先日、久しぶりに聴いたにショスタコーヴィチ壮年期の問題作、
交響曲第13番「バービィ・ヤール」を聴く機会がありました。
新日本フィルハーモニー交響楽団・サントリーホールシリーズ
第523回定期演奏会(2014年4月13日)で、
ラトヴィア出身の気鋭の若手指揮者、
アンドリアス・ボーガのタクトの下で演奏されました。
バス独唱は同じくラトヴィア出身のエギルス・シリンス、
男声合唱は栗友会合唱団(合唱指揮:栗山文昭)
という声楽パートの陣容でした。

新日本フィル第523回定期演奏会

1975年に行われた早稲田大学交響楽団(指揮:山岡重信)による
日本初演を聴いている私としては、想い出深い作品です。
「バービィ・ヤールに記念碑はない・・・」という
意味深長な歌詞で始る、全5楽章約60分の大曲です。

この作品が発表された1962年当時のソ連は、
"雪解け"の時期で、非スターリン化が進行していました。
その状況の中で大胆にも、エヴゲニー・エプトゥシェンコの
体制批判的な詩をテキストに用いて、
初期の交響曲以来封印してきた声楽付交響曲のカタチを
復活させた作品になっている、問題作なのです。

作品の内容を問題視した当局の妨害工作にも挫けずに、
キリル・コンドラシン指揮&モスクワ・フィルハーモニーの
演奏によって1962年12月に初演された時には、
聴衆から熱狂的な拍手が沸いたと伝えられています。

"バービィ・ヤール"はキエフ近郊にある渓谷の名前で、
第二次世界大戦中にウクライナを占領したナチス・ドイツが、
ユダヤ人を(更にはロシア人やウクライナ人までも)
数万人規模で虐殺した地なのです。

当初は1楽章形式による交響詩として計画されたそうですが、
同じ詩人の他の作品も組み合わされて、
第1楽章「バービィ・ヤール」
第2楽章「ユーモア」
第3楽章「商店」
第4楽章「恐怖」
第5楽章「立身出世」
という構成を持つ大作になりました。

折しも、現在のウクライナは、
ロシアと西欧の思惑の狭間に揺れ動き、
内乱状態に近い混乱した状況になっています。
昨年5月に私が
ファイナル・コンサートの指揮者としてドネツクを訪問した時は、
平和で美しい街の風景と、音楽を愛する多くの市民の皆さんが
とても好ましかったウクライナでしたが・・・
平和な解決を願ってやみません。

フィルハーモニー協会建物
・・・ドネツクのフィルハーモニー協会・・・

コンサートで聴いた演奏は極めて充実したものでした。
20世紀最大のシンフォニスト=ショスタコーヴィチの
全15曲の交響曲を、あらためて全曲聴いてみよう
と思っている私です。

YouTube / ショスタコーヴィチ 交響曲13番
     「バビ・ヤール」/ ハイティンク