ロジャー・ノリントンのベートーヴェンの面白さ! | 松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

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先月のNHK交響楽団(通称N響)の定期演奏会には、
名匠=ロジャー・ノリントンが指揮台に招聘されていました。
ロンドン・クラシカル・プレイヤーズを指揮して世に出た
「ベートーヴェン交響曲全集」で世界中をあっと言わせた、
ノリントンも、今や好々爺といった趣の大巨匠になりました。

ノリントンは、若い頃に古い録音を丹念に研究した末、
1930年以前にはオーケストラではヴィブラート奏法が
ほとんど用いられていなかったという結論に至りました。
そこで、まずハイドンやモーツァルトで、
ヴィブラートを除きつつフレージングを工夫した、
“新しい息吹を持つ復元演奏”を試み、
更にはそれをベートーヴェンに適用して、
世界的に注目される存在になっていったのです。

そのノリントンが、このところ毎年、
N響の指揮台に登場していることは、
オーケストラ音楽ファンには実に嬉しい出来事です。

私が足を運んだのは、3種類6公演の定期演奏会の中の
Aプロの初日でした。テレビ収録も有る日でしたから、
テレビカメラや録音マイクが多数仕込まれた、
N響らしいNHKホールの空間が待っていました。

プログラムは次のラインアップでした。
#べーチーヴェン/「エグモント」序曲
#ブリテン/夜想曲(テノール独唱=ジェームズ・ギルクリスト
#ブリテン/歌劇「ピーター・グライムズ」から
         「四つの海の間奏曲」
#ベートーヴェン/交響曲第8番

先ず「エグモント」序曲かや早くもワクワクさせてくれました。
最初にステージに登場した時の足取りはやや弱々しく、
流石に巨匠も歳をとったなと感じさせましたが、
タクトを振り始めてからは一気に生気を帯びてきて、
普段のN響とはひと味もふた味も違った演奏が湧き出てきました。

ブリテンもなかなか楽しめました。
J・ギルクリストの独唱を得た「夜想曲」は、
滅多に実演で聴くことのできない佳品で、
実に興味深い演奏でした。
「四つの海の間奏曲」は、私自身が大好きな作品です。
できれば各曲の間を空けずに演奏してほしかったのですが、
曲間に少しづつ時間を取っていたことが少々残念でした。

最後はベートーヴェンに戻って交響曲第8番、
これはもう本当に至芸の極致といった趣の、
時代奏法(ピリオド奏法)の冴の巨匠のユーモアが完全に融合した
闊達且つ爽快な演奏でした。
演奏時間25分足らずで他の交響曲に比べると
影が薄いと思われがちなこの第8番が、
これ程にコンサートのメインに相応しく響き渡る演奏には、
なかなかお目にかかれるものではありません。

マエストロ・ノリントン、また客演に来てくださいませ。

YouTube / ノリントンのベト8第2楽章 0001


そして、若い皆さん! 
是非、オーケストラを聴いてみましょう。
オーケストラは音楽文化のインターナショナル・スタンダードです。