例えばブルックナーは、
明らかにこの手法の虜になって、
同じようなスタイルの冒頭楽章の開始を、
ほとんど全ての交響曲で採用しています。
また、フランクの「交響曲ニ短調」の第一楽章の
第1主題の提示方法も、この楽章の
アイデアを拡大したものに他なりません。

さて、この第一楽章の第1主題と
第2主題(分析によってはその導入句)の音型を、
カタカナ表記で書いてみましょう。

まず第1主題は・・・
レラ~ ファレ~ ラファ~ ラファレ~
「ファミレ」ラ・ソ・ミ・ラ・「レ・ミ・ファ・・・」
「ソ・ラ・シ♭~~~」ラソファミレド♯・・・
という具合ですが、「 」で囲んだ所が、
順次進行(音階の隣の音に滑らかに進行する2度進行)による
3つの音というパターンになっています。

そして第2主題は・・・
「ミ♭~~~ファソ」「ソ~ファミ♭」「ミ♭~レド」
ド~シ♭・・・という具合ですが、
やはり、「 」で囲んだ所が、
順次進行による3音のパターンになっています。

「順次進行3音」のキーワードを覚えておいてください。
明日以降の記事の後続楽章の解説に続きます。


写真は、中学生~高校生時代によく聴いたLPのジャケットです。
PHILIPS / SFX-7996~97(6700-085)日本発売/1974年
指揮=小澤征爾
管弦楽=ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
合唱=アンブロジアン・シンガーズ

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-第九・小澤征爾盤